犬種によるしっぽの違いについて
犬の種類は過去150年間において爆発的に増加し、結果として犬のしっぽにも犬種それぞれの個性が生み出されました。ジャーマンシェパードやゴールデンレトリバーなど、外見が比較的オオカミに近い犬種では、しっぽが長く垂れているのに対し、パグやブルドッグのような小型犬の中には、くるっとカーブを描いた短いしっぽを持っているものもいます。
以下で述べるのは、長くて垂れたしっぽを基準とした時の犬語解釈であり、必ずしも全ての犬種に当てはまるものではありません。特に、ウェルシュコーギーペンブロークのように生まれつきしっぽが無かったり、ミニチュアピンシャーのように犬種標準に合わせて生後まもなく断尾(だんび=人為的にしっぽを切り落としてしまうこと)されてしまうような犬種では、しっぽから感情を読むことは至難の業です。
なお、犬のしっぽの長さとコミュニケーション能力に関しては、ブリティッシュコロンビア大学の心理学教授、スタンレー・コレン氏が実験を行っています。実験では、しっぽのある犬(15センチより長い, 全体の76%)としっぽのない犬(15センチ以下全体の24%)とが観察対象になり、合計431件の犬同士のコンタクトが記録されました。
その結果、しっぽのある犬がかかわった攻撃的接触の件数として12件が観察されます。しっぽのない犬はしっぽのある犬のほぼ1/3であるため、単純計算では発生件数も1/3の4件程度になるはずです。しかし実際は、本来適正と思われる数値の6倍以上となる、26件という驚くべき回数が観察されたのです。
こうしたデータからコレン氏は、犬同士のトラブルは、しっぽによって相手の犬に適切なメッセージを送ることができなかいときに起こりやすくなるという結論に至っています。
このような事実からも、犬種標準の意味や犬種標準に合わせて断尾してしまうことの意味を、あらためて考えたいものです。
その結果、しっぽのある犬がかかわった攻撃的接触の件数として12件が観察されます。しっぽのない犬はしっぽのある犬のほぼ1/3であるため、単純計算では発生件数も1/3の4件程度になるはずです。しかし実際は、本来適正と思われる数値の6倍以上となる、26件という驚くべき回数が観察されたのです。
こうしたデータからコレン氏は、犬同士のトラブルは、しっぽによって相手の犬に適切なメッセージを送ることができなかいときに起こりやすくなるという結論に至っています。
このような事実からも、犬種標準の意味や犬種標準に合わせて断尾してしまうことの意味を、あらためて考えたいものです。
水平のしっぽから犬の心を読む
走っているときのしっぽは、主にボディバランスを保つためのおもりとして用いられますが、止まっていたり歩いているときのしっぽは、感情や意思を相手に伝えるための道具として用いられ、犬の心を察する際の極めて重要な手がかりとなります。
水平のしっぽとその意味
- しっぽが水平に突き出されるが、緊張はしていない 何か面白いことが起こりそうだ!近くで何かが起こったり、遠くから誰かが近づいてくるときなどによく見られます。対象に注目していますが、威嚇や恐怖心は含まれません。
- しっぽが緊張と共に水平に突き出される どっちがボスかはっきりさせようじゃないか!2頭の犬がエサやおもちゃをめぐって対立するときなどに見られます。強い攻撃心は無いものの、相手を警戒する気持ちは失っていないときなどです。
上がったしっぽから犬の心を読む
人前でエサをもらった犬はしっぽを振るのに対し、隔離された部屋でえさを食べるときの犬はしっぽを振らないといいます。こうした事例からも、しっぽは相手に対して自分の感情を伝えるための意思伝達ツールである、という側面が見えてきます。なお、しっぽの先だけ毛色が違うのは、しっぽの動きをより分かりやすく目立たせるためだとも言われています。
上がったしっぽとその意味
- しっぽが緊張し、斜め上を向いている ボスは自分だ!近くにいる全員に対して自分の優位性を示すときなどに見られます。さらに自信家の犬の場合、しっぽの緊張がなくなり、先端がわずかに動くとされます。犬のこうした動作には、肛門腺を堂々とさらして好き勝手に臭いをかがせるという意味合いがあり、人間界で言うと、社会的に成功した人が、同窓会で名刺を配りたがるのと似ているかもしれません。
