犬の肥満の病態
犬の肥満とは、体内に脂肪がたまりすぎた状態を言います。
消費カロリーよりも摂取カロリーの方が多い場合、余ったエネルギーはまず肝臓や筋肉の中に「グリコーゲン」という形で貯蔵されます。そしてそれでもなお過剰エネルギーがある場合は、全身に存在しているエネルギー貯蔵庫ともいえる「脂肪細胞」(しぼうさいぼう)の中に、中性脂肪(ちゅうせいしぼう, トリアシルグリセロール)という形にエネルギー転換(てんかん)して蓄えていきます。そしてこの「中性脂肪」こそが、ぜい肉の正体であり肥満の原因なのです。
近年は、ペット用の体脂肪計といったデジタル機器も動物病院に導入されるようになってきましたが、家庭に普及するまでにはまだ時間がかかりそうです。一般的に、犬の肥満判定には「BCS」(Body Condition Score)というアナログ指標が用いられます。
消費カロリーよりも摂取カロリーの方が多い場合、余ったエネルギーはまず肝臓や筋肉の中に「グリコーゲン」という形で貯蔵されます。そしてそれでもなお過剰エネルギーがある場合は、全身に存在しているエネルギー貯蔵庫ともいえる「脂肪細胞」(しぼうさいぼう)の中に、中性脂肪(ちゅうせいしぼう, トリアシルグリセロール)という形にエネルギー転換(てんかん)して蓄えていきます。そしてこの「中性脂肪」こそが、ぜい肉の正体であり肥満の原因なのです。
近年は、ペット用の体脂肪計といったデジタル機器も動物病院に導入されるようになってきましたが、家庭に普及するまでにはまだ時間がかかりそうです。一般的に、犬の肥満判定には「BCS」(Body Condition Score)というアナログ指標が用いられます。
犬の肥満判定用BCS
- BCS1・やせすぎ
理想体重の85%以下・体脂肪率5%以下
肋骨や背骨、腰骨のアウトラインが浮き出しており、横から見ると腹部は著しく巻き上がっている。上から見ると腰がくびれて砂時計のように見える。皮下脂肪はなく、尾の付け根も明瞭に区別できる。 - BCS2・体重不足
理想体重の86~94%・体脂肪率6~14%
わずかな脂肪に覆われており、肋骨や腰の骨を容易に触ることができる。腹部の脂肪もごくわずかで、横から見るとおなかが巻き上がって見える。 - BCS3・理想体重
理想体重の95~106%・体脂肪率15~24%
わずかな皮下脂肪を通して肋骨や骨格の隆起に触れることができる。腰には適度なくびれが見て取れる。 - BCS4・体重過剰
理想体重の107~122%・体脂肪率25~34%
皮下脂肪に覆われており、肋骨に触るのが難しい。骨格の隆起部にはかろうじて触ることができる程度。腰のくびれは不明瞭で、上から見ると背中がやや横に広がって見える。 - BCS5・肥満
理想体重の123~146%・体脂肪率35%以上
厚い皮下脂肪に覆われており、肋骨に触れることができない。尾の付け根が脂肪で不明瞭。横から見るとおなかが垂れ下がり、上から見ると箱や樽の形に見える。
犬の肥満の弊害・悪影響
犬の肥満の弊害としては、主に以下のようなものがあります。近年は身体への悪影響のみならず、行動への悪影響が生じる可能性も示されています。
肥満の主な弊害
- 関節や筋肉への負担 体重が重いので足腰などへの負担が大きくなり、結果として関節や靭帯(じんたい=骨と骨をつなぐケーブル上の線維)、椎間板(背骨の間に挟まっているクッション)を痛めやすくなってしまいます。たとえば体重5kgの犬にとって1kgの体重増加は、体重60kgの人間にとって12kgの増加に相当します。「たかが1kg太っただけじゃないか」と事態を過小評価して犬の体重増加を放置していると、最終的には愛犬の健康を損なってしまうのです。
- 心臓への負担 体重が増えるということは、重い荷物を背負って歩く状態に相当します。結果として筋肉に血液を送り出している心臓への負担が増えてしまいます。
- 呼吸器への負担 首の周りに脂肪がつくと、気管を始めとする気道が圧迫されて呼吸がしにくくなります。人間で言うと、太った人が寝ているときにいびきをかいている状態に相当します。
- 糖尿病を発症する 過剰な食事で体内のインシュリン抵抗性が高まると、エネルギーを効率的に細胞内に入れることができなくなります。結果として糖尿病が発症します。
