犬のドライアイの病態と症状
犬のドライアイとは、目の表面が乾いて角膜と結膜に炎症が生じた状態を言います。正式名称は乾性角結膜炎(かんせいかくけつまくえん, KCS)です。
犬の眼球表面は通常、「涙膜」(るいまく)と呼ばれる涙の薄い層でおおわれています。この涙膜の原料となる涙を提供しているのは、上まぶたにある「涙腺」(るいせん, 約50%)と、下まぶたにある「第三眼瞼腺」(だいさんがんけんせん, 残り50%)です。これらの腺がまばたきによって圧力を受けると、ちょうど水を含んだスポンジを押すような感じで涙液が分泌され、隣接している眼球の表面に流れ出るという仕組みになっています。
「ドライアイ」とは、何らかの理由でこの涙膜が途切れてしまった状態のことです。潤滑液を失った眼球は、まばたきするたびにまぶたとの間で摩擦が生じ、表面の角膜や結膜に細かな傷がついてしまいます。そしてこの傷に対する免疫反応として炎症が起こり、各種の症状を引き起こします。
犬のドライアイの主な症状は以下です。
「ドライアイ」とは、何らかの理由でこの涙膜が途切れてしまった状態のことです。潤滑液を失った眼球は、まばたきするたびにまぶたとの間で摩擦が生じ、表面の角膜や結膜に細かな傷がついてしまいます。そしてこの傷に対する免疫反応として炎症が起こり、各種の症状を引き起こします。
犬のドライアイの主な症状は以下です。
ドライアイの主症状
- シルマー涙液試験
- 「シルマー涙液試験」(Schirmer's Tear Test, STT)とは、涙を吸収しやすい細い紙を目に挟み、涙の分泌量を測る簡易テストのことです。通常の犬では、涙を含んで変色する部分が1分間で15mm程度ですが、ドライアイの犬では10mm以下になるとされます。
犬のドライアイの原因
犬のドライアイの原因としては、主に以下のようなものが考えられます。
ドライアイの主な原因
- 涙腺・第三眼瞼腺の異常 涙液を提供している涙腺や第三眼瞼腺に異常があると、涙の産生が減り、ドライアイを引き起こしてしまいます。腺の異常を引き起こす要因は、炎症、神経障害、ジステンパーなどの感染症、サルファ剤を始めとした薬などです。またチェリーアイの治療として第三眼瞼腺を切除した場合や、眼球周辺の腫瘍に対して放射線治療を行った場合なども、涙の量が低下してしまうことがあります。
- 眼球の表面積が大きい 涙液の分泌は正常でも、涙が蒸発してしまうスピードが速すぎるとドライアイになってしまいます。これは、外気に触れている眼球の表面積が大きいギョロ目犬種で多い発症パターンです。具体的にはアメリカンコッカースパニエル、イングリッシュコッカースパニエル、ブルドッグ、ウェストハイランドホワイトテリア、ラサアプソ、シーズー、パグなどが挙げられます。
- 遺伝(?) パグやヨークシャーテリアにおいては、遺伝的な要因が疑われていますが、詳細についてはいまだわかっていません。また、ブルドッグ、ウェストハイランドホワイトテリア、ミニチュアシュナウザーにおいては、シェーグレン様症候群がドライアイを引き起こすことが分かっています。「シェーグレン様症候群」とは、本来なら体を守るはずの免疫系統が、なぜか自分自身の腺組織を異物とみなし、攻撃を仕掛けて破壊してしまう病気のことです。唾液腺が破壊されるとドライマウス(口腔内乾燥)、涙腺や第三眼瞼腺が破壊されるとドライアイを引き起こします。
犬のドライアイの治療
犬のドライアイの治療法としては、主に以下のようなものがあります。
ドライアイの主な治療法
- 涙促進薬 涙の分泌を人工的に増やす薬です。具体的にはシクロスポリン軟膏、タクロリムス軟膏などがあります。
- 点眼薬 目薬を差すことによって角膜と結膜を乾燥から防ぎます。しかし点眼薬は目が乾くたびに行う必要があり、また一時的な効果しか期待できません。
- 手術 症状が進行したり、軟膏が効かないような場合は、耳の下にある耳下腺と呼ばれる分泌器官を結膜に移植するという手術があります。ただし唾液と涙液は成分が違うため、違和感を感じて嫌がる個体もいます。また手術後も軟膏や点眼薬による補助的な治療が必要です。