吠え声から犬の心を読む
オオカミは控えめに「ウッフ」と断続的に鳴くのに対し、犬は10分間もの間「キャンキャン!」とひっきりなしに鳴き続けることも少なくありません。犬に特徴的なこの「吠える」という行為の中には、時として重大な意味が含まれていることもあります。
犬の吠え声とその意味
- 連続して3~4回中程度の音程で吠え、間に休みをおく
念のため警戒したほうがよさそうだ何かがいるようだがまだ正体がよく分からないようなときや、遠くに見慣れぬものを発見したときなどに発するあいまいな警戒の合図です。
吠え声の具体例
- 立て続けに何度も中程度の音程で吠え続ける外敵だ!用心しろ!侵入者や不審者など、明らかに外敵と思われる対象を発見したときに発せられる、明確な警戒の合図です。
吠え声の具体例
- 低い音程でゆっくりと吠え続ける外敵はすぐそばにいる!身構えろ!敵が近くにおり、緊迫した状況において発せられる警戒の合図です。低い音程は、1歩も引かない確固たる意志があることを意味しています。
吠え声の具体例
- 高い声を長く伸ばし、間に長めの休みを置いてまた吠える独りぼっちで寂しいよ・・仲間がほしいなどこかに閉じ込められたり、長時間孤独にさらされたときなどに発する声です。ストレスの度合いが増すと、声が高くなり、キャンといった感じの吠え声が混じることもあります。
吠え声の具体例
- やや高めの声で1~2回短く強い調子で吠えるやあようこそ!こんにちわ!見慣れた人物や親しい仲間に対して発する、典型的な挨拶の声です。
吠え声の具体例
- やや低めの声で1回だけ短く強い調子で吠えるやめて!私に構わないで!母犬が子犬に付きまとわれているときや、ブラッシングなどわずらわしい状況に置かれているといなどに発せられる声です。
- やや高めの声で1回だけ短く強い調子で吠える何だこりゃ?!えっ!?不意をつかれたときや驚いたときなどに出る感嘆詞のようなものです。
- やや高めの声で複数回短く柔らかく吠えるおーいこれを見てみろよ!恐怖や護身のためではなく、単純な好奇心から発せられる声です。驚いたときの声と警戒したときの声を、ちょうど足して2でわったような感じです。
- 中程度の音程で短く柔らかく吠えるすごい!いいぞ!飼い主が散歩用のリードを持ったときや、えさの準備をしているときなど、期待交じりのわくわく感を抱いているときによく出る声です。
- 中程度の音程でこもるように吠える遊ぼう!相手を遊びに誘うときに発せられる声で、プレイバウ(犬同士の「遊ぼう!」というボディランゲージ)と共によく聞かれます。
- 中程度の音程からしり上がりに声が高くなる面白い!遊びに誘うときではなく、遊んでいる最中によく出る声です。
うなり声から犬の心を読む
低いうなり声は、「噛みつくぞ!」という攻撃姿勢を意味すると同時に、「不要な争いはしたくないから、近づくんじゃない!」という停戦の申し入れでもあります。本当に攻撃するつもりなら、むしろ音を消した状態で相手に近づき、突然攻撃を仕掛けます。これは暴漢に襲い掛かる警察犬を見ればすぐに理解できるでしょう。
うなり声とその意味
- 胸から出ているような弱く低いうなり声
(敵へ)あっちへ行け!/(味方へ)気をつけろ!
自信のある支配的な動物の典型的なうなり声で、近づくと怪我するぞ!という警告を意味します。この警告に従わずじっと相手をにらみ返したりすると、やがてうなり声が止まって本当の攻撃が開始されます。
うなり声の具体例
- 口先から発せられるやや低めの小さな唸り声
あっちへ行け!離れろ!
あまり自信のない犬がよく出す声で、気は進まないけれども、いざとなったらしょうがなく戦うぞ、といった意味合いです。
うなり声の具体例
- 低いうなり声に吠え声が続く
頭にきたぞ!でも助けがほしいなあ・・
あまり自信のない犬がよく出す声で、挑まれれば戦うことも辞さない・・・だけど助けがいてくれたらありがたいなぁ、といった意味です。
うなり声の具体例
- やや高めのうなり声に吠え声が続く
自分の身は自分で守るぞ!
あまり自信のない犬がよく出す声で、相手から挑まれれば応戦する気があることを伝えようとしています。
うなり声の具体例
- 高くなったり低くなったりするうなり声
戦うかもしれないし、逃げるかもしれない・・
非常に自信のない犬が、強がりで発する威嚇です。声がときどき途切れがちになるのは、戦うべきか逃げるべきが、自分自身にもよく分かっていないあいまいな感情を意味しています。
うなり声の具体例
- やや高めの声で歯を見せずに出すうなり声
面白いなあ!楽しいなあ!
威嚇の声に似ていますが、唇をめくり挙げて犬歯を見せていないのが特徴です。遊んでいるときなどによく聞かれますが、飼い主は本物の警戒音と間違えて、せっかくの楽しい遊びを中断しないようにしましょう。
うなり声の具体例
- 太くて長いうなり声
獲物を見つけたぞ!みんな集まれ!
