詳細
調査を行ったのは、フィンランド・ヘルシンキ大学の生物科学チーム。2013~2015年の期間、頬粘膜や血液という形で6,788頭の犬からDNAを集め、特定疾患との関連性が確認されている93種類の遺伝子変異を「MyDogDNA®」という検査を通して一斉に調査しました。その結果、遺伝子変異を3つ同時に保有していた犬が3頭、2つ保有が66頭 (1.0%) 、1つだけ保有が1,139頭 (16.8%)、そして全体では17.8% (1,208頭) の犬が最低1つの遺伝子変異を持っていることが明らかになったといいます。また、これまで「疾患Xの発症リスクが高い」と言われてきた犬種のDNAからは、やはり高頻度で疾患Xに関連した遺伝子変異が見つかったと言います。さらに、これまで特定疾患との関連が全く指摘されていなかった犬種のDNAからも、偶発的に疾患関連遺伝子変異が発見されたそうです。具体的には34犬種で15の変異が新たに確認されました。
こうした結果から調査チームは、たった1度のDNA採取から複数の疾患関連遺伝子変異を検出する「多重スクリーニング法」は、犬種に隠された遺伝病を浮き彫りにして病気を早期発見すると同時に、ブリーディングによって偶発的に変異遺伝子が拡散されるのを防ぐ際に役だってくれるだろうとしています。
以下では今回の調査で新たに見つかった15の遺伝子変異と関連疾患のリストをご紹介します。リスト中の「好発犬種」はすでに発症リスクが高いことが確認されている犬種、「怪しい犬種」は今回の調査で新たにリスクが確認された犬種を意味しています。犬種の後ろにある数字は遺伝子変異の陽性率です。 Insights into the Breed Distribution of Risk Variants for Canine Hereditary Disorders
Jonas Donner, Maria Kaukonen, et al. 2016
こうした結果から調査チームは、たった1度のDNA採取から複数の疾患関連遺伝子変異を検出する「多重スクリーニング法」は、犬種に隠された遺伝病を浮き彫りにして病気を早期発見すると同時に、ブリーディングによって偶発的に変異遺伝子が拡散されるのを防ぐ際に役だってくれるだろうとしています。
以下では今回の調査で新たに見つかった15の遺伝子変異と関連疾患のリストをご紹介します。リスト中の「好発犬種」はすでに発症リスクが高いことが確認されている犬種、「怪しい犬種」は今回の調査で新たにリスクが確認された犬種を意味しています。犬種の後ろにある数字は遺伝子変異の陽性率です。 Insights into the Breed Distribution of Risk Variants for Canine Hereditary Disorders
Jonas Donner, Maria Kaukonen, et al. 2016
無カタラーゼ症
- 疾患について過酸化水素を酸素と水に変える酵素「カタラーゼ」が不足し、過酸化水素が分解できなくなる病気。遺伝子変異は「CAT c.979G>A(p.Ala327Thr)」。
- 好発犬種ビーグル
- 怪しい犬種アメリカンフォックスハウンド(1/1頭)
軟骨異形成症
- 疾患について軟骨が正常に成長せず、体が大きくならない病気。遺伝子変異は「ITGA10 c.2083C>T(p.Arg695)」。
- 好発犬種ノルウェジャンエルクハウンド | カレリアンベアドッグ
- 怪しい犬種チヌーク(5/47頭)
頭蓋下顎骨症
- 疾患について頭蓋骨や下顎骨が進行性に肥大していく病気。遺伝子変異は「SLC37A2 c.1332C>T(p.Asp444Asp)」。
- 好発犬種ケアーンテリア | スコティッシュテリア | ウェストハイランドホワイトテリア
- 怪しい犬種オーストラリアンシェパード(1/140頭) | ランカシャーヒーラー(1/40頭)
第VII因子欠乏症
- 疾患について肝臓で作られるタンパク質の一種「第VII因子」が欠乏することにより、血液凝固が正常に行われなくなる病気。遺伝子変異は「F7 c.407G>A(p.Gly136Glu)」。
- 好発犬種アラスカンクリーカイ | エアデールテリア | ビーグル | ジャイアントシュナウザー | スコティッシュディアハウンド
- 怪しい犬種アメリカンフォックスハウンド(1/1頭) | フィニッシュハウンド(54/237頭) | ジャーマンワイアーヘアードポインター(1/3頭) | アイリッシュウォータースパニエル(1/3頭) | 日本スピッツ(1/6頭) | ミニチュアシュナウザー(1/7頭) | パピヨン(5/41頭) | シーリハムテリア(1/1頭) | ウェルシュスプリンガースパニエル(18/76頭)
家族性腎症
- 疾患について尿細管の異常が若い頃から出現し、尿を生成できなくなる病気。遺伝子変異は「COL4A4 c.115A>T(p.Lys40)」。
