犬の接触性アレルギーの病態と症状
犬の接触性アレルギーとは、特定のものに接触することによってアレルギー反応が引き起こされた状態のことです。
「アレルギー」とは、免疫反応が激しすぎて、本来守るべき生体に害を及ぼしてしまう状態のことで、アレルギーを引き起こす原因物質は「アレルゲン」(抗原)と呼ばれます。アトピー性皮膚炎では、アレルゲンとの接触から30分~1時間という比較的短い時間で症状が出現しますが、接触性アレルギーでは症状が出るまでに24時間以上かかることも少なくありません。こうしたアレルギー反応の違いを生み出しているのが、「I型」と「IV型」というタイプの違いです。リアクションの早い「I型アレルギー」に関してはアトピー性皮膚炎のページで解説してありますのでご参照ください。接触性アレルギーで多いとされる、リアクションの遅い「IV型アレルギー」の大まかな発症メカニズムは以下です。
「アレルギー」とは、免疫反応が激しすぎて、本来守るべき生体に害を及ぼしてしまう状態のことで、アレルギーを引き起こす原因物質は「アレルゲン」(抗原)と呼ばれます。アトピー性皮膚炎では、アレルゲンとの接触から30分~1時間という比較的短い時間で症状が出現しますが、接触性アレルギーでは症状が出るまでに24時間以上かかることも少なくありません。こうしたアレルギー反応の違いを生み出しているのが、「I型」と「IV型」というタイプの違いです。リアクションの早い「I型アレルギー」に関してはアトピー性皮膚炎のページで解説してありますのでご参照ください。接触性アレルギーで多いとされる、リアクションの遅い「IV型アレルギー」の大まかな発症メカニズムは以下です。
アレルギー(IV型)のメカニズム
アレルギーを引き起こす原因物質は通常「アレルゲン」(抗原)と呼ばれますが、接触性アレルギーを引き起こす物質は、時として「ハプテン」(hapten)という特殊な呼び方をされます。「ハプテン」とは、分子量が小さいために単独ではアレルゲンになることができないような物質の総称です。「アレルゲンの卵」と言えばわかりやすいでしょう。
ハプテンが体内に入ると、キャリアタンパクと呼ばれる体内のタンパク質と結合してワンランク上の「アレルゲン」へとバージョンアップし、マクロファージという免疫細胞に取り込まれます。 マクロファージの役割は、「MHCクラスII分子」と呼ばれる特殊な突起を外に出し、「異物が入ってきたぞ!」という警報を周囲に発することです。この警報を受けて近づいてくるのが「ヘルパーT細胞」(Th1細胞)という別の免疫細胞です。ヘルパーT細胞は警報を受け取ると分裂して数を増やし、再び異物が入ってきたときのために兵力を増強します。 体内に再びハプテンが入ってくると、前回と同様、マクロファージが警報を発します。すると今度は、兵力を増強して待機していたヘルパーT細胞が一斉に大挙し、「サイトカイン」と呼ばれる化学物質を盛んに放出します。この物質の役割は、他のマクロファージを異物の近くに呼び寄せることです。サイトカインに引き付けられて集合したマクロファージは、内部から化学物質(ケミカルメディエーター)を放出して異物を除去しようとしますが、この物質は異物のみならず、その近くにある細胞や組織にまで作用してしまいます。結果として生じるのが、局所的な血流増加や痛み・かゆみといった症状です。このようにして、24~72時間という比較的長い時間をかけて緩やかに発生するのがIV型のアレルギー反応です。 Delayed Type IV Hypersensitivity(YouTube)
ハプテンが体内に入ると、キャリアタンパクと呼ばれる体内のタンパク質と結合してワンランク上の「アレルゲン」へとバージョンアップし、マクロファージという免疫細胞に取り込まれます。 マクロファージの役割は、「MHCクラスII分子」と呼ばれる特殊な突起を外に出し、「異物が入ってきたぞ!」という警報を周囲に発することです。この警報を受けて近づいてくるのが「ヘルパーT細胞」(Th1細胞)という別の免疫細胞です。ヘルパーT細胞は警報を受け取ると分裂して数を増やし、再び異物が入ってきたときのために兵力を増強します。 体内に再びハプテンが入ってくると、前回と同様、マクロファージが警報を発します。