解説「メス犬が胎盤を食べる」

野生環境において、血の付いた胎盤をそのまま放置しておくと、鼻のよく効く外敵に気づかれて襲われてしまうかもしれません。ですから母犬は、においの強い胎盤を食べてしまうことで、こうした外敵が近づいてこないようにしているのです。また母犬には「子犬の排泄物(はいせつぶつ)を食べる」という習性がありますが、これも同じ理由です。もちろん巣の中を衛生的(えいせいてき)に保つという意味もありますが、それ以前に、外敵が排泄物の匂いを嗅ぎつけないようにしていると考えられます。
- 胎盤
- 胎盤(たいばん)とは、妊娠したメス犬の子宮内において母体と胎児を結びつける器官のことです。主な機能としては、胎児への栄養補給、ガス交換、免疫力の移行などがあります。
近年「プラセンタ」(placenta)という言葉をよく耳にしますが、これは胎盤のことです。ブタやウマ等の胎盤から抽出された成分が、「しわやたるみの改善」、「ホルモンバランスを整える」などの効能を有していることから、医薬品や化粧品などによく用いられるようになってきました。
こうした事実から考えると、母犬が胎盤を食べることの裏には、「栄養補給」や「体内バランスの調整」といった意味があるのかもしれません。
メス犬が胎盤を食べる・まとめ
- 外敵が血の臭いを嗅ぎつけないようにするため
- 産後の栄養補給(?)
- 子犬の糞便を食べてしまうのも同じ理由
動画「メス犬が胎盤を食べる」
以下でご紹介するのは、生まれたばかりの子犬にくっついている胎盤を自ら食べてしまう母犬の動画です。残酷さはありませんが、やや食欲を減退させるシーンを含んでいるため、閲覧注意でお願いいたします。
なお、母犬がとる母性行動に関しては、犬の研究家であるレイモンド・コピンジャー氏の行った実験が有名です。彼と学生は、離乳前の子犬が母犬から離れたときに発する高い声をテープレコーダーに録音しました。そしてそのテープを母犬に聞かせたところ、なんとテープレコーダーを子犬のようにくわえて巣に持ち帰ったといいます。このように、ある一定の行動を引き出すきっかけのことを「解発因」(かいはついん, リリーサー)といい、引き出された行動のことを「固定動作パターン」といいます。胎盤を食べるという行動も、遺伝子に刻まれた固定動作パターンの一種なのでしょう。
