犬のブドウ膜炎の病態と症状
犬のブドウ膜炎とは、眼球のブドウ膜に炎症が生じた状態を言います。ブドウ膜とは虹彩(こうさい)、毛様体(もうようたい)、脈絡膜(みゃくらくまく)など血管に富んだ膜の総称です。虹彩は眼球に入る光の量を調整する絞りで、毛様体はその絞りを調整する筋肉、そして脈絡膜は眼球や網膜に酸素や栄養を与える補給部隊として機能しています。
脈絡膜に発生した炎症を「脈絡膜炎」、毛様体に発生した炎症を「毛様体炎」、そして虹彩に発生した炎症を「虹彩炎」と呼び分けることもありますが、その多くは互いに随伴して発生するため、多くの場合は一括して「ブドウ膜炎」と呼ばれます。
犬のブドウ膜炎の主な症状は以下です。
犬のブドウ膜炎の主な症状は以下です。
ブドウ膜炎の主症状
- 角膜の裏側がにごる
- 前房出血
- 虹彩の変形
- 瞳孔が縮む
- 涙が増える
- 目やにが増える
- 目をこすろうとする
- なぜブドウ?
- 虹彩、毛様体、脈絡膜から成るブドウ膜は、ちょうどブドウの皮のように眼球を覆っており、また血管やメラニン色素を作り出すメラニン細胞が豊富に存在しているため、色もどことなくブドウに似ています。こうしたことからブドウ膜と呼ばれるようになりました。ちなみに「眼球血管膜」という、ややお堅い表現もあります。
犬のブドウ膜炎の原因
犬のブドウ膜炎の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
ブドウ膜炎の主な原因
- 感染症 ウイルス、細菌、真菌、原虫、寄生虫などによる感染症がブドウ膜炎を引き起こすことがあります。ウイルスではジステンパー、ケンネルコフ、イヌヘルペス、細菌ではレプトスピラ症、ブルセラ症、真菌ではクリプトコッカス、ブラストミセス、原虫ではトキソプラズマ、リケッチア、リーシュマニア、寄生虫ではハエウジ症や回虫の幼虫などです。
- ワクチン接種 ケンネルコフ(アデノウイルス2型)に対するワクチンを接種した後でブドウ膜炎を発症することがあります。
- 基礎疾患 あらかじめ保有している何らかの病気がブドウ膜炎を引き起こすことがあります。具体的には腫瘍、角膜炎、結膜炎、水晶体の病変(脱臼・ぐらつき)、歯周病などです。
- 遺伝 ブドウ膜炎と皮膚の脱色を主症状とする「ブドウ膜皮膚症候群」(Canine Uveodermatologic Syndrome)に関しては、シベリアンハスキー、サモエド、秋田犬、シェットランドシープドッグに多く発症するといわれています。またブドウ膜炎と水晶体への色素沈着を主症状とする「色素性ブドウ膜炎」(Pigmentary Uveitis)に関しては、ゴールデンレトリバーにおいて多く発症します。余りにも種特異性が強いことから「ゴールデンレトリバーブドウ膜炎」と呼ばれることもあります。