トップ2016年・犬ニュース一覧8月の犬ニュース8月25日

たった一度の検査で複数の遺伝病をチェックする「多重スクリーニング法」

 233犬種に属する7,000頭近い犬を対象として遺伝子検査を行った所、今まで誰も気づかなかった犬種特有の遺伝病リスクが続々と発見されました(2016.8.25/フィンランド)。

詳細

 調査を行ったのは、フィンランド・ヘルシンキ大学の生物科学チーム。2013~2015年の期間、頬粘膜や血液という形で6,788頭の犬からDNAを集め、特定疾患との関連性が確認されている93種類の遺伝子変異を「MyDogDNA®」という検査を通して一斉に調査しました。その結果、遺伝子変異を3つ同時に保有していた犬が3頭、2つ保有が66頭 (1.0%) 、1つだけ保有が1,139頭 (16.8%)、そして全体では17.8% (1,208頭) の犬が最低1つの遺伝子変異を持っていることが明らかになったといいます。また、これまで「疾患Xの発症リスクが高い」と言われてきた犬種のDNAからは、やはり高頻度で疾患Xに関連した遺伝子変異が見つかったと言います。さらに、これまで特定疾患との関連が全く指摘されていなかった犬種のDNAからも、偶発的に疾患関連遺伝子変異が発見されたそうです。具体的には34犬種で15の変異が新たに確認されました。
 こうした結果から調査チームは、たった1度のDNA採取から複数の疾患関連遺伝子変異を検出する「多重スクリーニング法」は、犬種に隠された遺伝病を浮き彫りにして病気を早期発見すると同時に、ブリーディングによって偶発的に変異遺伝子が拡散されるのを防ぐ際に役だってくれるだろうとしています。
 以下では今回の調査で新たに見つかった15の遺伝子変異と関連疾患のリストをご紹介します。リスト中の「好発犬種」はすでに発症リスクが高いことが確認されている犬種、「怪しい犬種」は今回の調査で新たにリスクが確認された犬種を意味しています。犬種の後ろにある数字は遺伝子変異の陽性率です。 Insights into the Breed Distribution of Risk Variants for Canine Hereditary Disorders
Jonas Donner, Maria Kaukonen, et al. 2016

無カタラーゼ症

  • 疾患について過酸化水素を酸素と水に変える酵素「カタラーゼ」が不足し、過酸化水素が分解できなくなる病気。遺伝子変異は「CAT c.979G>A(p.Ala327Thr)」。
  • 好発犬種ビーグル
  • 怪しい犬種アメリカンフォックスハウンド(1/1頭)

軟骨異形成症

頭蓋下顎骨症

第VII因子欠乏症

家族性腎症

高尿酸尿症

MDR1欠損症

多中心性網膜症1型

多中心性網膜症3型

先天性筋強直症

原発性水晶体脱臼

進行性若年性小脳失調

杆体錐体形成不全症

フォン・ヴィルブランド病1型

フォン・ヴィルブランド病2型