- 好発犬種アメリカンコッカースパニエル | イングリッシュコッカースパニエル
- 怪しい犬種ウェルシュスプリンガースパニエル(10/76頭)
高尿酸尿症
- 疾患について尿中の尿酸濃度が過剰になる病気。遺伝子変異は「SLC2A9 c.616G>T(p.Cys188Phe)」。
- 好発犬種ロシアンブラックテリア | ダルメシアン | ブルドッグ
- 怪しい犬種ダーニッシュスウェーディッシュファームドッグ(13/168頭) | ジャーマンハンティングテリア(3/22頭) | クロムフォルレンダー(1/160頭) | ロマーニャウォータードッグ(52/637頭) | ポンオードメールスパニエル(1/4頭) | スウェーディッシュヴァルフント(3/71頭)
MDR1欠損症
- 疾患について血液脳関門におけるブロック作用が低下し、特定薬剤に対して中毒を起こしやすくなる病気。遺伝子変異は「ABCB1 c.295_298delAGAT(p.Asp75fs)」。
- 好発犬種オーストラリアンシェパード | コリー | シェットランドシープドッグ
- 怪しい犬種チヌーク(7/47頭) | ダーニッシュスウェーディッシュファームドッグ(2/168頭)
多中心性網膜症1型
- 疾患について網膜の中心にある黄斑部にむくみが生じ、視野が悪化する病気。遺伝子変異は「BEST1 c.73C>T(p.Arg25)」。
- 好発犬種オーストラリアンシェパード | ブルドッグ | グレートピレニーズ | マスティフ
- 怪しい犬種ブラジリアンテリア(25/107頭)
多中心性網膜症3型
- 疾患について網膜の中心にある黄斑部にむくみが生じ、視野が悪化する病気。遺伝子変異は「BEST1 c.1388delC(p.Pro463fs)」。
- 好発犬種ラポニアンハーダー
- 怪しい犬種フィニッシュラップフント(3/218頭)
先天性筋強直症
- 疾患について筋肉が過度に緊張したまま弛緩しない病気。遺伝子変異は「CLCN1 c.2665insA(p.Arg889fs)」。
- 好発犬種オーストラリアンキャトルドッグ
- 怪しい犬種ボーダーコリー(2/29頭)
原発性水晶体脱臼
- 疾患について他の疾患の有無とは無関係に水晶体が元の位置からずれてしまう病気。遺伝子変異は「ADAMTS17 c.1473+1G>A」。
- 好発犬種アメリカンヘアレステリア | チャイニーズクレステッドドッグ | ジャックラッセルテリア
- 怪しい犬種ダーニッシュスウェーディッシュファームドッグ(37/168頭)
進行性若年性小脳失調
- 疾患について子犬の頃から小脳に異常をきたし、運動がスムーズに行えなくなる病気。遺伝子変異は「SEL1L c.1972T>C(p.Ser658Pro)」。
- 好発犬種フィニッシュハウンド
- 怪しい犬種ノールボッテンスペッツ(13/103頭)
杆体錐体形成不全症
- 疾患について白黒や色彩を感知して視神経に伝える杆体や錐体が正常に形成されない病気。遺伝子変異は「PDE6A c.1940delA(p.Asn616fs)」。
- 好発犬種ウェルシュコーギーカーディガン | ウェルシュコーギーペンブローク
- 怪しい犬種チャイニーズクレステッドドッグ(1/48頭) | ポメラニアン(1/8頭)
フォン・ヴィルブランド病1型
- 疾患についてフォン・ヴィルブランド因子の欠損により血小板に異常が起こり、凝血過程が正常に行われなくなる病気。遺伝子変異は「VWF c.7437G>A(p.Ser2479Ser)」。
- 好発犬種バーニーズマウンテンドッグ | ドーベルマン | マンチェスターテリア
- 怪しい犬種バーベイ(2/39頭) | ブラジリアンテリア(1/107頭) | ロングヘアードダッチシェパード(1/16頭) | クロムフォルレンダー(13/160頭)
フォン・ヴィルブランド病2型
- 疾患についてフォン・ヴィルブランド因子の欠損により血小板に異常が起こり、凝血過程が正常に行われなくなる病気。遺伝子変異は「VWF c.4937A>G(p.Asn1646Ser)」。
- 好発犬種ジャーマンショートヘアードポインター | ジャーマンワイアーヘアードポインター
- 怪しい犬種バーベイ(1/39頭) | バセンジー(1/7頭) | ボーダーコリー(2/29頭) | チャイニーズクレステッドドッグ(2/48頭) | ダーニッシュスウェーディッシュファームドッグ(1/168頭) | ジャーマンスピッツ(1/4頭) | ロマーニャウォータードッグ(6/637頭) | ノルウェジャンエルクハウンド(46/199頭) | オールドイングリッシュシープドッグ(1/55頭) | ポーチュギーズウォータードッグ(1/5頭) | ラッソヨーロピアンライカ(1/9頭)