犬の腎結石の病態と症状
犬の腎結石とは、腎臓内の腎盂と呼ばれる部位に結石が発生した状態を言います。
腎盂(じんう)とは、腎臓と尿管の接続部で、漏斗状に広がっている部分のことで、この腎盂に発生した結石のことを特に腎結石と称します。結石が小さい場合はほとんど症状を示さないこともありますが、結石が大きくなるとときに急性腎不全のような症状を表すこともあります。
1981年7月から1993年12月までの期間、カリフォルニア大学獣医学校付属の尿石解析ラボに送られてきた317(オス214+メス103)の尿石サンプルを対象として行われた統計調査によると、結石の成分として多かったのはシュウ酸カルシウム(24%)、尿酸アンモニウム(11%)、アパタイト(リン酸塩, 6%)だったといいます。その他、ブルシャイト、尿酸ナトリウム、シリカ、キサンチンなども確認されましたが、割合はどれも1%程度だったとのこと。また全体の25%までもが複数の成分からなる複合型結石だったそうです(:G.V. Ling, 2008)。
犬の腎結石の症状としては以下のようなものが挙げられます。尿路結石症のうちで占める割合は2.9%(317/10,918)とかなり小さめです。
腎盂(じんう)とは、腎臓と尿管の接続部で、漏斗状に広がっている部分のことで、この腎盂に発生した結石のことを特に腎結石と称します。結石が小さい場合はほとんど症状を示さないこともありますが、結石が大きくなるとときに急性腎不全のような症状を表すこともあります。
1981年7月から1993年12月までの期間、カリフォルニア大学獣医学校付属の尿石解析ラボに送られてきた317(オス214+メス103)の尿石サンプルを対象として行われた統計調査によると、結石の成分として多かったのはシュウ酸カルシウム(24%)、尿酸アンモニウム(11%)、アパタイト(リン酸塩, 6%)だったといいます。その他、ブルシャイト、尿酸ナトリウム、シリカ、キサンチンなども確認されましたが、割合はどれも1%程度だったとのこと。また全体の25%までもが複数の成分からなる複合型結石だったそうです(:G.V. Ling, 2008)。
犬の腎結石の症状としては以下のようなものが挙げられます。尿路結石症のうちで占める割合は2.9%(317/10,918)とかなり小さめです。
犬の腎結石の主症状
- (結石が小さい場合)無症状
- (結石が大きい場合)急性腎不全や痛み
- (尿路感染症の併発で)尿のにごり
犬の腎結石の原因
犬の腎結石の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
犬の腎結石の主な原因
- 尿路感染症腎臓で生成された尿が通る道を尿路といい、ここに細菌が感染することを尿路感染症といいます。尿路感染症にかかっていると、結石の核となる臓器の表皮などが増えやすくなり、また尿がアルカリ性に傾くことから、結石ができやすくなると考えられています。具体的には腎盂腎炎などです。
- 尿の酸塩基平衡食事の偏りにより、尿がアルカリ性や酸性になると結石を生じやすくなります。アルカリ尿ではストルバイト、リン酸カルシウム結石、酸性尿ではシュウ酸カルシウム、尿酸塩、シスチン、キサンチン結石のリスクが高まります。
- 遺伝カリフォルニア大学の獣医教育病院を受診したすべての犬を比較対象として統計的に計算したところ、オスに比べてメスの腎結石発症リスクが1.9倍であることが判明したといいます。また腎結石を発症しやすい犬種がいくつか確認されており、何らかの遺伝的な要因が関わっているのではないかと推測されます(:G.V. Ling, 2008)。具体的にはミニチュアシュナウザー、ラサアプソ、シーズー、ヨークシャーテリアです。さらにメス犬だけに限定するとビションフリーゼ、パグ、ペキニーズ、オスだけに限定するとダルメシアン、バセットハウンド、イングリッシュブルドッグ、マスティフにおけるハイリスクが確認されました。
犬の腎結石の治療
2016年、ACVIM(米国獣医内科学会)が最新の医学的エビデンスに基づき、犬の尿路結石症治療に関するガイドラインを公開しました。以下はこのガイドラインに記されている腎結石に関連した部分の抜粋です。なお腎結石の検査法に関しては「尿石の検査・診断」にまとめてあります。
ACVIMガイドライン(英語)
ACVIMガイドライン(日本語)
症状がない場合
腎結石による症状が見られないうちは基本的に静観し、何らかの問題を引き起こした時だけ治療を行うというのがスタンダードです。
「何らかの問題」には尿の途断、反復的な感染症、痛み、巨大化による腎実質への圧迫などが含まれます。結石の医学的溶解は非閉塞性の時や、尿道ステント等のバイパスにより閉塞が軽減する可能性がある時に考慮します。例えば犬の上部尿路結石の20~30%を占めるとされるストルバイト結石は溶解治療によく反応するため、条件を満たした場合は食事療法が優先的に行われます。結石がシスチンやプリンなどストルバイト以外の場合はケースバイケースで対処します。成分別の治療法に関しては以下のページをご参照ください。
「何らかの問題」には尿の途断、反復的な感染症、痛み、巨大化による腎実質への圧迫などが含まれます。結石の医学的溶解は非閉塞性の時や、尿道ステント等のバイパスにより閉塞が軽減する可能性がある時に考慮します。例えば犬の上部尿路結石の20~30%を占めるとされるストルバイト結石は溶解治療によく反応するため、条件を満たした場合は食事療法が優先的に行われます。結石がシスチンやプリンなどストルバイト以外の場合はケースバイケースで対処します。成分別の治療法に関しては以下のページをご参照ください。
症状がある場合
腎結石が何らかの症状を引き起こした場合は、糸球体濾過量に対する悪影響を最小限に留めるため侵襲が低い方法で除去するようにします。例えば医学的溶解、内視鏡下腎砕石術(巨大化し過ぎた場合)、体外衝撃波砕石術などです。
人医学の分野で最も侵襲性が低く効果的だと考えられている内視鏡下腎砕石術は犬に対しても有効です。体外衝撃波砕石術は腎機能に対する影響が最小レベルですが、結石の直径が1.5cm以下の場合に限定されており、それより大きいときはステントの使用が考慮されます。
ストルバイト、シュウ酸カルシウム、尿酸、シスチンなど結石の成分に応じた治療法に関しては「犬の尿路結石症」というページ内にまとめてあります。