犬の内臓・神経・リンパ系
犬の骨、筋肉のほか、内臓、リンパ系、神経系、などについてイラストつきで解説します。
犬の神経解剖図
犬の神経は人間と同様、中枢神経(ちゅうすうしんけい=脳・脊髄)と末梢神経(まっしょうしんけい=中枢神経から伸びる神経ケーブル)より構成されます。
末梢神経には中枢神経からの命令を末端に伝える「遠心性神経」(えんしんせいしんけい)と、逆に末端からの情報を中枢に伝える「求心性神経」(きゅうしんせいしんけい)があり、お互いにバランスととりながら共存しています。運動神経(うんどうしんけい)は体を動かす指令を筋肉に伝え、体性神経(たいせいしんけい)は感覚からの情報(痛い・熱い・冷たいなど)を脳に伝えるといった具合です。
一方、自分の意思ではコントロールできない神経は「自律神経」(じりつしんけい)と呼ばれ、交感神経(こうかんしんけい)と副交感神経(ふくこうかんしんけい)があり、相補(そうほ)しながら絶妙なバランスを保っています。自律神経系は主として内臓の調整に寄与していますが、精神的ストレスなどが原因でこの自律神経が不調に陥ると、食欲不振や嘔吐(おうと)などの内臓の症状として発現することもあります。人間で言うと、「恋わずらいで食欲がなくなる」、といった所でしょうか。
一方、自分の意思ではコントロールできない神経は「自律神経」(じりつしんけい)と呼ばれ、交感神経(こうかんしんけい)と副交感神経(ふくこうかんしんけい)があり、相補(そうほ)しながら絶妙なバランスを保っています。自律神経系は主として内臓の調整に寄与していますが、精神的ストレスなどが原因でこの自律神経が不調に陥ると、食欲不振や嘔吐(おうと)などの内臓の症状として発現することもあります。人間で言うと、「恋わずらいで食欲がなくなる」、といった所でしょうか。
犬の内臓解剖図
犬の内臓は同じ哺乳類である人間とほぼ同じです。
心臓や血管は循環器系(じゅんかんきけい)と呼ばれ、体中に血液を巡回させる役割を担っています。循環器系の病気にかかると、呼吸困難や咳などの症状が現れ、運動能力が著しく損なわれます。
胃、腸、肝臓、膵臓、胆嚢は消化器系(しょうかきけい)と呼ばれ、摂取した食物の消化と吸収を担当しています。消化器系の病気にかかると、栄養を体内にうまく取り込むことができなくなるため、嘔吐、食欲不振、体重減少などの症状をきたします。
腎臓、尿管、膀胱などは泌尿器系(ひにょうきけい)と呼ばれ、体内の不要物を尿として外に排出するのが仕事です。泌尿器系の病気にかかると、本来、体の外に出すべき毒素が体内にとどまってしまうため、時に命にかかわるような重篤な状態に陥ります。
肺や気管、横隔膜などは呼吸器系(こきゅうきけい)と呼ばれ、外界から取り込んだ酸素を体内で二酸化炭素と交換し、外に吐き出す機能を持っています。呼吸器系の病気にかかると、外界と体内のガス交換がうまくいかず、呼吸困難に陥ります。
草食動物(牛や馬)の腸の長さは、体長の約10~20倍であるのに対し、肉食動物の腸は4~5倍程度と言われています。草食動物の腸の長さは、食物繊維等を豊富に含む植物を消化するために進化したものです。一方雑食である人間の腸の長さがおおよそ体長の6~9倍で、犬のそれは5~7倍と言われています。こうしたデータから憶測すると、犬の食性は雑食というよりは、どちらかといえば肉食に近いといえるでしょう。
胃、腸、肝臓、膵臓、胆嚢は消化器系(しょうかきけい)と呼ばれ、摂取した食物の消化と吸収を担当しています。消化器系の病気にかかると、栄養を体内にうまく取り込むことができなくなるため、嘔吐、食欲不振、体重減少などの症状をきたします。
