犬の毒になる食べ物・危険編
以下でご紹介するのは、犬の毒になる食べ物のうち死亡する危険性すらある絶対に避けたいものの一覧リストです。飼い主が間違って与えないことはもちろんのこと、犬が間違って近づかないよう厳重に管理しなければなりません。
チョコレート
危険! チョコレートやココアに含まれるテオブロミンという物質がホスホジエステラーゼと呼ばれる酵素の働きを阻害し、心臓の筋肉や神経に悪影響を及ぼします。具体的には血圧上昇、頻脈、不整脈、興奮、震え、けいれん、昏睡などです。大量に摂取した場合、6~24時間で死亡する危険性すらあります。ですから飼い主がチョコレートケーキを食べているときにせがんできても、絶対に与えてはいけません。テオブロミン含有量はホワイトチョコ<ミルクチョコ(1.5~2mg/g)<ダークチョコ(4.6~6.6mg/g)の順に高くなります。危険な時期は2月のバレンタインデー、12月のクリスマスなどです。
イギリスでは2017年、大手スーパー「セインズベリーズ」がクリスマスシーズンに合わせて試供品チョコレートを各家庭に無料配布しました。その結果、郵便受けから投げ入れられたチョコレートを犬が誤食して体調不良に陥るというケースが多発しました。いい迷惑ですね…。
キシリトール
危険! 人工甘味料「キシリトール」を犬が摂取した場合、インシュリンの急激な放出が起こり急性の低血糖に陥ってしまいます。ガム、歯磨き粉、ピーナツバター、ミントなどは絶対に遠ざけて下さい。気を緩めないため、具体的な中毒事例をご紹介します。
犬のキシリトール中毒事故
- アメリカ・テネシー州シュガーフリーのメントスガムに含まれていたキシリトールを誤食してしまったナッシュビルの犬「キャノン」が急性肝不全で命を落とす(2018年10月)。
- アメリカ・アイオワ州米国内でサプリメントとして市販されている睡眠補助成分メラトニンを犬の「ミリー」が誤飲。メラトニンそのものではなく混合成分であるキシリトール中毒にかかり命を落としかける(2018年9月)。
- アメリカ・カリフォルニア州誕生日用のカップケーキを食べた飼い主が食べ残しをコンポストに捨てる。匂いにつられた犬の「ベニー」が中を漁り、甘味成分として使われていたキシリトールを誤食して中毒死。地元の行政機関も大規模な警告を発する(2017年9月)。
タマネギ・ネギ類
アルコール飲料
危険! 犬の肝臓はアルコールを分解するようには発達していません。少量でも酩酊状態になり、内臓が機能障害に陥る危険性があります。冗談半分でも飲ませるのはやめましょう。また腐ったリンゴやパン生地などにも注意します。アメリカの「PET POISON HELPLINE」ではピザ生地、フォカッチャ(パンの一種)生地などが犬に対する新たな中毒ハザードになりうるとして警告を出しているほどです。
ぶどう・レーズン
危険! 理由は定かではないものの、嘔吐、腎機能障害、最悪の場合は死亡することもあります。レーズンを含んだパンも危険です。ぶどうの中に犬が必要としている栄養素は存在しませんので、原因がはっきりするまでは与えないに越したことはありません。
ブドウ糖は脳に必要だけど、「ブドウ」をそのまま与えると大変!
