犬の尿管結石の病態と症状
犬の尿管結石とは、腎臓と膀胱を結ぶパイプである尿管内に結石が発生した状態を言います。
腎結石の場合、長ければ数年に渡って無症状のまま共存できますが、尿管結石の場合は尿の通り道をブロックしてしまう関係上、ある日突然発症し、緊急の治療を要することも少なくありません。結石が尿管筋における局所的な炎症、浮腫、スパズムを引き起こし、閉塞をさらに悪化させるという悪循環がその一因です。
腎結石と尿管結石を合わせた割合は、犬における尿路結石症のうちせいぜい4%とかなり小さめです(:Ling, 2008)。また1990年から2003年までの期間、ペンシルベニア州にある獣医教育病院において閉塞性の尿管結石を外科的に除去した犬16頭を対象として行った調査では、ストルバイトが6症例、シュウ酸カルシウムが5症例で見つかったといいます(:Snyder, 2004)。
犬の尿管結石の症状としては以下のようなものが挙げられます。
腎結石と尿管結石を合わせた割合は、犬における尿路結石症のうちせいぜい4%とかなり小さめです(:Ling, 2008)。また1990年から2003年までの期間、ペンシルベニア州にある獣医教育病院において閉塞性の尿管結石を外科的に除去した犬16頭を対象として行った調査では、ストルバイトが6症例、シュウ酸カルシウムが5症例で見つかったといいます(:Snyder, 2004)。
犬の尿管結石の症状としては以下のようなものが挙げられます。
犬の尿管結石の主症状
尿管結石が片側だけで生じている場合は、逆側の腎臓が正常に機能している限り高窒素血症にまで至ることはなく、せいぜい痛みが生じる程度です。しかし残された腎臓による代償が長期化すると、閉塞を起こした側の腎臓が萎縮し、残された側の腎臓が肥大するという現象が起こります。左右の腎臓で著しくサイズが異なることから、この状態は「Big Kidney Little Kidney」の頭文字を取って「BKLK症候群」(大小腎症候群)と呼ばれます(:Shipov, 2013)。
犬の尿管結石の原因
犬の尿管が閉塞する原因には、尿管の壁にできたポリープとか、尿管壁の外側にできた腫瘍による圧迫などがあります。しかしそれよりも多いのは、別の場所から流れてきた異物が尿管内で目詰まりを起こしてしまうというパターンです。そして異物として多いのが、直結臓器である腎臓から流れてくる小さな結石です(:Shipov, 2013)。
尿管の管径と結石の直径がぴったりだと、管を完全にブロックしてしまいますので、水尿管症や水腎症といったより重篤な症状を引き起こします。
結石が尿管内で形成された原発性であれ、腎臓内で形成された二次性であれ、原因として関わっているのは感染症(特定の細菌)や尿の酸塩基平衡です。詳しくは「腎結石の原因」をご参照ください。
尿管の管径と結石の直径がぴったりだと、管を完全にブロックしてしまいますので、水尿管症や水腎症といったより重篤な症状を引き起こします。
結石が尿管内で形成された原発性であれ、腎臓内で形成された二次性であれ、原因として関わっているのは感染症(特定の細菌)や尿の酸塩基平衡です。詳しくは「腎結石の原因」をご参照ください。
犬の尿管結石の治療
2016年、ACVIM(米国獣医内科学会)が最新の医学的エビデンスに基づき、犬の尿路結石症治療に関するガイドラインを公開しました。以下はこのガイドラインに記されている尿管結石に関連した部分の抜粋です。なお尿管結石の検査法に関しては「尿石の検査・診断」にまとめてあります。
ACVIMガイドライン(英語)
ACVIMガイドライン(日本語)
腎機能が正常の場合
尿管結石による閉塞が起こっているものの、腎盂の拡張が3~5mm以下で腎機能が保たれている場合は、早急な除圧よりもモニタリングが優先されます。
腎機能が低下している場合
尿管結石が腎機能を低下させている場合は、閉塞が部分的であれ完全であれ緊急事態として扱い、皮下尿管バイパス、尿管ステント、従来的な外科手術などにより速やかに除圧します。健康な犬を人為的に尿管閉塞状態にした実験では、閉塞によって腎機能が急速に低下し、低下した機能は永続化したとされています。具体的には実験7日後で糸球体濾過量が永続的に35%低下、14日後で54%低下、40日後で100%低下というものです。
犬の閉塞性尿管結石に対する尿管ステント治療は、他の治療法に比べて短期的にも長期的にも疾病率と死亡率を低下させる(2%未満)との報告があります。また再閉塞率を9%に抑え、高窒素血症の重症度を下げるとも。体外衝撃波結石破砕術の死亡率は2%未満とされていますが、再治療を要する割合が15~50%との報告があります。 ステントを挿入して腎機能を改善した後は、詳細な尿検査(結晶の有無やpH)、尿培養、 エックス線検査の所見により、尿管結石の成分を正確に把握した上で治療方針を決めます。
例えば犬の尿管結石がストルバイトと考えられる場合はステントを用いた後で溶解します。シュウ酸カルシウムの場合は長期的ならステント留置、もしくはステント留置と体外衝撃波結石破砕術のコンビネーションを採用します。シスチンや尿酸塩の場合は尿管ステントと医薬品・食事療法を組み合わせます。
犬においては尿管閉塞の59%と膿腎症の85%で、診断時に尿路感染症が確認されることから、広域スペクトラムの抗菌薬を投与して細菌や炎症副産物の排出を助けます。
閉塞性の尿管結石症に対して投薬治療を行う場合は、診断から24~72時間利尿薬やマンニトールの定量点滴投与、αアドレナリン阻害剤や三環系抗うつ剤などを投与します。しかしエビデンスレベルが低く、奏効率もあまり高くありません。
犬の閉塞性尿管結石に対する尿管ステント治療は、他の治療法に比べて短期的にも長期的にも疾病率と死亡率を低下させる(2%未満)との報告があります。また再閉塞率を9%に抑え、高窒素血症の重症度を下げるとも。体外衝撃波結石破砕術の死亡率は2%未満とされていますが、再治療を要する割合が15~50%との報告があります。 ステントを挿入して腎機能を改善した後は、詳細な尿検査(結晶の有無やpH)、尿培養、 エックス線検査の所見により、尿管結石の成分を正確に把握した上で治療方針を決めます。
例えば犬の尿管結石がストルバイトと考えられる場合はステントを用いた後で溶解します。シュウ酸カルシウムの場合は長期的ならステント留置、もしくはステント留置と体外衝撃波結石破砕術のコンビネーションを採用します。シスチンや尿酸塩の場合は尿管ステントと医薬品・食事療法を組み合わせます。
犬においては尿管閉塞の59%と膿腎症の85%で、診断時に尿路感染症が確認されることから、広域スペクトラムの抗菌薬を投与して細菌や炎症副産物の排出を助けます。
閉塞性の尿管結石症に対して投薬治療を行う場合は、診断から24~72時間利尿薬やマンニトールの定量点滴投与、αアドレナリン阻害剤や三環系抗うつ剤などを投与します。しかしエビデンスレベルが低く、奏効率もあまり高くありません。
ストルバイト、シュウ酸カルシウム、尿酸、シスチンなど結石の成分に応じた治療法に関しては「犬の尿路結石症」というページ内にまとめてあります。