腎臓、尿管、膀胱などは泌尿器系(ひにょうきけい)と呼ばれ、体内の不要物を尿として外に排出するのが仕事です。泌尿器系の病気にかかると、本来、体の外に出すべき毒素が体内にとどまってしまうため、時に命にかかわるような重篤な状態に陥ります。
肺や気管、横隔膜などは呼吸器系(こきゅうきけい)と呼ばれ、外界から取り込んだ酸素を体内で二酸化炭素と交換し、外に吐き出す機能を持っています。呼吸器系の病気にかかると、外界と体内のガス交換がうまくいかず、呼吸困難に陥ります。
草食動物(牛や馬)の腸の長さは、体長の約10~20倍であるのに対し、肉食動物の腸は4~5倍程度と言われています。草食動物の腸の長さは、食物繊維等を豊富に含む植物を消化するために進化したものです。一方雑食である人間の腸の長さがおおよそ体長の6~9倍で、犬のそれは5~7倍と言われています。こうしたデータから憶測すると、犬の食性は雑食というよりは、どちらかといえば肉食に近いといえるでしょう。
犬のリンパ系解剖図
リンパ系とは、動脈と静脈からなる血管系とはまったく別の脈管系です。 リンパ系を構成するリンパ管の中には白血球(はっけっきゅう)が流れています。白血球は体内に侵入した異物を排除するボディガードであり、「免疫力」(めんえきりょく)を司る重要なものです。免疫力が落ちる、すなわち白血球の働きが悪くなると病原菌に対する抵抗力が弱まり、病気にかかりやすくなるという訳です。
体内に異物が侵入すると、体の節々に存在している「リンパ節」がこりこりと腫れますので、外から触知できることもあります。飼い主さんは犬のボディチェックをして、不自然なこりこりがないかどうか調べる習慣を付けましょう。
犬の骨と筋肉の解剖図
犬の骨と筋肉の位置関係を、動画を用いて解説していきます。筋肉の名称を丸暗記する必要はありませんが、犬の体を見て内部の解剖をイメージできるようになると、スキンシップを図る際にとても役に立ちます。
犬の骨格全体図
犬の骨格は、同じ哺乳類(ほにゅうるい)である人間の骨格を四つんばいにした状態と似た構造をしていますが、若干の違いもあります。 まず人間の胸椎(きょうつい-いわゆる背骨)が12個であるのに対し、犬のそれは13個あり、それに伴って人間の肋骨(ろっこつ)が12対であるのに対し、犬は13対あります。人間の腰椎(ようつい-腰の骨)が5個であるのに対し、犬の腰椎は7個あり、人間には無い尾椎(びつい-しっぽの中にある骨)がおよそ20個あります。
人間は20年ほどの時間をかけて緩やかに骨格を成長させるのに対し、犬は生後1年でほぼ成犬のサイズに急成長します。ダックスフンドの短い足、ペキニーズなど短吻(たんぷん)系犬種の頭部、ブルドッグやボストンテリアのらせん状に巻いたしっぽなどは、骨の形成異常を正統な犬種標準として認定したものです。
人間は20年ほどの時間をかけて緩やかに骨格を成長させるのに対し、犬は生後1年でほぼ成犬のサイズに急成長します。ダックスフンドの短い足、ペキニーズなど短吻(たんぷん)系犬種の頭部、ブルドッグやボストンテリアのらせん状に巻いたしっぽなどは、骨の形成異常を正統な犬種標準として認定したものです。
犬の筋肉全体図