のどに詰まるもの
危険! 鳥の骨や魚の骨は犬の消化器官内に刺さりやすいので、与えないほうが無難です。犬は鼻が良いので、ゴミ箱をあさらないよう密閉式のものを使うようにしましょう。またあんず、梅、スモモ、モモなどの種子はのどにつまって呼吸困難を起こす危険性がありますので、犬の目に付かない場所へすばやく廃棄します。サクラ属(ウメ・モモ・プラム・アーモンド)の種子には微量のシアン化合物が含まれていますので、窒息のほか中毒にも注意が必要です。
人間用の医薬品
危険! 人間用の医薬品は人間の体の大きさを基本に計算されています。体の小さな犬に与えると、副作用を通り越して毒薬になります。犬に人間用の風邪薬などを与えるのは絶対にやめましょう。
2016年、イギリスの保険会社「MORE THAN」が英国内に暮らす犬や猫の飼い主1,000人に対して行ったアンケート調査では、約9%の飼い主が人間用の薬をペットに与えているという事実が明らかになっています。ペットに投与される人間用医薬品として挙がってきた名前の中には、命を奪いかねない危険なものも含まれていました。具体的には以下です。 犬と猫の中毒ハンドブック 多くの飼い主が人間用医薬品をペットに誤投与している(子猫のへや)
2016年、イギリスの保険会社「MORE THAN」が英国内に暮らす犬や猫の飼い主1,000人に対して行ったアンケート調査では、約9%の飼い主が人間用の薬をペットに与えているという事実が明らかになっています。ペットに投与される人間用医薬品として挙がってきた名前の中には、命を奪いかねない危険なものも含まれていました。具体的には以下です。 犬と猫の中毒ハンドブック 多くの飼い主が人間用医薬品をペットに誤投与している(子猫のへや)
医薬品によるペットの中毒
- 抗ヒスタミン薬ペットにおける抗ヒスタミン剤中毒の大部分は軽度で鎮静や運動失調などで終わることが多い。しかし肝機能障害を抱えている場合、中毒効果が高まる。
- アセトアミノフェン臨床症状はチアノーゼ、呼吸困難、顔面浮腫、抑うつ、低体温、嘔吐など。これらの症状は進行し、衰弱、昏睡、最終的には死に至ることもある。猫においては46mg/kg、犬においては100mg/kg程度で中毒を起こすと推定される。
- イブプロフェン主な臨床症状は腹痛、貧血、黒色便、吐血、胃腸過敏、胃潰瘍など。2015年4月には、イブプロフェンと同じく非ステロイド系抗炎症薬に属する「フルルビプロフェン」を舐めたことによる猫の死亡例が確認されたことから、アメリカ食品医薬品局(FDA)が緊急の警告を発している。
- アスピリン中毒症状は抑うつ、嘔吐、食欲不振、呼吸速迫、発熱などで、摂取後4~6時間で出現する。中枢神経が抑制されると筋肉の運動失調を招き、昏睡から死に至ることもある。猫における中毒量は25mg/kg/日、犬では50mg/kg/日程度。
緑茶・抹茶
危険! 未知のメカニズムにより、緑茶抽出成分が死亡を含む副作用をもたらし得る危険性が示されています。
空腹状態の犬に対して様々な濃度(0, 200, 500, 1000 mg/kg/日)で緑茶抽出物を含んだカプセルを9ヶ月間に渡って与えるという安全性試験が行われました。ところが開始から6ヶ月半の時点で早々に調査を切り上げるはめになったと言います(:Kapetanovic, 2009)。
具体的には肝細胞・消化管上皮細胞・ 腎臓の尿細管の壊死、生殖器の萎縮、造血組織の萎縮と壊死などが確認され、中には死亡する犬もいたとのこと。抽出物に含まれていたポリフェノールカテキンが毒性を発揮したものと推測されていますが、確かなことはいまだにわかっていません。具体的には56~72%の割合で含まれていたエピガロカテキンガレート(EGCG)が怪しいのではないかと考えられています(:Wu, 2010)。
奇妙なことに、緑茶抽出物による毒性は空腹時の犬にだけ現れる現象であり、満腹状態の犬では確認されていません。
空腹状態の犬に対して様々な濃度(0, 200, 500, 1000 mg/kg/日)で緑茶抽出物を含んだカプセルを9ヶ月間に渡って与えるという安全性試験が行われました。ところが開始から6ヶ月半の時点で早々に調査を切り上げるはめになったと言います(:Kapetanovic, 2009)。
具体的には肝細胞・消化管上皮細胞・ 腎臓の尿細管の壊死、生殖器の萎縮、造血組織の萎縮と壊死などが確認され、中には死亡する犬もいたとのこと。抽出物に含まれていたポリフェノールカテキンが毒性を発揮したものと推測されていますが、確かなことはいまだにわかっていません。具体的には56~72%の割合で含まれていたエピガロカテキンガレート(EGCG)が怪しいのではないかと考えられています(:Wu, 2010)。
奇妙なことに、緑茶抽出物による毒性は空腹時の犬にだけ現れる現象であり、満腹状態の犬では確認されていません。
緑茶抽出物が犬の内臓に対して毒性を発揮するメカニズムは解明されていません。カテキンを含む緑茶や抹茶は与えないほうがよいでしょう。特に空腹時の犬に長期的に与えた場合が危険です。
毒キノコ
危険! 食用キノコと間違えて調理した毒キノコを食べてしまうと、飼い主共々中毒症状に陥ってしまうでしょう。食用と間違えやすい毒キノコはクサウラベニタケ(シメジと間違える)、ツキヨタケ(シイタケと間違える)、ニガクリタケ(ナメコと間違える)などです。
詳しくは犬との生活・秋の注意でも解説してあります。「危険編」をマスターしたら次の「注意編」も確認してみましょう!