- 麻酔が効きにくくなる 緊急で手術が必要となったとき、過剰な体重が麻酔の効果を薄めてしまい、それだけ手術を難しくしてしまう可能性があります。
- 運動不足になる 2016年、ウエストオーストラリア大学が行った調査では、犬が太り過ぎである事が飼い主の散歩に対する動機付けを低下させてしまうと報告されています(→詳細)。つまり「犬が太る→疲れるので犬が散歩の要求をあまりしなくなる→飼い主のモチベーションが下がる→散歩量が減る→犬が太る・・・」という悪循環に陥る危険性が高いということです。
- 問題行動が増える(?) イギリスの複数の大学からなる共同チームが行った予備的な調査では、太っている犬においてある特定の問題行動が増えてしまう可能性が示唆されています(→詳細)。具体的には「盗み食いやゴミ漁り」、「フードガーディング・独占欲」、「他の人や犬への攻撃性」、「呼んでも来ない」などです。
犬の肥満の原因
犬の肥満の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
肥満の主な原因
- 運動不足 過剰摂取したエネルギーを運動で消費すれば差し引きゼロになって太ることはありませんが、慢性的な運動不足状態だと、余ったエネルギーが脂肪に変換されてしまいます。また、一度太ってしまうと散歩がしんどくなりますので、さらに運動をしなくなるという悪循環が生まれやすくなります。
- 多すぎる食事 必要以上にえさを与え続けていると、体内でエネルギーが余ってしまいます。かわいいからといってついついおやつを与えすぎると、結果的に愛犬を不健康にしてしまうことになりかねません。
- 不妊手術 メスは卵巣、オスは精巣を取り除くことを不妊手術といいますが、その結果体内のホルモンバランスが変わり、基礎代謝の低下、食欲の増進などを招いて、結果的に肥満につながってしまうことがあります。
- 年齢 人間と同じように、犬も年齢とともに基礎代謝が下がっていきます。その結果、今までと同じ食事量でも、少しずつエネルギーが余り気味になり、いつのまにか太ってしまうということがあります。
- 遺伝 遺伝的に太りやすい犬種というものがいくつか知られています。具体的にはラブラドールレトリバー、ミニチュアダックスフント(特にロングヘアー)、コッカースパニエル、シェットランドシープドッグ、キャバリアキングチャールズスパニエルなどです。最初に挙げたラブラドールレトリバーに関しては、「TNF遺伝子」や「POMC遺伝子」といった肥満遺伝子の存在が確認されています(→詳細)。
- 病気や怪我 ある種の病気や怪我が肥満を誘発することがあります。たとえば関節炎にかかっている犬や下半身不随の犬、何らかの手術を受けて自宅安静中の犬などはどうしても運動量が少なくなりますので、肥満になりやすくなります。また甲状腺機能低下症やクッシング症候群など内分泌系の異常によっても体重が増えてしまうことがあります。
犬の肥満の治療
犬の肥満の治療法としては、主に以下のようなものがあります。なお効果的な減量計画については犬のダイエットにまとめましたので合わせてご確認ください。
肥満の主な治療法
- 運動量を増やす 体内におけるエネルギーを赤字状態にするためには、運動量を増やす必要があります。関節炎や心臓病などの基礎疾患が無いなら、散歩の時間や頻度を増やしたり、定期的にドッグランに連れ出すなどして、たまった脂肪を消費します。だたし、太り気味の犬を短期間でやせさせようと、無理矢理走らせるのはよくありません。関節や心臓への負担が大きくて犬に苦痛を与えてしまいますので、犬の様子を見ながらペース配分するようにします。
- 食事量を減らす 体内におけるエネルギーを赤字状態にするためには、運動量を増やすと同時に食事量を減らす必要もあります。なにかにつけておやつを与える習慣を正したり、同じ量でも含有カロリーの少ない療法食に切り替えたりします。またドカ食い・早食いの癖がある場合は、1回の食事分量を減らして食事の回数を増やしたり、早食いができないような特殊な食器に変えたりするのも効果的です。ドッグフードのパッケージに表示してある給餌方法は一般論で、全ての犬に当てはまるわけではありません。あくまでも自分が飼っている犬の体型を日々モニターしながら食事量を微調整することが重要となります。