犬の中耳炎の病態と症状
犬の中耳炎とは、耳の奥にある中耳(ちゅうじ)と呼ばれる部位に炎症が発生した状態のことです。
中耳には外からの音を受け取って神経に伝える「鼓膜」、その後ろにある「鼓室」(こしつ)、鼓室の中で音を増幅する「耳小骨」(じしょうこつ)、そして鼓室と咽頭とを結んで気圧調整を行う「耳管」(じかん)が含まれます。
中耳は顔の筋肉をつかさどる「顔面神経」や、眼球領域の調整をつかさどる「自律神経」に隣接しているため、ここに炎症が発生するとこうした周辺神経にも影響が波及し、以下に示すような症状を見せることがあります。
中耳は顔の筋肉をつかさどる「顔面神経」や、眼球領域の調整をつかさどる「自律神経」に隣接しているため、ここに炎症が発生するとこうした周辺神経にも影響が波及し、以下に示すような症状を見せることがあります。
中耳炎の主症状
犬の中耳炎の原因
犬の中耳炎の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
中耳炎の主な原因
- 外耳炎 すでに外耳炎を患っている場合、炎症が鼓膜を破ってその後ろにある中耳領域に達してしまうことがあります。
- 耳管からの感染 中耳の鼓室は、耳管によって外界と通じています。この構造は、外気圧と鼓室内の気圧を均一化するときに役立っていますが、同時に外の細菌やウイルスの進入路にもなってしまいます。ですから口の中で繁殖した何らかの病原体が、まるで空気ダクトをよじ登るように耳管を伝って鼓室内に侵入し、炎症を引き起こすということがありうるわけです。
- 中耳内の病変 外耳や耳管といったルートを通してではなく、中耳そのものの中に腫瘍やポリープが発生し、炎症を引き起こすことがあります。
- 短頭種(?) 2016年に行われた調査により、マズルが短い短頭種では耳管腔内への滲出物が36%という高頻度で見られることが確認されました。またこの傾向は、軟口蓋が厚い個体ほど強かったとも。こうした事実から、「短頭種」という頭蓋の構造が何らかの形で中耳炎の発症に関わっている可能性が考えられます。詳しくはこちらの記事をご参照ください。
犬の中耳炎の治療
犬の中耳炎の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
中耳炎の主な治療法
- 外耳炎の治療 外耳炎が悪化して中耳炎が発生している場合は、まず外耳炎に対する治療が施されます。ただし、鼓膜に穴が空いている場合は、薬液による治療が見送られます。
- 殺菌 外耳道内に生息しているブドウ球菌を始めとする細菌や真菌が炎症の原因になっている場合は、抗菌薬や抗真菌薬が投与されます。原因菌を正確に突き止めることが重要です。また耳管から侵入してきたウイルスが原因の場合は、抗生物質が3~6週間投与されることもあります。
- 中耳の洗浄 症状がひどい場合は、鼓膜を人為的に切って中耳を露出し、そこを温めた滅菌生理食塩水で洗浄することがあります。ただし体に対する負担が大きいため、かなり重症で慢性化しているときに限ります。