犬の毒になる食べ物・注意編
以下でご紹介するのは、犬の毒になる食べ物のうち体調不良に陥るリスクが高いものの一覧リストです。飼い主が間違って与えないことはもちろんのこと、犬が間違って近づかないよう厳重に管理しなければなりません。
カフェイン
注意! コーヒーや強壮剤などに含まれるカフェインには、中枢神経に対する強い興奮作用があります。人間が摂取すれば「頭がスッキリ!」程度ですが、体の小さな犬が体内に摂取すると、体調不良の原因になります。具体的には頻脈、過呼吸、興奮、震え、けいれん、不整脈などです。人間、犬、猫における致死量は、体重1kg当たりおよそ150mgと推計されています。
もちろんカフェイン入りのエナジードリンクもダメです!人間ですら死亡例があります。
人間用のサプリメント
注意! 人間用のサプリメントは人間の体のサイズを基本に計算されています。水溶性ビタミンはおしっことして体外に排出されますが、脂溶性ビタミン(A,D,E)は体内に蓄積され、各種の過剰症を引き起こします。サプリメントは必ず犬用を与えてください。
なお2016年、イギリスの保険会社「MORE THAN」が英国内に暮らす犬や猫の飼い主1,000人に対して行ったアンケート調査では、約5%の飼い主がプロテインシェイクやバーをペットに与えているという事実が明らかになっています。その主な理由は以下です。 多くの飼い主が人間用医薬品をペットに誤投与している(子猫のへや)
なお2016年、イギリスの保険会社「MORE THAN」が英国内に暮らす犬や猫の飼い主1,000人に対して行ったアンケート調査では、約5%の飼い主がプロテインシェイクやバーをペットに与えているという事実が明らかになっています。その主な理由は以下です。 多くの飼い主が人間用医薬品をペットに誤投与している(子猫のへや)
人間用サプリをなぜ与える?
