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犬との生活・秋の注意完全ガイド

 秋とは9月、10月、11月のことです。少しずつ気温が下がり始め、暖かい場所や食べ物が恋しくなるのと同時に自律神経系の不調も出やすくなります。犬との生活において、秋に注意しなければならないこととはいったい何なのでしょうか?詳しく見ていきましょう。

ノミ

 犬に食いつくノミの数を季節別で見ると、夏の中旬から秋にかけて多くなるようです。
 アメリカ・ジョージア州で行われた調査では夏の終わりから秋にかけてピークが見られたといいます。所変わってヨーロッパのハンガリーで行われた調査では8月(夏の終わり頃)の感染率が最高で27.1%を記録したといいます。さらにドイツで行われた調査では7月~10月の感染率が最多だったとのこと。 ノミが犬に食いつきやすい季節は夏から秋にかけて  犬のノミ皮膚炎とは、ノミの刺咬によって患部が赤くなったりかゆくなったりする状態を言います。ノミ皮膚炎を引き起こしているアレルゲン(抗原)は唾液に含まれる「Cte f1」という分子成分、および糞です。これらの物質中には、アレルゲンの卵とでも言うべき低分子「ハプテン」のほか、血管を拡張する「ヒスタミン」に似た物質が含まれており、侵入した場所に痛みやかゆみを引き起こします。 犬のノミ皮膚炎  犬に感染することが多い「ネコノミ」の成虫が好む環境は湿度70%、気温21~30℃とされていますので、日本においても夏の中旬から秋(7月~10月)にかけてのノミ対策はしっかり行う必要があります。この時期はとりわけ予防薬の投与を忘れないようにしましょう。 犬のノミ皮膚炎 NEXT:抜け毛

抜け毛

 犬の被毛は夏に少なくなり冬に多くなります。こうした被毛量の増減に合わせ、春と秋に「換毛期」(かんもうき)と呼ばれる抜け毛の季節があり、断熱材として機能しているアンダーコート(下毛)が大量に抜け落ちます。一般的に「ダブルコート」と呼ばれる犬種の場合は秋におけるブラッシング頻度を少し多めにしたほうがよいでしょう。「ダブルコート」とはトップコートとアンダーコートの二層構造になっている犬種のことです。 ダブルコートの長毛種~換毛期における抜け毛の量は目を疑うほど多い  ダブルコートの短毛種および長毛種には具体的に以下のような犬種が含まれます。ブラッシングの頻度は春や秋の換毛期で1日2回を目安にします。ブラッシングの具体的なやり方に関しては以下のページをご参照ください。 犬のブラッシングのやり方
ダブルコートの短毛種
ダブルコートの長毛種
NEXT:アレルギー

アレルギー

 アレルギー反応を引き起こす「アレルゲン」に対する血液中の抗体価は、夏から秋にかけて増える傾向があるようです。
 ノルウェイ国内に暮らす161犬種1,313頭の犬を対象とし、血清に含まれるアレルゲン特異的IgE抗体のレベルが計測されました(Bjelland, 2014)。アトピー性皮膚炎の疑いがあるとして検査に回された血液サンプルを調べた所、84.3%で少なくとも1種類のアレルゲンに対するIgE抗体の上昇が見られたと言います。アレルゲンとして最も多かったのは室内にあるもので、具体的にはアシブトコナダニ(84.0%)、コナヒョウヒダニ(80.2%)、ケナガコナダニ(79.9%)などでした。また屋外のアレルゲンとして最も多かったのはヒメスイバ(40.0%)だったとも。季節性を調べた所、冬から春にかけて採取された血液サンプルよりも夏から秋にかけて採取されたサンプルの方が抗体価の上昇が多く見られたそうです。 主要アレルゲンの季節別増減  上の表はアレルゲン(抗原)としてよく名前が挙がる物質の一覧リストです。非常にたくさんありますが、上記調査で多く報告されたダニ類に関しては部屋(布団・カーテン・カーペット・ぬいぐるみなど)の掃除をこまめに行ったり、HEPAフィルター付きの空気清浄機を回すことである程度は軽減することが可能です。特に夏から秋にかけては意識的に増やすようにしましょう。 犬のアトピー性皮膚炎 NEXT:秋の年中行事

年中行事

 秋に行われる年中行事に付随する食べ物の中には、犬が口にすると危険なものがあります。具体的には以下です。犬が間違って食べたり飲み込んだりしないようしっかりを後始末をしましょう。また近年は日本国内でもハロウィンが習慣化してきました。食べ物ではありませんが、化学薬品の反応によって光る「ケミカルライト」(Glow Stick)中のフタル酸エステルやフタル酸ジブチルによる中毒事例が海外では報告されていますので、こちらも併せて注意しましょう。 犬が異物を飲み込んだ ケミカルライト(グロウスティック)に含まれる化学薬品で犬が中毒に陥ることがあるので注意
秋の年中行事と食べ物
  • 月見(9月上旬)→団子・栗ごはん・豆・さといも
  • 秋彼岸(9月下旬)→ぼたもち・おはぎ
  • ハロウィン(10月31日)→キャンディ
NEXT:毒キノコ