犬の筋肉と人間の筋肉とは非常に良く似ており、呼び名に多少違いがあるくらいです。 しかし人間が直立二足歩行に順応しているのに対し、犬は四足歩行(しそくほこう)に順応しているというちょっとした違いもあります。具体的に言うと、直立して両腕が自由になった人間は、腕を上に持ち上げる僧帽筋(そうぼうきん)や三角筋(さんかくきん)、および指先を細かく動かす為の前腕屈筋群(ぜんわんくっきんぐん)・伸筋群(しんきんぐん)が発達しているのに対し、犬は前足を踏ん張って上体を支えるための胸筋(きょうきん)群や走る際の推進力を生み出す広背筋(こうはいきん)、臀筋(でんきん)群などが発達しています。
また、猫は一瞬のスピードで獲物をつかまえる「チーター型」の筋肉を持っているのに対し、犬は群れで獲物を長時間追いかけ、疲れさせてからしとめるという「オオカミ型」の筋肉を持っています。具体的に言うと、猫は瞬発力を発揮しやすい「白筋」(はっきん-fast fiber)が優位であるのに対し、犬は持久力に適した「赤筋」(せっきん-slow fiber)が優位となっているのです。シベリアンハスキーが、そりを引っ張りながら信じられないくらいの長距離を走ることが出来るのは、犬の筋肉がそもそも持久走向きに進化しているからなのでしょう。 筋肉の区分するとき、「力は弱いが疲れにくい」という特性を持った「TypeI」、「力は強いが疲れやすい」という特性を持った「TypeIIx」、そして「前二者の中間」である「TypeIIa」に分類するという方法があります。それぞれの特性をより具体的に示した表は以下です。 さらに以下は、チーター、猫、犬の体に分布している32個の筋肉を調べ、それぞれの筋肉に含まれる「TypeI」、「TypeIIa」、「TypeIIx」の割合を数値化したものです。
また、猫は一瞬のスピードで獲物をつかまえる「チーター型」の筋肉を持っているのに対し、犬は群れで獲物を長時間追いかけ、疲れさせてからしとめるという「オオカミ型」の筋肉を持っています。具体的に言うと、猫は瞬発力を発揮しやすい「白筋」(はっきん-fast fiber)が優位であるのに対し、犬は持久力に適した「赤筋」(せっきん-slow fiber)が優位となっているのです。シベリアンハスキーが、そりを引っ張りながら信じられないくらいの長距離を走ることが出来るのは、犬の筋肉がそもそも持久走向きに進化しているからなのでしょう。 筋肉の区分するとき、「力は弱いが疲れにくい」という特性を持った「TypeI」、「力は強いが疲れやすい」という特性を持った「TypeIIx」、そして「前二者の中間」である「TypeIIa」に分類するという方法があります。それぞれの特性をより具体的に示した表は以下です。 さらに以下は、チーター、猫、犬の体に分布している32個の筋肉を調べ、それぞれの筋肉に含まれる「TypeI」、「TypeIIa」、「TypeIIx」の割合を数値化したものです。
- チーターの筋組成TypeI=28.3%/TypeIIa=26.7%/TypeIIx=45.0%
- 猫の筋組成TypeI=21.3%/TypeIIa=21.5%/TypeIIx=57.2%
- 犬の筋組成TypeI=32.0%/TypeIIa=47.7%/TypeIIx=20.3%
犬の顔の骨と筋肉解剖図
以下でご紹介するのは犬の顔面部の骨格、および筋肉の走行を解説した動画です。重要な部位については動画の下に詳細を載せてありますのでご参照ください。
犬の顔の骨と筋肉解剖図
- 顔の骨格顔の骨格は大きく分けて、上部の頭蓋(とうがい)と下部の下顎骨(かがくこつ)からなり、上下をつなぐ関節が顎関節(がくかんせつ)です。ちなみに犬のあごは草食動物や雑食動物のように左右に動かすことができません。すなわち、口の中のエサをもぐもぐとすりつぶすことが非常に苦手ということです。
