運動時の消費カロリー計算式
犬が1日に必要とするエネルギーのことを「1日当たりのエネルギー要求量」(DER)と言います。このエネルギーは「安静時エネルギー要求量」(RER)、「運動時エネルギー要求量」(EER)、「食餌性熱効果」(TEF)、「熱産生適応性」(AT)といった細かい要素から構成されています。このうち、「運動時エネルギー要求量」以外は大きく変動することはありません。従って、犬の消費エネルギーを増やしてダイエットにつなげるには、必然的にこの「運動時エネルギー要求量」を増やす必要があります。これはつまり「犬との散歩の時間を増やす」ということです。
運動時エネルギー要求量
犬の「運動時エネルギー要求量」(Excercise Energy Requirement, EER)、すなわち犬が歩いたり走ったりしたときの消費エネルギーを計算する公式は以下です。
若干ややこしいですが、公式中の「ERR」とは「Energy Requirement for Running」の略で、先述した「EER」とほぼ同じ意味になります。公式中の「d」は「走行距離(km)」、「BW」は「体重(kg)」を意味し、BWの右肩にある小さな数字は累乗を表す指数です。公式に当てはめて出てきた数値は、体重1kg当たりの消費エネルギーになりますので、これに実際の体重を掛けたものが移動に要した総消費エネルギーということになります。
しかしこの公式はマイナスの累乗が入り計算が非常に煩雑なので、答えだけを一覧化した方がはるかに実用的でしょう。下の表中の「kg」は犬の体重を表し、「kcal」は1km移動したときの消費エネルギーを表しています。例えば「体重3kgのチワワが1km歩いたときの消費カロリーは6kcal」といった具合です。より細かな数字に関してはこちらをご覧ください。

しかしこの公式はマイナスの累乗が入り計算が非常に煩雑なので、答えだけを一覧化した方がはるかに実用的でしょう。下の表中の「kg」は犬の体重を表し、「kcal」は1km移動したときの消費エネルギーを表しています。例えば「体重3kgのチワワが1km歩いたときの消費カロリーは6kcal」といった具合です。より細かな数字に関してはこちらをご覧ください。
犬の運動エネルギー早見表(1km)
kg | kcal | kg | kcal | kg | kcal |
3 | 6 | 22 | 24 | 52 | 43 |
4 | 8 | 25 | 26 | 55 | 45 |
5 | 9 | 27 | 28 | 57 | 46 |
6 | 10 | 30 | 30 | 60 | 47 |
7 | 11 | 32 | 31 | 62 | 48 |
8 | 12 | 35 | 34 | 65 | 50 |
9 | 13 | 37 | 34 | 67 | 52 |
10 | 14 | 40 | 36 | 70 | 53 |
12 | 16 | 42 | 37 | 72 | 54 |
15 | 19 | 45 | 39 | 75 | 55 |
17 | 20 | 47 | 40 | 77 | 56 |
20 | 23 | 50 | 42 | 80 | 58 |
犬のダイエットに必要な運動量は?
上で示した運動エネルギー早見表を使えば、ダイエット中の犬に必要な運動量を計算することも可能です。例えば体重10kgの犬の消費エネルギーを50kcal増やそうと思えば、「目標消費エネルギー50kcal÷1km当たりの消費エネルギー14kcal」で、およそ3.6km移動する必要があることがわかります。同様に、体重30kgの犬の消費エネルギーを100kcal増やそうと思えば、「目標消費エネルギー100kcal÷1km当たりの消費エネルギー30kcal」で、およそ3.3km移動する必要があると逆算できます。こうして求めた距離が、ダイエット中に増やすべき散歩の量ということになります。ただし、計算上の消費カロリーと実際の消費カロリーを近づけるためには、「1kmずつ断続的に歩く」という条件が必要となりますので注意してください。
荷物を持っているとき
犬が何らかの荷物を持っているときの消費エネルギーは「1km消費エネルギー(kcal)×荷物の重さ(kg)÷体重(kg)」で計算できます。たとえば、体重10kgの犬が2kgの荷物を持っているときは、「14kcal×2kg÷10kg=2.8kcal」で、およそ2.8kcal消費するという計算です。しかしダイエット中の犬にわざわざウエイトで負荷をかける必要はありませんので、この公式はあまり使わないでしょう。
犬の散歩の量はいきなり増やすのではなく徐々に増やすよう注意します。500m単位で増やせば、犬も十分ついてこれるでしょう。また足腰に故障を抱えている場合は無理をして運動をさせる必要はありません。まずは摂取カロリーを減らすをメインのダイエット法にし、ある程度理想体重に近づいてきたら運動量を増やすという順番で構いません。
実際に犬と散歩してみよう!
