詳細
調査を行ったのは王立獣医大学。「VetCompass」と呼ばれる疫学プログラムを通じて、第一診療におけるパグの医療データを統計的に集計したところ、以下のような事実が明らかになったといいます。元となったのは2013年にイギリス中部から南東部にある102の動物病院を受診した合計1,009頭の医療データです。
Dan G. O’Neill, Elisabeth C. Darwent, et al. 2016
パグの部位別有病率
- 頭・首=43.51%
- 腹部=19.33%
- 背中・胸=12.49%
- 四肢=12.09%
- 肛門・会陰部=7.53%
- 骨盤=1.49%
- 脊柱=0.99%
- 尾=0.10%
パグの疾患別有病率
- 肥満=13.18%
- 角膜の病変=8.72%
- 外耳炎=7.53%
- 何らかの耳の疾患=7.43%
- 肛門嚢病変=6.54%
- 歯周病=6.14%
- 爪の伸びすぎ=5.65%
- 短頭種気道症候群=5.15%
- 嘔吐=4.96%
- 下痢=3.77%
Dan G. O’Neill, Elisabeth C. Darwent, et al. 2016
解説
犬全体における肥満率が6%であるとに対し、パグの肥満率は13%と高率でした。こうした高い肥満率の背景には、うるうるした瞳で見つめられた飼い主がついついおやつを与えてしまうということのほか、ドッグショーの審査員が肥満体のパグを「理想的」としてもてはやす悪習があるように思われます。2015年、イギリス・リバプール大学の獣医学チームが、世界最大の犬の品評会「クラフツ・ドッグショー」において、2001年から2013年までの間に上位入賞を果たした28犬種を写真で評価したところ、全体の26%もの犬が肥満傾向にあったと言います。また、特に高い割合を示していたのはパグ(80%)、バセットハウンド(68%)、ラブラドールレトリバー(63%)だったとも(→出典)。
角膜の病変は短頭種の宿命であるようです。2015年、イギリスのロンドン大学が中心となった調査チームは、国内にある小動物専門病院を訪れた700頭の犬の中から、角膜潰瘍にかかっている犬、もしくは過去にかかったことがある犬を選別し、そこに共通項があるかどうかを精査しました。その結果、以下のような危険因子が浮き彫りになったといいます(→出典)。
角膜潰瘍の危険因子
- オス犬が71%
- ほとんどが小型犬(11.4±1.1kg)
- 最も多い犬種はパグ
- 鼻にシワがあると5倍かかりやすい
- 眼裂が10%広がり、白目が見えていると3倍かかりやすい
- 「マズルの長さ/頭の縦の長さ<0.5」(=鼻ペチャ)だと20倍かかりやすい