レプトスピラ症の病態と症状
犬のレプトスピラ症とは、レプトスピラ属(Leptospira)の細菌の中で病原性を持った病原性レプトスピラによって引き起こされる感染症です。
レプトスピラは、らせん状の体を特徴とした「スピロヘータ」と呼ばれる細菌の一種で、体の両端がフックのように曲がりくねっています。人にも動物にも同等に感染する人獣共通感染症(じんじゅうきょうつうかんせんしょう)の1つであり、感染症法では四類感染症に指定され、また家畜伝染病予防法では届出が義務化されています。人間における感染例は、ブラジル、ニカラグア、フィリピン、タイといった亜熱帯地方が中心ですが、日本でも河川を通じた集団感染(沖縄八重山地域, 1999)が確認されています。また2017年には大阪で大量感染(アウトブレーク)が発生していますので決して油断はなりません。 以下は、病原性レプトスピラの主な種類と、保菌動物の対応一覧表です。菌の種類と宿主の対応関係は絶対的なものではなく、全て人間にも感染する可能性があります。
レプトスピラは、らせん状の体を特徴とした「スピロヘータ」と呼ばれる細菌の一種で、体の両端がフックのように曲がりくねっています。人にも動物にも同等に感染する人獣共通感染症(じんじゅうきょうつうかんせんしょう)の1つであり、感染症法では四類感染症に指定され、また家畜伝染病予防法では届出が義務化されています。人間における感染例は、ブラジル、ニカラグア、フィリピン、タイといった亜熱帯地方が中心ですが、日本でも河川を通じた集団感染(沖縄八重山地域, 1999)が確認されています。また2017年には大阪で大量感染(アウトブレーク)が発生していますので決して油断はなりません。 以下は、病原性レプトスピラの主な種類と、保菌動物の対応一覧表です。菌の種類と宿主の対応関係は絶対的なものではなく、全て人間にも感染する可能性があります。
レプトスピラの種類
- canicolaイヌ(イヌレプトスピラ)
- icterohaemorrhagiaeラット(黄疸出血性レプトスピラ)
- bataviaeイヌ・ラット・マウス
- bratislavaイヌ・ブタ・ウマ
- grippotyphosaハタネズミ・アラグマ・スカンク
- harjoウシ
- pomonaブタ・スカンク・オポッサム
- tarassoviウシ・ブタ
レプトスピラ症の主症状
- 不顕性型 多くの犬は、感染しているにもかかわらず明らかな症状を示さないまま自然治癒します。また、猫に感染してもほとんど症状は出ませんが、排尿を通じて菌を環境中にばらまいてしまう危険性を有しています。
- 出血型
主としてイヌレプトスピラ菌によって引き起こされる症状です。
主症状は40℃前後の高熱・元気が無くなる・食欲不振・結膜の充血・嘔吐・血便・血尿・鼻血・吐血・尿のにおいが強くなる・黄疸(白目部分、口の粘膜、おなかの皮膚が黄色く変色すること)などです。 - 黄疸型
主として黄疸出血レプトスピラ菌によって引き起こされる症状です。人間で発症した場合は「ワイル病」とも呼ばれます。
主症状は突然の高熱・食事を受け付けない・全身の震え・嘔吐・口内粘膜や歯茎からの出血・結膜の充血・黄疸(白目部分、口の粘膜、おなかの皮膚が黄色く変色することで、約70%の割合)などです。
レプトスピラ症の原因
犬のレプトスピラ症の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
レプトスピラ症の主な原因
- ネズミとの接触 レプトスピラ菌の最大の感染源はネズミです。ネズミには感染しても症状が出ませんので、生きている間中尿からこの菌を垂れ流し続けます。菌を含んだ尿や尿の溶けた水などをなめたり飲んだりすることで犬に感染します。侵入部位は、皮膚にできた傷口や腸管の粘膜です。
- 感染動物との接触 レプトスピラ菌に感染した、ネズミ以外の動物との接触でも感染が広がります。たとえば、菌を保有した犬同士が性器をなめあう、交尾をするなどです。
レプトスピラ症の治療
犬のレプトスピラ症の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
レプトスピラ症の主な治療法
- ワクチン接種 ワクチン接種が実質的な予防・治療法といえます。メリットとデメリットを獣医さんとよく話し合った上、お決めください。
- 投薬 感染してしまったらペニシリンやストレプトマイシンなどの抗生物質で、主に腎臓内に生息している菌を退治します。
- 対症療法 症状の軽減を目的とした各種の治療が施されます。脱水症状があれば輸液(ブドウ糖や乳酸リンゲル液)、肝臓障害があればビタミンB、強肝剤、利尿剤の投与、尿毒症があれば腹膜透析などが施されます。
- 感染源との接触を断つ 細菌は湿った土の中や水の中で180日以上生存することが可能ですので、屋外の電柱や水溜りなどは、常に感染源になりうる危険性を持っています。散歩中、犬がこうした不衛生な場所に近づかないよう、飼い主は注意していなければなりません。また、ネズミが発生している場合はこうした害獣を駆除することも効果的です。
2017年に大阪で発生したアウトブレークは、ワクチンでカバーしていない血清型によるものでした。「ワクチンを打っていれば安心!」というのは錯覚ですので、犬を川や池に入れるときは十分ご注意ください。