- 眼輪筋眼球の周囲を一周するように位置しているのが眼輪筋(がんりんきん)で、この筋肉が収縮することによってまぶたが閉じられます。まつ毛に何かが当たったりクシャミをするときなどは、意思とは関係なく反射的に眼輪筋が収縮し、閉眼(へいがん)が起こります。
- 前頭筋前頭筋(ぜんとうきん)が収縮すると目頭が上方に引き寄せられます。
- 犬歯筋・上唇挙筋怒りや威嚇を表すときに犬歯筋(けんしきん)が収縮すると、文字通り「犬歯」(キバ)が露出します。上唇挙筋(じょうしんきょきん)は上唇全体を上に引き上げ、歯を露出させます。犬が「ウ~!」とうなっているようなときは、これらの筋肉が動員されているというわけです。
- 咬筋咬筋(こうきん)は顎関節をつなぐ強力な筋肉で、この筋肉が収縮することによって口が閉じるというメカニズムになっています。野生環境に生きている肉食動物は、獲物に食らい付くことで息の根を止める必要性がありますので、生きていくために必要不可欠な筋肉といっても過言ではありません。
犬の首の骨と筋肉解剖図
以下でご紹介するのは犬の頚部(けいぶ)の骨格、および筋肉の走行を解説した動画です。重要な部位については動画の下に詳細を載せてありますのでご参照ください。
犬の首の骨と筋肉解剖図
- 首の骨格犬の首は人間を始めとする多くの哺乳動物と同様、七つの頚椎(けいつい)からなります。一番上は環椎(かんつい)、二番目が軸椎(じくつい)と呼ばれる特殊な形をしており、首を左右に回すときに役立つ構造になっています。
- 板状筋板状筋(ばんじょうきん)は首の後方に位置する筋肉で、左右同時に収縮すると首を上に向け、また左右片方ずつ収縮すると左を向いたり右を向いたりします。板状筋の下層には頭半棘筋(とうはんきょくきん=頚二腹筋+錯綜筋)や頚最長筋(けいさいちょうきん)などのインナーマッスルが豊富に存在し、犬の首を斜めに持ち上げる補助をしています。
- 菱形筋菱形筋(りょうけいきん)は肩甲骨と脊柱を結ぶ筋肉で、収縮すると肩甲骨が背中の中央部、すなわち脊柱に向かって引き寄せられます。
- 僧帽筋僧帽筋(そうぼうきん)は肩甲骨上部と頚椎とを結ぶ筋肉で、肩甲骨を頭部に向かって引き寄せる働き(人間で言うと肩をすくめるような動き)をします。人間では肩こりの原因筋として有名ですが、犬の僧帽筋は人間のものほど大きくはありません。
犬の背中の骨と筋肉解剖図
以下でご紹介するのは犬の背部(はいぶ)から腰部にかけての骨格、および筋肉の走行を解説した動画です。重要な部位については動画の下に詳細を載せてありますのでご参照ください。
犬の背中の骨と筋肉解剖図
- 背部の骨格犬の背部は胸椎(きょうつい)と腰椎(ようつい)とからなります。人間の胸椎が12個であるのに対して犬のそれは13、そして人間の腰椎が5個であるのに対して犬のそれは7個あります。椎間板(ついかんばん)は、一個一個の背骨の骨(椎骨=ついこつ)の間に挟まっており、衝撃を緩和するクッションの働きをしますが、椎間板がやぶれて中の髄核(ずいかく)が外に飛び出すことを「椎間板ヘルニア」と呼びます。
- 棘筋・半棘筋棘筋(きょくきん)と半棘筋(はんきょくきん)は背骨に近いところについている細かい筋肉で、一個一個の背骨を細かく動かす際に役立ちます。
- 胸・および腰最長筋胸最長筋(きょうさいちょうきん)と腰最長筋(ようさいちょうきん)は体表に近い場所に位置する筋肉で、脊柱を大きく動かすときに働きます。
