犬の骨軟骨異形成の病態と症状
犬の骨軟骨異形成とは、遺伝子の作用により骨が十分に成長しない病気のことです。「小人症」(Dwarfism)とも呼ばれます。
犬の骨は一般的に、生後4ヶ月齢~5ヶ月齢で急激な成長を迎え、6ヶ月で緩やかな成長に変わり、7ヶ月齢で成長の95%を完了します。細長い四肢の骨を成長させているのは、骨の両端にある「骨端軟骨」(or 骨端線)と呼ばれる軟骨の層です。 骨端軟骨は、「静止軟骨」、「増殖軟骨」、「成熟軟骨」、「石灰化軟骨」といった層に分かれており、主に「増殖軟骨」層における細胞分裂が骨を縦方向に伸ばしています。骨端軟骨の活動は、骨の種類、遺伝的体質、体の大きさなど様々な要因によって左右され、最終的には骨を成長させるホルモンの分泌が変化することによって停止します。これが「骨端線の閉鎖」です。 現在、国際畜犬連盟(FCI)には300近い犬種が登録されています。しかしそうした犬種の中には、どういうわけか骨が十分に成長しないことを理想と定め、繁殖する際の基準として設けたものがあります。具体的には「軟骨異形成」と「軟骨形成不全」を持った犬種です。
犬の骨は一般的に、生後4ヶ月齢~5ヶ月齢で急激な成長を迎え、6ヶ月で緩やかな成長に変わり、7ヶ月齢で成長の95%を完了します。細長い四肢の骨を成長させているのは、骨の両端にある「骨端軟骨」(or 骨端線)と呼ばれる軟骨の層です。 骨端軟骨は、「静止軟骨」、「増殖軟骨」、「成熟軟骨」、「石灰化軟骨」といった層に分かれており、主に「増殖軟骨」層における細胞分裂が骨を縦方向に伸ばしています。骨端軟骨の活動は、骨の種類、遺伝的体質、体の大きさなど様々な要因によって左右され、最終的には骨を成長させるホルモンの分泌が変化することによって停止します。これが「骨端線の閉鎖」です。 現在、国際畜犬連盟(FCI)には300近い犬種が登録されています。しかしそうした犬種の中には、どういうわけか骨が十分に成長しないことを理想と定め、繁殖する際の基準として設けたものがあります。具体的には「軟骨異形成」と「軟骨形成不全」を持った犬種です。
骨軟骨異形成の犬種
- 軟骨異形成 軟骨異形成(なんこついけいせい)とは、頭の大きさは正常だけれども手足が極端に短いという成長の仕方を示す病気のことです。具体的には、ダックスフント、バセットハウンド、ウェルシュコーギーペンブローク、ウェルシュコーギーカーディガン、ダンディディンモントテリア、スコティッシュテリア、スカイテリアなどが含まれます。特徴は、太くて短い四肢、背骨の一つ一つが小さい、節々が太いといった点で、好発疾患は、前腕部変形成長、尺骨(前足の骨)の亜脱臼、肩関節の異形成、肘の噛み具合がおかしい、足がO脚気味、股関節形成不全、膝蓋骨脱臼、椎間板ヘルニアなどです。
- 軟骨形成不全 軟骨形成不全(なんこつけいせいふぜん)とは、頭と体の両方が全体的に小さいという成長の仕方を示す病気のことです。「小型の短頭種」と言えば分かりやすいでしょう。具体的には、ブルドッグ、シーズー、ボストンテリア、ラサアプソ、狆、ペキニーズ、パグなどが含まれます。特徴は、短い足、節々が太い、短い頭蓋骨、平坦な鼻筋、短い上顎などで、好発疾患は短頭種気道症候群や前腕部変形成長です。
- 前腕部変形成長
- 前腕部変形成長とは、手首と肘を結ぶ前腕の骨が、変形したまま固定されてしまった状態のことです。前腕の骨は橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)という2本の骨が組み合わさってできています。しかしどちらか一方が短すぎると、他方の骨を引っ張ってしまい、ちょうど弓矢のような形を作ってしまいます。この状態のまま骨の成長が止まり、固定されてしまったのが前腕部変形成長です。骨軟骨異形成を抱えた小型犬種に多いとされます。
犬の骨軟骨異形成の原因
犬の骨軟骨異形成の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
犬の骨軟骨異形成の主な原因
- 遺伝 犬種標準として固定されている軟骨異形成や軟骨形成不全は、常染色体優性遺伝です。ラブラドールレトリバー、サモエド、アラスカンマラミュート、ノルウェジャンエルクハウンド、グレートピレニーズ、スコティッシュディアハウンドといった犬種の中には、たまたま手足が短い個体が生まれることもありますが、こちらは常染色体の劣性遺伝だと考えられています。
- 選択繁殖 骨の成長に異常を持った犬を選択的に繁殖してきたのは人間です。ですから骨軟骨異形成は、人間が作り出した病気と言っても過言ではないでしょう。また近年は、「ティーカッププードル」や「マメシバ」など、従来の大きさよりもかなり小さ目な犬が選択的に繁殖されています。しかしこうした犬は、骨端軟骨の形成異常を遺伝的に抱えている可能性がありますので要注意です。骨格が通常の犬よりも弱いため、容易に脱臼や骨折といった筋骨格系の怪我に見舞われる傾向があります。現在、「ティーカッププードル」や「マメシバ」といった異常に小さな犬は、独立した犬種としては公認されていません。しかし、もしどこかの犬種団体が公認してしまうと、「遺伝的疾患を犬種標準として組み込む」という悲劇が繰り返される危険性があります。
犬の骨軟骨異形成の治療
犬の骨軟骨異形成の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
犬の骨軟骨異形成の主な治療法
- 対症療法 生まれ持った体型を根本的に変える方法は無いため、併発した疾患に対するその場その場の治療が行われます。好発疾患は股関節形成不全、膝蓋骨脱臼、椎間板ヘルニア、脱臼、骨折、短頭種気道症候群などです。
- 人間の意識を変える 犬の健康よりも見た目の可愛さを優先するという人間の側の意識を変えない限り、遺伝的疾患を無くす事は出来ないでしょう。人間が何かを見て「かわいい」と感じる時、そこにはある法則性があると言われています。この考え方は1943年、動物学者コンラート・ローレンツが「ベビースキーマ」(別名=baby schema, 幼児図式, Kindchenschema, キントチェンシェマetc)という表現で提唱したものであり、可愛らしさの源は「広い額、幅の広い顔、平坦な顔、大きな目、浅い彫り、小さな鼻、幅の広い鼻、小さな上顎、小さな下顎、小さな歯、短い手足」といった要素だと考えられています。子犬、小型犬種、短頭種が持つベビースキーマの魅力に抗(あらが)う事は容易ではありません。しかし本当に犬が好きならば、小さな体や短い手足には、筋骨格のケガや病気を発症しやすいという負の側面があることも知っておかなければならないでしょう。