犬のアミロイドーシスの病態と症状
犬のアミロイドーシスとは、「アミロイド」と呼ばれる細い形状をしたタンパク質の一種が細胞と細胞の間に沈着し、組織や器官の機能を邪魔してしまう状態のことです。
アミロイドにはいくつかの種類がありますが、アミロイドーシスの原因となるのは「血清アミロイドAタンパク」(SAA)というタイプです。これは、炎症の結果として生じた「サイトカイン」と呼ばれる化学物質が肝臓に作用することで産生されるもので、感染症、炎症性疾患、ガンなどをきっかけとして血液中に放出されます。通常であれば生体に害を与えることはありませんが、放出されたアミロイドの量があまりにも多かったり、遺伝的にアミロイドが沈着しやすい体質だったりすると、細胞間にアミロイドが沈着し、周辺組織を機能不全に陥れてしまいます。この状態が「アミロイドーシス」です。
アミロイドーシスの主な症状には以下のようなものがあります。アミロイドは体中のどこにでも沈着しますが、臨床症状を引き起こすのは主に肝臓と腎臓に沈着した時です。前者が「肝アミロイドーシス」、後者が「腎アミロイドーシス」で、犬では腎臓の糸球体への沈着で生じる「腎アミロイドーシス」が多く見られます。

犬のアミロイドーシスの主症状
犬のアミロイドーシスの原因
犬のアミロイドーシスの原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
犬のアミロイドーシスの主な原因
- 遺伝 アミロイドーシスを発症しやすい犬種がいくつか確認されています。具体的には、シャーペイ、イングリッシュフォックスハウンド、ビーグル、コリー、ポインターなどです。好発年齢は9歳頃とされています。
- 慢性炎症 全身における慢性炎症がサイトカインを増加させ、結果として肝臓からのアミロイド放出を促進することがあります。炎症を引き起こす原因は、細菌、真菌、寄生虫、免疫介在性疾患、腫瘍など様々です。
犬のアミロイドーシスの治療
犬のアミロイドーシスの治療法としては、主に以下のようなものがあります。
犬のアミロイドーシスの主な治療法
- 対症療法 アミロイドの沈着によって引き起こされた様々な二次疾患に応じた治療が施されます。具体的には慢性腎不全、ネフローゼ症候群、代謝性アシドーシスなどです。
- 投薬治療 「ジメチルスルフォキサイト」(DMSO)は、通常であれば水に溶けないアミロイドを水溶性に変質させ、組織の炎症を減らすと言われています。また「コルヒチン」はアミロイドの分泌と沈着を遅らせることができると言われています。しかしいずれの薬剤にも、沈着してしまったアミロイドを取り除く効果まではありません。
- 安静 アミロイドーシスで慢性腎不全を発症した犬の予後は、一般的にそれほどよくありません。少しでも長生きしてもらうため、生活環境の中からストレスを取り除き、腎臓への負担を減らすことに務めます。