1km当たりの消費エネルギーがわかり、犬に課す目標運動量が決まったら、実際に外に出て散歩をさせてあげましょう。その際重要なのは、犬が屋外で移動した距離をしっかりと記録しておくことです。こうした記録を付けておかないと、運動量が多すぎて犬に苦痛を与えたり、運動量が少なすぎてダイエットにつながらないという状況がたやすく起こってしまいます。
また散歩するときは、1km単位で休み休み行うことをお勧めします。例えば体重10kgの犬が1km移動したときの消費エネルギーが14kcalなら、3km移動したときの消費エネルギーはちょうど3倍の42kcalになるはずです。しかし実際は、連続して運動した場合のエネルギー効率が高まるため28kcalしか消費されません。消費エネルギーを高めるなら、3km連続で歩くよりも、1kmずつ小休止を挟みながら歩いたほうが効果的なのです。またこちらの方が消費エネルギーの計算もしやすくなるでしょう。もし連続して長い距離を歩いてしまった場合は、先述した非常にややこしい公式に数値を当てはめて、ちまちまと計算する必要が生じます。累乗機能の付いた計算機と表計算ソフトなどを用いて自力でやってみてください。
犬は散歩中、立ち止まって環境のにおいを嗅ぎまわるのが常ですので、「時間」から移動時間を逆算しようとすると誤差が生まれます。この誤差を防ぐためには、「歩数」を目安にするといった工夫が必要となるでしょう。歩行距離を知る方法はおおむね以下です。

犬は散歩中、立ち止まって環境のにおいを嗅ぎまわるのが常ですので、「時間」から移動時間を逆算しようとすると誤差が生まれます。この誤差を防ぐためには、「歩数」を目安にするといった工夫が必要となるでしょう。歩行距離を知る方法はおおむね以下です。
地図上で距離を計算する
飼い主が犬と歩いたルートを覚えておき、家に帰ってから地図上でそのルートをトラッキングしてみます。そのルートに縮尺を掛けたものが実際に歩いた距離ということになります。またキョリ測のようなサイトは、歩いたルートを地図上でクリックするだけで移動距離を自動計算してくれますので便利です。
犬の万歩計から距離を計算する
近年は犬用の万歩計が発売されています。例えば100メートルというあらかじめ計測した距離を犬に歩かせ、その時の歩数を調べます。この歩数(例:300歩)を10倍したものが1km歩くのに要する歩数です(3,000歩=単位歩数) 。ダイエット中の犬の散歩量を2km増やしたい場合は、単位歩数×2から計算し、犬の万歩計が6,000歩になるまで歩けばよいということになります。
人間の万歩計から距離を計算する
人間の歩数から犬の移動距離を推定することも可能です。まずあらかじめ厳密に計測した100mという距離を万歩計をつけた状態で飼い主が歩いてみます。その時の歩数(例:150歩)を10倍したものが1km歩くのに要する歩数です(1,500歩=単位歩数) 。ダイエット中の犬の散歩量を2km増やしたい場合は、単位歩数×2から計算し、飼い主の万歩計が3,000歩になるまで歩けばよいということになります。
ハイドロセラピー
犬が極端な肥満に陥ってる場合は「ハイドロセラピー」(Hydrotherapy)と言う選択肢も考慮します。これは水の浮力を利用して無理なく体を動かすことができるセラピーのことです。手術後のリハビリテーションや老犬の運動不足、アスリート犬のレベルアップなどに用いられますが、肥満犬に対しても効果的です。犬が水嫌いでなく、財力に余裕がある場合は考えてもよいでしょう。

運動療法の失敗原因
以下は犬の消費エネルギーを増やすときについついやってしまいがちな間違いです。こうした予備知識があると、ダイエットの成功率が高まります。
いきなり運動させる
無酸素運動を行う
ダイエットを目的として運動する際は、「無酸素運動」ではなく「有酸素運動」を行うことが基本です。「無酸素運動」とは、出す力は強いけれども、短時間しか続かないタイプの運動のことで、「有酸素運動」とは、出す力は弱いけれども、長時間続けることができるタイプの運動のことを指します。大まかな説明は以下。