- スタミナを増強して体型を整える→21%
- 早く体重が落ちるのはいいことだ→40%
- ペットの健康を改善する→35%
- 第三者からかっこよく見られる→6%
スイーツ・甘いお菓子類
注意! 犬は甘いものが大好きですが、カロリーが高くて肥満に陥る危険性があるので与えないほうがよいでしょう。ちなみに人間では甘いお菓子に含まれる「ショ糖」が虫歯の原因になります。一方、犬においては口の中の細菌叢が人間とは微妙に違うため、虫歯の症例は極めてまれです(というかほとんどない)。
あわび・サザエ
注意! 生のあわびの内臓(中腸腺)に含まれる「フェオフォーバイド」という物質が皮膚炎の原因になることがあります。皮膚の薄い耳の血管内にこの物質がたどり着くと、紫外線と反応して炎症を起こし、最悪のケースでは耳が取れてしまうこともあります。猫において「アワビを食べると耳が落ちる」という通説があるのもこのためです。特に被毛が白い犬は誤食と太陽光に要注意です。
イカ・スルメ
注意! 生のイカの内臓や二枚貝(ハマグリ)には、チアミナーゼというビタミンB1を分解する酵素が多く含まれているため、ビタミンB1欠乏症を起こすことがあります。食欲低下・嘔吐、さらに進むと、瞳孔が開き、歩き方がフラフラになります。猫において「イカを食べると腰が抜ける」という通説がるのもこのためです。また、加工されたスルメイカなども、食べ過ぎると胃袋の中でボリュームが増しますので危険です。
生の豚肉
注意! 生の豚肉は、「トキソプラズマ」という寄生虫の感染源となりえます。またこのトキソプラズマは「人獣共通感染症」ですので、犬の排泄物が何らかのルートを通って人間の口にはいると、人間にも感染してしまいます。生の豚肉や輸入豚肉は必ずよく加熱してから与えましょう。
生卵
注意! 生卵の白身には、「アビジン」という酵素の一種が含まれ、これはビタミンの一種であるビオチンを分解します。大量に食すると体内でビオチンが破壊され、皮膚炎や結膜炎などを引き起こすことがあります。アビジンは加熱すれば壊れますので、卵を与えるときは必ず加熱調理してから与えるようにしましょう。
香辛料
注意! コショウ、ペッパー、とうがらし、カレー、タバスコ、わさびなどの香辛料は、胃腸炎や内臓障害の原因になる可能性があります。面白半分でカレーやキムチを舐めさせたりするのはやめましょう。
ちなみに犬の食糞症を防ぐためとうがらしを用いるという民間療法がありますが、効果がないことが確認されています。 お困りの方は食糞症をしつけ直すで最新情報をどうぞ。
アボカド
注意! アボカド果実、種、葉などにはペルシンという物質が含まれており、人以外の動物に与えてはいけません。ウマ、ウシ、イヌ、ネコ、フェレットなどのペットや家畜に与えると中毒症状を起こし、痙攣・呼吸困難などに陥ることがあります。
生や大量のレバー
人間用の食べ物
注意! 人間用の食べ物は、体の小さな犬にとっては塩分の高いものばかりです。缶詰、スナック菓子、フライドチキン、コンビニ弁当、ご飯に味噌汁をかけた「ねこまんま」など、あらかじめ塩分が加えられている人間用の食物を与えないようにしましょう。
また特にスナック菓子は、犬が袋に頭を突っ込んだまま窒息死するという事例が海外で頻発しています。留守番中はもちろんのこと、飼い主が家の中にいるときも犬が鼻先を突っ込まないよう気をつけておく必要があります。
また特にスナック菓子は、犬が袋に頭を突っ込んだまま窒息死するという事例が海外で頻発しています。留守番中はもちろんのこと、飼い主が家の中にいるときも犬が鼻先を突っ込まないよう気をつけておく必要があります。
人間用の牛乳
注意! 子犬が母犬から離乳すると、牛乳に含まれる「乳糖」(ラクトース)を分解する酵素「ラクターゼ」の活性が急激に低下します。この低下には個体差があるため、牛乳を飲んでも平気な成犬がいる一方、人間と同じようにお腹が下って下痢状態になる成犬がいます。すべての犬にとって危険というわけではありませんが、与えないほうが無難でしょう。
食塩や塩水
注意! 食塩を大量に摂取すると急性食塩中毒に陥り、嘔吐、ふらつき、下痢、昏睡などの症状が引き起こされます。キッチンや食卓の塩入れ、食塩を大量に含んだクリスマスシーズンの「塩生地飾り」、ヒマラヤ岩塩を使ったインテリアランプには要注意です。またかつては誤飲や誤食したときの嘔吐剤として「食塩水を飲ませる」という方法が用いられていましたが現在では推奨されていません。
マカデミアナッツ
注意! 原因物質は特定されていないものの、マカデミアナッツによって歩行不全、筋肉の弱化、呼吸困難、震え、四肢の腫脹といった症状が引き起こされる可能性が指摘されています。念のため塩やチョコレートで味付けしたナッツ、クッキーやケーキに入っている砕いたナッツは食べさせないようにしましょう。
なお、犬が口に入れてはいけない危険なものに関しては、以下のページもご参照ください。