すると今度は、兵力を増強して待機していたヘルパーT細胞が一斉に大挙し、「サイトカイン」と呼ばれる化学物質を盛んに放出します。この物質の役割は、他のマクロファージを異物の近くに呼び寄せることです。サイトカインに引き付けられて集合したマクロファージは、内部から化学物質(ケミカルメディエーター)を放出して異物を除去しようとしますが、この物質は異物のみならず、その近くにある細胞や組織にまで作用してしまいます。結果として生じるのが、局所的な血流増加や痛み・かゆみといった症状です。このようにして、24~72時間という比較的長い時間をかけて緩やかに発生するのがIV型のアレルギー反応です。 Delayed Type IV Hypersensitivity(YouTube)
- ランゲルハンス細胞
- 「ランゲルハンス細胞」とは、皮膚の最上部を構成する「表皮」と呼ばれる層に存在している免疫細胞の一種です。皮膚に接触性アレルギーが生じた場合、このランゲルハンス細胞が深くかかわっていると考えられており、上記発症メカニズムの中では「マクロファージ」の役割を担っています。
接触性アレルギーの症状
接触性アレルギーは、アレルゲン(ハプテン)と接触した部位ならどこにでも発症する可能性がありますが、被毛が厚い部分においては、毛がバリアーになってあまり症状を示しません。逆に毛が薄い顎の先、胸元、鼠径部(腿の付け根)、会陰部(しっぽの下あたり)、指の間、しっぽの裏などが好発部位です。
犬の接触性アレルギーの症状としては以下のようなものが挙げられます。接触性アレルギーが発症するまでには、数ヶ月~数年に及ぶアレルゲンとの接触が必要となることも少なくありません。このタイムラグが、アレルゲンを特定する際の難しさにつながっています。
接触性アレルギーの主症状
- 接触部をひっかく・こする
- 接触部が赤く腫れる
犬の接触性アレルギーの原因
犬の接触性アレルギーの原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
接触性アレルギーの主な原因
- アレルゲン(ハプテン)との接触 アレルギー反応を引き起こしているアレルゲンとの接触が根本的な原因です。分子量が小さい場合は「ハプテン」と呼ばれます。具体的には、植物・腐葉土・シダーチップ・織物・敷物・じゅうたん・プラスチック・ゴム・皮革製品・金属・コンクリート・石鹸・洗剤・ワックス・脱臭剤・除草剤・肥料・駆虫薬・ノミ取り首輪・外用薬などが挙げられます。
- アトピー性皮膚炎 アトピー性皮膚炎を基礎疾患として持っている犬においては、接触性アレルギーも発症しやすいと言われています。
- 揮発性有機化合物(?) 近年は、アレルギーと中毒のちょうど真ん中の症状を引き起こす揮発性有機化合物(VOC)の存在も侮(あなど)れません。VOCとは、常温で蒸発し、気体となる有機化合物の総称です。主に呼吸器から体内に侵入しますが、皮膚と接触する機会も当然あります。
犬の接触性アレルギーの治療
犬の接触性アレルギーの治療法としては、主に以下のようなものがあります。
接触性アレルギーの主な治療法
- アレルゲンの撤去 犬にアレルギー反応を引き起こしていると考えられる物品を、住空間から撤去します。まずは先例があるアレルゲン(→原因の項参照)から開始し、症状の増減を注意深くモニターします。もし症状が軽くなったら、試しにもう一度怪しい物質と接触させてみます。もし再び症状が現れるようでしたら、高確率でそれがアレルゲンです。ここまで分かれば、今後はその物質と接触しないよう、意識的に取り除くことができるようになります。
- 投薬 炎症を軽減する目的でステロイドや抗ヒスタミン薬などが投与されます。ただしステロイドは医原性のクッシング症候群、抗ヒスタミン薬は食欲不振、嘔吐、下痢といった副作用を引き起こすことがありますので、決して万能薬というわけではありません。また、「時間がたてばアレルゲンに慣れる」ということもありませんので、アレルゲンを特定しない限り、一生涯の投薬が必要となります。
- シャンプー 皮膚や被毛にまとわりついたアレルゲンを物理的に洗い流します。
- 生活環境の改善 ダニやホコリ、花粉などを極力室内から除去するため、こまめに掃除をします。また目に見えないものの体に様々な影響を与える揮発性有機化合物(VOC)を可能な限り環境中から取り除くようにします。