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犬の足・完全ガイド~構造・役割から爪・肉球の仕組みまで図解

 犬の足の基本構造や役割について詳しく解説します。前足と後ろ足はどう違うのでしょうか?爪や肉球はどのような構造になっているのでしょうか?写真とともに見ていきましょう!

犬の足の基本構造

 犬の足と人間の足の違いは、クッションの役割を果たす肉球(にくきゅう, pad)と、スパイクの役割を果たす鉤爪(かぎつめ, claw)を有する、という点です。パンダやシロクマ、ライオンなど四足歩行する肉食動物の多くは犬と同様の構造を有しています。ちなみに犬を始めとする動物の足を表現するとき、日本語では人間に対しても動物に対しても「足」という単語を用いますが、英語で動物の足を表現する際は「paw」(ポー)という具合に、「foot」や「leg」とは完全に区別した単語が用いられます。英語の「paw」は肉球と鉤爪を有する、四足動物の手足という意味であり、この定義づけに従って、犬の足も「paw」と呼ばれます。 いろいろな動物の足・拡大図  犬の足の構造は、犬種に関わらず共通ですが、形によっては数種類に分類されることもあります。
形状による犬の足の分類
指の先端が小さいのが特徴な猫足(cat feet)、および中間2本の指が長いのが特徴のうさぎ足(hare feet)の図解

犬の前足

犬の足の接地面を人間の手で模擬した図を見ると、人間から見て犬がいかに奇妙な歩き方をしているのかが分かります。  犬の前足は、普通に立った状態だと指だけで体重を支えている状態です。つまり人間の手で言うと右図のようになり、ぴったりと手の平を地面につけるのではなく指の付け根で手を折り返して体重を支えているのです。地面から浮いた感じ付いている指が第一指(母指、または拇指)で、歩行には全く役に立っていません。第一指からさらに上についている突起は「手根球」(しゅこんきゅう)と呼ばれ、「手根骨」(しゅこんこつ)を何かにぶつけて折れることを防ぐクッションの役割を果たしています。
 足の裏をべったりと付けて歩く人間の歩行様式を蹠行性(せきこうせい)と言うのに対し、指先を付けて歩く犬や猫の歩行様式を指行性(しこうせい)といいます。ちなみにひづめを持つ馬などの歩行様式は蹄行性(ていこうせい)です。 犬の前足の写真とレントゲン写真対応図

犬の後足

 通常犬の後ろ足に親指(母指/拇指/第一指)はありません。しかしまれに親指が付いた状態で生まれる犬がおり、それは狼爪(ろうそう, dew claw)」と呼ばれます。歩行には全く役に立っておらず、皮一枚でぶら下がったような状態のため自然に取れてしまうこともありますが、自然に取れない場合は何かにぶつけて怪我をする危険性もあるので人為的に取ってしまうことが多いようです(⇒犬の狼爪切除)。狼爪が犬種標準として採用されているグレートピレニーズとブリアード しかし犬種によってはこの狼爪が犬種標準として採用されているものもあります。代表的なのはグレートピレニーズブリアードの2種です。

犬の爪

この写真では犬のクイックと爪部分が明確に区別できます  犬の爪はカーブを描くように丸まりながら伸びていきます。しかし猫のように先端がとがっていないので木に登ることはできません。
 人間と同じように赤い部分と白っぽい部分が見て取れますが、人間の指と同様赤い部分には神経と血管が通っています(この部分をクイックといいます)。爪を切るときは赤い部分まで切り込まないように注意してください。もし切ってしまうと人間で言う「深爪」の状態になり、神経が密な部位ということもあって非常に痛がります。また爪の硬さは色の濃さに比例し、白い爪よりも黒い爪のほうが硬いです。 犬の爪のケア

犬の肉球

 犬の肉球は皮膚の角質層(かくしつそう)が厚くなったもので、人間で言えば手の「まめ」や硬くなったかかとに相当します。肉球の中にはコラーゲン線維、弾性繊維(だんせいせんい, エラスチン)、脂肪などが入っており衝撃吸収材としての役割を果たしています。また2016年に行われた調査では、地面からの圧力を効率的に分散するための特殊なハニカム構造を備えていることが明らかになりました。この特殊構造により、床からの反発力(GRF)が最大で35%も低下し、表皮層にかかるミーゼス応力(物体の内部に生じる6つの応力をひとつの数値に代表させたもの)が1000分の一にまで低下するとのこと。詳しくは以下の記事をご参照ください。 犬の肉球はハニカム構造で衝撃を吸収する 犬の肉球内部に見られる真皮乳頭と層状表皮組織からなるハニカム構造 肉球の表面は丈夫にできていますが、夏の焼け付いたアスファルトに立つとやけどをすることもありますし、草むらなどで走り回ると思わぬ切り傷を負うこともあります。再生能力がその他の皮膚組織よりも劣っていますので、小さな傷でも大事を取って獣医さんに診てもらったほうが良いでしょう。 破傷風 犬の足の裏を見ると、この写真のような位置関係で肉球が付着しています  肉球は犬の体の中で唯一汗を出すことのできる場所です。肉球をしっとり湿らせることにより、滑り止めの効果が生まれます。また、犬が自分のおしっこした場所でしきりに土をかきむしる行動を見せることがありますが、これは肉球から出る汗を土につけることで自分のテリトリーを主張しているものと考えられます。
 肉球の色はピンクから黒まで様々で、年齢を重ねる内に段々と黒く硬くなっていくようです。前足にも後足にも指球(しきゅう, digital pad)と足底球(そくていきゅう, metacarpal pad)があるものの、前足にある手根球(しゅこんきゅう、carpal pad)は後足では見られません。