トップ犬の健康と病気犬の感覚器の病気犬の皮膚の病気毛包虫症

犬の毛包虫症~症状・原因から治療・予防法まで

 犬の毛包虫症(もうほうちゅうしょう)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い犬の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

犬の毛包虫症の病態と症状

 犬の毛包虫症とは、毛包虫(ニキビダニ)が犬の毛包や皮脂腺に寄生して炎症を引き起こした状態のことです。「アカルス」、「ニキビダニ症」とも呼ばれます。
 犬の毛包虫症を引き起こすのは、ニキビダニ属(demodex)の一種である「D. canis」です。卵はレモン型で、そこから6本脚の幼虫が孵化し、2回脱皮した後、8本脚の成虫となります。大きさは0.3×0.04mm程度です。 皮膚断面における毛包と皮脂腺の位置と毛包中の外観  ニキビダニの感染経路として唯一確認されているのは、生まれた直後における母犬からの伝播です。死産の子犬や帝王切開で取り出した子犬、および母犬から隔離された子犬の皮膚でニキビダニが認められないことから、おそらく母犬の皮膚に生息しているニキビダニが、子犬と接触した時に乗り移って感染が成立するものと推測されています。最初に感染するのは、主に鼻の表面部分(鼻鏡)です。
 犬の毛包虫症の症状としては以下のようなものが挙げられます。局所的な症状は3~6ヶ月齢時、全身的な症状は免疫力が低下した時に現れます。好発部位は、眼や口の周辺、胴体、四肢先端などです。
毛包虫症の主症状
犬の毛包虫症~皮脂腺の多い部分に多発する
  • 膿疱(のうほう)
  • ただれ
  • 赤くなる
  • フケが多くなる
  • 脱毛
  • 膿皮症(重症例)

犬の毛包虫症の原因

 犬の毛包虫症の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
毛包虫症の主な原因

犬の毛包虫症の治療

 犬の毛包虫症の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
毛包虫症の主な治療法
  • 経過観察  子犬に多い局所型では、およそ90%の確率で6~8週以内に自然治癒するといいます。ですから局所型の毛包虫症に対しては、ひとまず経過観察という形がとられます。
  • 内服薬  成犬の毛包虫に対しては、殺虫効果のある薬剤を投与します。具体的には、イベルメクチンやミルベマイシンなどです。ただしイベルメクチンに関しては、フィラリアを保有している犬には使えません。またコリーシェットランドシープドッグオールドイングリッシュシープドッグオーストラリアンシェパードといった犬種においては、遺伝的に重い副作用を引き起こすことがありますので慎重に考慮します。また免疫力を低下させるステロイド剤は禁忌とされています。
  • 薬浴  殺虫効果のある薬剤を用いて体をよく洗います。具体的にはアミトラズなどです。