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犬のキー・ガスケル症候群~症状・原因から治療・予防法まで

 犬のキー・ガスケル症候群について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い犬の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

犬のキー・ガスケル症候群の病態と症状

 犬のキー・ガスケル症候群(Key-Gaskell syndrome)とは、原因不明の自律神経失調症のことです。
 自律神経(じりつしんけい)とは「交感神経」と「副交感神経」が対になって機能している神経系で、「発汗」、「立毛」、「消化器の運動」といった、意志ではコントロールできない部分の体調管理を担っています。この病気は、1982年にイギリスで初めて報告された後、ヨーロッパ、アメリカなどでも散見されるようになりました。症状としては以下のようなものが挙げられます。
犬のキー・ガスケル症候群の主症状
  • 元気がない
  • 食欲不振
  • 便秘
  • 食後の嘔吐
  • 涙の分泌減少とドライアイ
  • 唾液の分泌減少と口臭の悪化
  • 散瞳(瞳孔が開きっぱなし)
  • 瞬膜の露出
  • 腹部の膨張
  • 食道アカラシア
  • 徐脈

犬のキー・ガスケル症候群の原因

 犬のキー・ガスケル症候群の原因としては、主に以下のようなものが考えられますが、不明な部分が多いため、今後の研究が待たれます。従来は猫にだけ発症すると考えられてきましたが、近年は年齢の若い子犬やラブラドールレトリバーでも症例が報告されています。なお2002年に行われた、65頭の犬を対象とした研究によると、都会よりも田舎で飼育されている犬において発症確率が高いとなっています。また性別と発症率に因果関係はないとも。
犬のキー・ガスケル症候群の主な原因
  • 化学物質への中毒(?)
  • ボツリヌス菌の産生毒(?)

犬のキー・ガスケル症候群の治療

 犬のキー・ガスケル症候群の治療法としては、主に以下のようなものがあります。予後は非常に悪く、仮に回復したとしても自律神経系に何らかの後遺症が残るとされます。
犬のキー・ガスケル症候群の主な治療法
  • 対症療法  原因が不明なため、必然的に今ある症状に対する場当たり的な治療がメインとなります。たとえば涙の分泌が減少してドライアイになっている場合は点眼、食道アカラシアで食後に嘔吐してしまう場合は、食器をやや高い場所においてエサを食べさせる、食欲不振で脱水気味の場合は輸液や強制給餌などです。
  • 投薬治療  自律神経系に働きかける薬が投与されることがあります。しかし効果に関してはあまり期待できません。