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犬の硬膜外血腫~症状・原因から治療・予防法まで

 犬の硬膜外血腫(こうまくがいけっしゅ)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い犬の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

犬の硬膜外血腫の病態と症状

 犬の硬膜外血腫とは、脳に強い衝撃が加わることで脳内出血を起こし、硬膜の外側に血がたまった状態のことです。
 犬の脳は、外から「硬膜」(こうまく)、「くも膜」、「軟膜」(なんまく)という3枚の膜で覆われています。頭に何らかの衝撃が加わり、硬膜の外にある毛細血管が破損してしまうと、硬膜と頭蓋骨の間に血がたまり、脳を圧迫するようになります。この状態が「硬膜外血腫」です。似た病名として「硬膜下血腫」というものがありますが、これは頭を激しく揺さぶられるなどして硬膜の外側に張り出している毛細血管(架橋静脈)が破損し、血がたまってしまった状態のことを指します。硬膜下血腫には、頭に外傷を受けてからすぐに発症する「急性硬膜下血腫」と、数週間~数ヶ月かけて徐々に症状を強める「慢性硬膜下血腫」があります。 硬膜下血腫と硬膜外血腫の模式図・模式図  犬の硬膜外血腫の症状としては以下のようなものが挙げられます。
犬の硬膜外血腫の主症状
  • 視覚障害(ものにぶつかる)
  • けいれん
  • 昏睡
  • 片側のまひ
  • 痴呆症状
  • 脳ヘルニア(重症)

犬の硬膜外血腫の原因

 犬の硬膜外血腫の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
犬の硬膜外血腫の主な原因
  • 頭部への外傷  頭に花瓶が落ちてきた、高い場所から落ちて頭を打った、全速力で壁に激突した、走っていて転んだ、交通事故に遭ったなど、頭部への何らかの外傷が原因となり、脳内出血を起こします。脳圧の亢進、ウイルスや細菌への感染などさまざまな合併症を伴いますので、早急な治療が必要です。
     また、外傷から数ヶ月たって発症するものもありますので、犬が頭に怪我を負ってから向こう数ヶ月は、注意深く犬の動作やしぐさを観察しておいたほうが無難でしょう。
 体に加えられた外傷の種類を「鋭性外傷」(えいせいがいしょう)と「鈍性外傷」(どんせいがいしょう)に分類することがあります。前者は鋭利なもので体に傷がつき、穴が開いてしまったわかりやすい外傷のことで、後者は目に見えるはっきりとした損傷を伴わない少しわかりにくい外傷のことです。 頭部における鋭性外傷と鈍性外傷の模式図  頭部に対する「鋭性外傷」の例としては、「走っているときに転倒してとがった石の先端に頭を打ち付け、頭蓋骨が割れてしまった」などがあります。こうした「鋭性」の外傷パターンでは、頭蓋骨のすぐ下にある硬膜の上に血だまりを作りますので、「硬膜外血腫」を発症しやすくなります。
 一方、頭部に対する「鈍性外傷」の例としては、「自動車に跳ね飛ばされて道路にしたたか叩きつけられた」などがあります。こうした「鈍性」の外傷パターンでは、表立った傷は見られないかもしれません。しかし、瞬間的に頭が激しく揺さぶられていますので、硬膜と脳の間にある「架橋静脈」という小さな血管がちぎれ、「硬膜下血腫」を発症しやすくなります。
 「鋭性」にしても「鈍性」にしても、頭部に大きな衝撃やストレスが加わった時は、常に出血の危険性がありますので、何よりも予防が大事です。

犬の硬膜外血腫の治療

 犬の硬膜外血腫の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
犬の硬膜外血腫の主な治療法
  • 薬物療法  頭蓋内圧を下げる目的で、マンニトール、グリセオール、プロセミドなどの薬が投与されます。
  • 外科手術  犬が薬物療法に反応しない場合は、外科手術が施されます。頭蓋骨に穴を空け、余分な液体を取り除いて物理的に頭蓋内圧を下げます。