毒キノコ

 秋は野山に野生のキノコがたくさん生える時期です。しかし食用キノコによく似た毒キノコもありますので十分注意しなければなりません。最も危険なのは9~11月で、犬のみならず人間における中毒患者も急増します。日本国内で多いのは以下のような種類です。見た目とともに覚えておきましょう。「テングタケ」を食べてもスーパーマリオのようにパワーアップはしませんのでご注意を。
危険な毒キノコ
日本国内でよく見られる毒キノコの外観一覧写真
  • クサウラベニタケ
  • ツキヨタケ
  • テングタケ
  • ニガクリタケ
  • カキシメジ
NEXT:攻撃性の増加

いがみ合い・攻撃性

 晩夏~初秋にかけて起こりやすいメス犬の発情期に合わせ、犬同士の敵対行動が増えるかもしれません。
 インド・カトワの郊外に暮らしている野犬12頭を対象とし、敵対的交流の季節性が検証されました(Pal, 1998)。その結果、グループ内における敵対的交流はメス犬が発情期に入っている夏(雨季)の終わり(12.33±1.99)およびメス犬が泌乳期に入っている冬(13.33±1.89)で最多になることが明らかになったといいます。また別グループとの間における敵対的交流に関しても、夏(雨季)の終わり(27.75±2.01)と冬の間(32.25±4.43)に最多だったとも。攻撃性は特にメス犬において高い傾向が見られました。 発情サイクルが犬(特にメス)の攻撃性に影響を及ぼす可能性がある  メス犬を屋外で飼育した場合、日照時間の影響から晩夏~初秋に発情することが多くなりますので、野犬と同じように体内におけるホルモンバランスの変化から犬同士のいがみ合いが増えるかもしれません。避妊手術をすれば発情期自体がなくなりますので発情サイクルに関連した心配事もなくなってくれるでしょう。 犬の去勢・避妊手術 NEXT:レプトスピラ症

レプトスピラ症

 レプトスピラ症とはレプトスピラ属(Leptospira)の細菌の中で病原性を持った病原性レプトスピラによって引き起こされる感染症です。発症リスクは降雨量と関係している可能性があります。
 1983年から1998年の期間、アメリカとカナダにある22の動物病院でレプトスピラ症と診断された犬を対象とし、危険因子が何であるかが検証されました(Ward, 2002)。合計340頭のデータを調べたところ、ほとんどの症例は8月から11月(夏の終わりから秋)に集中しており、診断を受ける前3ヶ月間における降雨量が多いと、症例も増えるという関係性が見られたと言います。 レプトスピラはネズミの尿などに潜伏し、汚染水を介して犬や人にも感染する  レプトスピラ菌の最大の感染源はネズミです。一例としては「降雨量が多い→ネズミが繁殖する→菌を保有したネズミが尿から菌を垂れ流す→菌を含んだ尿や尿の溶けた水が環境中に流れ出す→犬がたまたまそうした汚染水を口にしてしまう」といったメカニズムが考えられます。
 日本でも7月ころに梅雨が終わりますので、8月から11月の発症リスクが高まると考えておいたほうが無難でしょう。この感染症は人獣共通で人間にも感染しますので、水のある屋外環境や河川で犬と遊ぶ際はとりわけ注意するようにします。また家の周辺で増えたハツカネズミやドブネズミを駆除する際は、犬が殺鼠剤を間違って食べてしまわないようご注意ください。 犬のレプトスピラ症 NEXT:うっ血性心不全

急性のうっ血性心不全

 うっ血性心不全とは、全身に血液を送り出すはずの心臓が十分に働かず、心臓内で血液が渋滞を起こしてしまった状態のこと。犬におけるうっ血性心不全の発症リスクは、なぜか秋に増えるようです。
 1997年から2009年の間に記録された、犬119頭による急性のうっ血性心不全126ケースを統計的に調べたところ、時間帯では午前9時~正午(55%)、曜日では月曜と火曜(57%)、そして時期では9月~11月(37%)に多くなる傾向が見られたといいます(Steinberg, 2012)。尿中カテコールアミン濃度、血圧の上昇、心拍数の増加と心拍出量の低下などが気温の低下と絡み合って疾患につながっていると推測されていますが、詳しいメカニズムに関してはよくわかっていません。
 散歩中は犬の歩き方チェックを参考にしながら犬の様子を観察し、苦しそうな息をしたり咳き込むような場合は、一度獣医さんに見てもらったほうがよいでしょう。
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