フリスビーやおもちゃを用いてダッシュさせるタイプの運動は、筋肉の出力が大きいため、どちらかと言えば「無酸素運動」に近いといえます。無酸素運動では血中グルコース(血糖)、筋グリコーゲン、肝グリコーゲンといったエネルギー源は大量に消費されるものの、脂肪細胞に蓄積された中性脂肪まではなかなか消費されません。また無酸素運動は、疲労物質として名高い乳酸を産生すると同時に、体温の上昇を招きます。結果として犬が早々にバテてしまい、運動の総量が減ってしまうことも考えられます。ですから、脂肪を消費する有酸素運動を確実に動員し、なおかつ少ない疲労で長時間継続できる「散歩」が、ダイエット中の犬の運動としては適切と言えます。
筋収縮の3様式
- クレアチン=リン酸系クレアチン=リン酸系は、筋肉の中にあるクレアチン=リン酸をエネルギー源として収縮し、酸素を必要としない無酸素運動を生み出す。極めて強い力を出せるが、5~15数秒しか持たない。例えば、100メートル走におけるスタートダッシュなど。
- 解糖系解糖系(かいとうけい)は、血中のグルコース(ブドウ糖)や筋肉の中にあるグリコーゲン(ブドウ糖の塊)をエネルギー源として収縮し、酸素を必要としない無酸素運動を生み出す。強い力を出せるが、持続時間はよくて数十秒。例えば、100メートル走におけるスタート後の疾走など。
- 有酸素系有酸素系は、主として脂肪細胞にある中性脂肪(トリアシルグリセロール)をエネルギー源として収縮し、酸素を必要とする有酸素運動を生み出す。弱い力しか出せないが、極めて長い時間持続する。例えば、マラソンなど。

過剰な運動をさせる
飼い主がせっかちな場合、早く結果を出したいがために、犬に対して過剰な負荷をかけてしまうことがあります。例えば自転車につないで延々と小走りさせるとか、1日3時間歩かせるなどです。しかしこうした過剰な運動は、犬の福祉にとって最良とは言えないでしょう。
まず第一に、太り気味な体で過剰な運動をすると、靭帯や腱といった関節部位を痛めやすくなってしまいます。そして第二に、犬が運動嫌いになってしまう危険性があります。犬にとっての散歩とは、心と体に刺激を与える子供にとっての遠足のようなものです。それを飼い主の都合によって毎日開催されるマラソン大会にしては可愛そうです。
体重が減らないことも問題ですが、体重が短期間で急激に減りすぎることもまた問題です。飼い主は事前に計画したダイエット計画にのっとり、犬の体重が許容範囲内で推移していることを確認しながら行う必要があります。ダイエットの基本で説明した通り、適切な体重の減少は1週間で0.5~1.5%、1ヶ月で2~6%程度です。過剰な運動で一時的に体重が減っても、リバウンド、筋骨格系の障害、運動嫌悪といったリスクが高まってしまいますので、ダイエットにおいては禁忌となります。運動量を増やす際は、500m単位で少しずつ増やすようにしましょう。
まず第一に、太り気味な体で過剰な運動をすると、靭帯や腱といった関節部位を痛めやすくなってしまいます。そして第二に、犬が運動嫌いになってしまう危険性があります。犬にとっての散歩とは、心と体に刺激を与える子供にとっての遠足のようなものです。それを飼い主の都合によって毎日開催されるマラソン大会にしては可愛そうです。
体重が減らないことも問題ですが、体重が短期間で急激に減りすぎることもまた問題です。飼い主は事前に計画したダイエット計画にのっとり、犬の体重が許容範囲内で推移していることを確認しながら行う必要があります。ダイエットの基本で説明した通り、適切な体重の減少は1週間で0.5~1.5%、1ヶ月で2~6%程度です。過剰な運動で一時的に体重が減っても、リバウンド、筋骨格系の障害、運動嫌悪といったリスクが高まってしまいますので、ダイエットにおいては禁忌となります。運動量を増やす際は、500m単位で少しずつ増やすようにしましょう。