犬の水頭症の病態と症状
犬の水頭症とは、脳や脊髄の周囲を循環している脳脊髄液(のうせきずいえき)と呼ばれる液体が、何らかの理由で増え、脳を圧迫してしまった状態のことです。
脳脊髄液とは、脳と脊髄を包んでいる「脳脊髄膜」の中を循環している体液の一種で、脳の水分含量を調整したり、形状を保つといった役割を担っています。犬の中枢神経系を断面にした下の図において、黄色い部分が「脳と脊髄」、茶色い部分が「脳脊髄膜」、青い部分が「脳脊髄液」です。脳の中央にあるひときわ大きな青い空間は「脳室」(のうしつ)、赤いポチは「中脳水道」(ちゅうのうすいどう)と呼ばれます。 脳脊髄液が増える理由には大きく分けて3つあります。一つは「産生過剰」、一つは「循環不全」、そしてもう一つは「吸収障害」です。犬においてもっとも頻度が高いのは、中脳水道(上図の赤ポチ)と呼ばれる部分で液体の流れがブロックされてしまうというパターンで、流れを絶たれた脳脊髄液は、隣接する脳室を内側から押し広げ、脳に対して様々な障害を引き起こすようになります。以下に示すのは、正常な脳室と水頭症を発症した脳室の比較MRI写真です(画像出典→こちら)。行き場を失った脳脊髄液が、まるで水風船を膨らませるように強引に脳室を押し広げている様子がお分かりいただけるでしょう。こうした現象は、頭蓋骨が大きく、「トイ」や「ミニチュア」とつくような犬種で特に多く発症します。 犬の水頭症の主な症状は以下です。診断を下す際は、以下に示した徴候が見られることと、脳室の拡大が見られること、そして徴候を引き起こす他の疾患が存在しないことなどが目安とされます。
脳脊髄液とは、脳と脊髄を包んでいる「脳脊髄膜」の中を循環している体液の一種で、脳の水分含量を調整したり、形状を保つといった役割を担っています。犬の中枢神経系を断面にした下の図において、黄色い部分が「脳と脊髄」、茶色い部分が「脳脊髄膜」、青い部分が「脳脊髄液」です。脳の中央にあるひときわ大きな青い空間は「脳室」(のうしつ)、赤いポチは「中脳水道」(ちゅうのうすいどう)と呼ばれます。 脳脊髄液が増える理由には大きく分けて3つあります。一つは「産生過剰」、一つは「循環不全」、そしてもう一つは「吸収障害」です。犬においてもっとも頻度が高いのは、中脳水道(上図の赤ポチ)と呼ばれる部分で液体の流れがブロックされてしまうというパターンで、流れを絶たれた脳脊髄液は、隣接する脳室を内側から押し広げ、脳に対して様々な障害を引き起こすようになります。以下に示すのは、正常な脳室と水頭症を発症した脳室の比較MRI写真です(画像出典→こちら)。行き場を失った脳脊髄液が、まるで水風船を膨らませるように強引に脳室を押し広げている様子がお分かりいただけるでしょう。こうした現象は、頭蓋骨が大きく、「トイ」や「ミニチュア」とつくような犬種で特に多く発症します。 犬の水頭症の主な症状は以下です。診断を下す際は、以下に示した徴候が見られることと、脳室の拡大が見られること、そして徴候を引き起こす他の疾患が存在しないことなどが目安とされます。
犬の水頭症の主症状
- ドーム状にふくらんだ頭
- 泉門の開放(頭のてっぺんに溝がある)
- 目が外下方を向いている(外腹側斜視)
- 緩慢な動作
- 痴呆症状
- 元気がなくぐったりしている
- 寝てばかりいる
- 異常な攻撃性
- 食欲不振
- 過食
- 視力障害(ものにぶつかる)
- 昏睡
- てんかん
犬の水頭症の原因
犬の水頭症の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
犬の水頭症の主な原因
犬の水頭症の治療
犬の水頭症の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
犬の水頭症の主な治療法
- 対症療法 根治の難しい病気ですので、疾患の原因を取り除くよりも、症状の軽減を目的とした治療が施されます。具体的には脳圧を下げるための副腎皮質ホルモン薬や降圧利尿薬などが投与されます。
- 外科手術 脳と腹腔をバイパス手術する「脳室腹腔シャント」(VPシャント)という手術が行われることがあります。これは、脳内で過剰になった脳脊髄液を、特殊なチューブを通じておなかの中に循環させるというものです。ただし、すでに脳神経が広範囲にわたって損傷を受けている場合は、仮にシャントを設置しても症状の改善につながるとは限りません。またシャントによって脳脊髄液が腹腔内に流れすぎ、逆に脳にダメージを与えるという可能性もあります。シャントを設置すると、一生涯外すことはできませんので、飼い主にはそれなりの覚悟が必要となります。