獲物を追いかける猟犬などがよく発する声です。遠吠えのように一つの音を長く伸ばすことはなく、遠吠えとヨーデルを混ぜたような声音になります。
うなり声の具体例
遠吠えから犬の心を読む
犬の祖先であるオオカミの遠吠えには、主に2つの意味があります。1つは狩りのために群れを集めること、そしてもう1つは仲間の存在を確かめることです。興味深いことに、遠吠えをしている複数のオオカミは、それぞれの声がかぶらないよう、微妙に音程を変えているそうです。では、犬の遠吠えには一体どのような意味があるのでしょうか?
犬の遠吠えとその意味
- 尾を引くようなシンプルな遠吠え
ここは私の縄張りだ/君の声が聞こえたよ
通常は何の前触れもなく始まり、長く伸びるような声が断続的に繰り返されます。その場合は「わたしはここにいるよ」といった感じで、自分の縄張りを主張する意味合いがあります。また、他の犬の遠吠えに合わせるように発せられた場合は、「君の声が聞こえたよ」という返答の意味になります。
遠吠えの具体例
- 高い声で吠えた後の遠吠え
独りぼっちで寂しい!
仲間から引き離されて孤独にさいなまれている犬がよく出す声で、こっちに気づいて欲しい、という願望を表します。
遠吠えの具体例
- 2~3回中程度の音程で吠えた後の遠吠え 独りぼっちで寂しい!誰か助けて! 1日中庭に閉め出されていたり、犬小屋に軟禁されていたり、かなり寂しい思いをしている犬が出す声です。自分に注意を集めるため、なりふり構わず何度も遠吠えを繰り返します。
高鳴きから犬の心を読む
高鳴き(高啼き)とは、キーンと耳に響くような高い声で鳴くことです。オオカミ、クマ、ネコ、ワニ、ニワトリ、アヒルなど、陸上の脊椎動物の子獣が出す高鳴きには共通点があり、1つは環境の中においてもほかの音と区別がつきやすいこと、そしてもう1つは音の発信源が突き止めにくいことです。この特性には、母親に自分の存在をアピールすると同時に、外敵からは発見されにくいという効果があります。
犬の高鳴きとその意味
- キュンキュンという高い声
欲しい!
子犬気分に戻ったときに発せられる声で、上位者に対して何かを要求するという意味合いがあります。ちょうど子犬が母犬におっぱいをねだるような感じで、おなかがすいた、一緒にいて欲しい、遊びたい、などの気持ちを伝えます。
高鳴きの具体例
- クーンと長く伸ばす鼻声
欲しい/敵意はありません
上位者に対して恐怖心や服従心を表すときに発せられる声です。ちなみに獣医師であるブルース・フォーグル博士がオオカミに襲われとき、身を小さくしてクーンと泣いたことで命拾いしたという逸話が残っていますが、この話のように、自分がか弱い存在で、敗北を認めたという意志を相手に伝える効果があります。
高鳴きの具体例
- 弱々しい鼻声
痛いよう!怖いよう!
どこかが痛かったり知らない場所につれてこられて怖くて仕方が無いときに発せられる、最も悲痛な声の一つで、動物病院などでもよく聞かれます。上位の犬に対し、服従の姿勢と共にこの声が発せられることもあります。
高鳴きの具体例
- ヨーデルのような低めの声
うれしい!わくわくする!
大好きなことを目前に控え、興奮したときに出される声です。
高鳴きの具体例
- 非常に短い高音の吠え声
痛い!
子犬同士が遊んでいる最中、一方が強く噛みすぎたときなどに発せられます。犬はこの声をきっかけにして遊びを中断し、どの程度の力でかんだら相手に苦痛を与えるのかを徐々に学習していきます。なお、犬の甘噛みをしつけるときは、人間がこの声を真似することで犬の動きをストップさせます。
高鳴きの具体例
- 連続する高い鳴き声
痛い!怖い!
深刻な恐怖や苦痛に直面している犬が発する声です。本来犬は苦痛に対する忍耐力が強く、めったに悲鳴を出すことはありません。その犬がなりふり構わず、連続して苦痛の声を上げるということは、それだけのっぴきならない状況に陥っていることを意味します。なお、争いの最中にこの声を発した場合は、「負けました!」という意味になり、攻撃側もそれ以上相手を深追いするのをやめます。
高鳴きの具体例
- キャイーンという高い悲鳴
痛い!大変だ!
犬が極度の苦痛に襲われ、生命の危機に直面しているようなときに発せられる声で、長く尾を引く悲鳴が何度か繰り返されます。
高鳴きの具体例
ため息から犬の心を読む
犬がため息をつくときは、たいてい両前足の上に頭を乗せて腹ばい状態になっています。しかしそのときの状況や微妙な顔の表情により、意味は大きく2つに分かれます。
犬のため息とその意味