- 広背筋広背筋(こうはいきん)は肩甲骨、および上腕の骨と骨盤とを結ぶ非常に大きな筋肉で、主として上腕を腰に近づける働き(人間で言うと鉄棒の懸垂運動)をします。走るときの推進力を生み出すとても強力な筋肉です。
- 腸肋筋群骨盤上端(腸骨)と肋骨とを結ぶ筋群を便宜上「腸肋筋群」(ちょうろくきんぐん)とすると、そこには腰腸肋筋、腰方形筋、腸腰筋(ちょうようきん=大腰筋+腸骨筋)などが含まれます。脇腹から腰にかけて位置しており、骨盤を肋骨に近づける(人間で言うと、フラダンスをするときの腰の動き)のが役割です。
犬の肩の骨と筋肉解剖図
以下でご紹介するのは犬の肩部から前腕部にかけての骨格、および筋肉の走行を解説した動画です。重要な部位については動画の下に詳細を載せてありますのでご参照ください。
犬の肩の骨と筋肉解剖図
- 肩の骨格犬の肩は肩甲骨(けんこうこつ)とそれに続く上腕骨(じょうわんこつ)、および前腕骨(橈骨と尺骨)とからなります。 肩甲骨と上腕骨は肩関節を形成しますが、骨と骨をつなぐ靭帯(じんたい)と筋肉が強靭なため、人間のようにぐるぐる回すのは得意ではなく、前足を前に振り出したり後方に引き寄せたりするという動きがメインです。
- 上腕二頭筋上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)は人間で言うと力こぶに相当する筋肉です。この筋肉が収縮することで肘関節が曲がり、前足が「お手」をするときの形になります。
- 上腕三頭筋上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)は上腕二頭筋と対になる筋肉で、二頭筋が肘を曲げるのに対して三頭筋は肘を伸ばす働きをします。犬は四足歩行で常に肘を張った状態にあります(腕立て伏せ状態)ので、この筋肉がすばらしく発達しています。
- 三角筋三角筋(さんかくきん)は上腕骨の外側に付着している筋肉で、前足を外側に広げる働きをします。しかし犬にとって前足を外に向かって広げるという動作は極めて少ないため、人間ほど発達していません。
- 指伸筋群指伸筋群という解剖学用語はありませんが、橈側手根伸筋や尺側手根伸筋、外側指伸筋、総指伸筋等をまとめて便宜上こう表現します。手首や指をそらすのが役割です。
- 指屈筋群指屈筋群という解剖学用語はありませんが、浅指屈筋、深指屈筋、橈側手根屈筋等をまとめて便宜上こう表現します。手首や指を丸めるのが役割です。犬の足は「指行性」(しこうせい)といって常に指を折り曲げて体を支えていますので、この指屈筋群がなければ足がカクンと折れて歩行が不可能になります。
犬の尻の骨と筋肉解剖図
以下でご紹介するのは犬の臀部から下腿(かたい=膝から下)にかけての骨格、および筋肉の走行を解説した動画です。重要な部位については動画の下に詳細を載せてありますのでご参照ください。
犬の尻の骨と筋肉解剖図
- 尻の骨格犬の臀部は骨盤(腸骨+仙骨+寛骨)とそれにつながる大腿骨、および下腿骨(脛骨と腓骨)からなります。骨盤側面にある寛骨臼(かんこつきゅう)というソケットの中に大腿骨の先端がぽこっとはまることにより「股関節」(こかんせつ)が形成されるという構造です。 遺伝病の一種股関節形成不全(こかんせつけいせいふぜん=hip dysplasia)は、大腿骨が寛骨臼の中にぴったりと入らない病気であり、ジャーマンシェパード、ラブラドールレトリバー、ロットワイラーなどの大型犬で頻発します。