- 上げられたしっぽがやや背中側に曲げられている ボスの座は譲らないぞ!自分の支配力を確信し、全てが自分の思い通りに運ぶことを期待しているときに見られます。上に上げられたしっぽが優位性を示すようになったのは、オオカミの群れが狩りをするとき、先頭を走るリーダーオオカミの高く上がったしっぽを旗印にしながら行ってきたからだ、とする説もあります。
- しっぽが高く上がり、時に蛇行している うせろ!さもなくば痛い目に遭うぞ!ジャーマンシェパードや北方系のアラスカンマラミュートなど、オオカミに外見が近い犬種で多く見られ、すぐにでも攻撃する気持ちがあることを示します。
垂れたしっぽから犬の心を読む
しっぽを垂らすという行為には、基本的に自分の体を小さく見せるという意味があります。相手に対して恐怖を感じていたり、へりくだる感情を抱いているようなとき、犬は自然としっぽを垂らしますが、これはちょうど、人間が高い場所から下を見下ろしたときに感じる、股間がザワッと縮こまる感触に似ているのかもしれません。
垂れたしっぽとその意味
- しっぽがまっすぐ伸びた後足の近くまで垂れ、ゆっくり揺れている 気分がよくないな・ちょっと調子が悪いな病気や怪我で痛みや苦しみを感じているときや、精神的な不快感を味わっているときなどに出ます。
- やや腰を落とした後足の間にしっぽが垂れている なんだか不安だ・・・慣れない環境におかれたり、家族のメンバーが出かけていくのを見送る犬などに見られます。
- しっぽが後足の間に巻き込まれている 怖い!降参です!恐怖を感じているときや、攻撃的な犬に対して和平交渉を持ちかけるときなどに使われる形です。
しっぽの動きから犬の心を読む
一般的に、子犬がしっぽを振り始めるのは、早くて生後3週齢で、その後生後30日で約半数の犬が、そして生後40日程度でほとんどの犬がしっぽ振りを覚えるといわれます。この「しっぽ振り学習期」は、子犬たちが遊びを通じて社会性を身につけ始める時期に一致します。
犬のしっぽの動きとその意味
- すばやくしっぽを振る ウキウキ!・ワクワク!しっぽのふり幅は関係なく、早く振られたときは興奮の度合いが強く、逆に遅く振られた場合は興奮の度合いが弱いとされます。しっぽの長い犬種の方が、短い犬種よりもゆっくり振られているように見えますが、これは30センチの棒と1メートルの棒を振るときの違いと同様、長いものを振るときの方がより多くの力を要するからです。 犬のしっぽの動き具体例
- 狭い幅でほんの少ししっぽを振る こんにちは相手に挨拶をするときによく見られる動きです。親しい相手のほか、初対面の相手に対しても用いられます。ふと目が合ったときしっぽがこの動きをした場合は、「私はここにいますよ」といった軽い意味になります。 犬のしっぽの動き具体例
- しっぽが大きく振られる あなたには逆らいません/仲良くしましょう犬同士が遊んでいる最中にも見られ、「これは遊びだよ」というメッセージになります。遊びがエスカレートしてケンカに発展しそうになっても、どちらかがこのサインを出すことによって再び気持ちが遊びモードに切り替わります。 犬のしっぽの動き具体例
- 腰もろともしっぽを大きく左右に振る 私はここです/大事にしてください自分より優位な立場にある相手に対して見せる動きで、最高のへりくだりという意味合いを持ちます。長い間引き離されていた犬が、飼い主と再会するときなどに見られます。「最高に幸せ!」と解釈されることもありますが、相手に対する信頼や「もうどこにも行かないで」といった甘えなど、もう少し複雑な要素が絡み合っています。 犬のしっぽの動き具体例
- 腰を落とし、床を掃くようにしっぽを大きく振る 何なりとお申し付けください優位者に対して最大限の愛情と敬意を表すときに出る動きです。オオカミの場合は、リーダーが群れに帰ってきたときなどに、劣位のオオカミがこの行動を見せます。犬の場合はさらに、人の顔を舐めたり、自分の目の前の空気を舐めるようなしぐさもします。 犬のしっぽの動き具体例
- しっぽが水平近くでゆっくり振られる よくわかりません/少し不安ですしっぽの位置が高くもなく(支配的)低くもない(服従的)場合は、心がどっちつかずで不安な状態にあることを示します。見知らぬ犬と出会ったときなどに観察されます。相手に対する接し方が決まると、しっぽの位置が高くなったり低くなったり、あるいは動きが早くなったり遅くなったりします。 犬のしっぽの動き具体例
- 斜め下に垂れたしっぽが緩やかに左右に揺れる 万事順調・問題なし心配事がなく、リラックスしたときに出る動きです。人間で言うと、スキップをするような感じでしょうか。 犬のしっぽの動き具体例