- 大腿直筋大腿直筋(だいたいちょくきん)は骨盤前面と膝関節とを結ぶ筋肉で、膝を腹にひきつける働きをします。人間で言うとラインダンスなどで太ももを高く上げる動作をするときにこの筋肉が動員され、犬で言うと、走るときなど、後ろ足を前方に振り出す動作で使われます。
- 臀筋群深臀筋(しんでんきん)、中臀筋(ちゅうでんきん)、浅臀筋(せんでんきん)をまとめて便宜上「臀筋群」(でんきんぐん)と総称すると、この筋群は大腿直筋とは逆に、太ももを後方に引き寄せる働きをします。走るときの推進力を生み出すとても強力な筋肉です。
- 外側広筋外側広筋(がいそくこうきん)は大腿直筋とともに大腿四頭筋(だいたいしとうきん)を形成し、膝関節を伸ばす働きをします。人間で言うと、いわゆる太ももに相当し、ジャンプするときなどに動員される強力な筋肉です。
- ハムストリング大腿二頭筋と半腱様筋(はんけんようきん)、および半膜様筋(はんまくようきん)とを合わせて「ハムストリング」と総称します。この筋群は大腿四頭筋とは逆に、膝関節をくの字に曲げる働きをします。
- 内転筋内転筋(ないてんきん)は大腿骨の内側に付着した筋肉で、後ろ足を内側に引き寄せる働きをします。人間で言うと、サッカーのインサイドキックのような動きを生み出す筋肉です。
- 前脛骨筋前脛骨筋(ぜんけいこつきん)はすねと足の甲とを結ぶ筋肉で、足首をくの字に曲げる働きをします。人間で言うと、ハイヒールをはいた女性は常にこの筋肉を使用しています。
- 腓腹筋腓腹筋(ひふくきん)はすねの骨とかかとを結ぶ筋肉で、前脛骨筋とは逆に、足首をバレリーナのように一直線に伸ばす働きをします。ちなみに腓腹筋とかかとの骨とを結ぶ部分が「アキレス腱」で、この腱が切れてしまうと足首を伸ばすことができず、後ろ足の先端がブラブラした状態になります。
犬の胸の骨と筋肉解剖図
以下でご紹介するのは犬の胸部と腹部の骨格、および筋肉の走行を解説した動画です。重要な部位については動画の下に詳細を載せてありますのでご参照ください。
犬の胸の骨と筋肉解剖図
- 胸の骨格犬の胸部は肋骨と肋骨同士を胸の前面でつなぎとめる胸骨と呼ばれる骨からなります。人間の肋骨が12本であるのに対し、犬のそれは13本です。肋骨で囲まれた空間は「胸郭」(きょうかく)とも呼ばれ、肺や心臓など呼吸や循環にかかわる重要な臓器を保護しています。
- 肋間筋肋間筋(ろっかんきん)は肋骨の間に挟まっている細かな筋肉で、肋骨同士を近づける働きをします。全ての肋間筋が連動して作用することにより胸郭の体積が増え、外気を肺の中に取り込むことができるという寸法です。これはちょうど「ふいご」を手で広げる原理に相当します。
- 腹直筋腹直筋(ふくちょくきん)は肋骨と骨盤前面(恥骨)とを結ぶ巨大な筋肉で、骨盤を胸部に近づけて体を丸める働きをします。人間で言うと腹筋運動するときにキーンと痛くなってくる筋肉です。
- 腹斜筋腹斜筋(ふくしゃきん)は外腹斜筋と内腹斜筋とからなり、主として体幹を一方に傾けるときに作用します。体をねじるときにも動員される筋肉です。
- 胸筋 胸筋(きょうきん)は深胸筋と浅胸筋とからなり、犬の前足を支える極めて大きな筋肉です。前足の根元である肩甲骨は脊柱と関節を形成しておらず、筋肉の力で支えなければなりませんが、この骨が定位置からずれないように常に支えているのが胸筋なのです。犬は四足歩行で常に腕立て伏せをした状態にありますので、上腕三頭筋同様、この筋肉が極めてよく発達しています。