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犬の口内炎~症状・原因から治療・予防法まで

 犬の口内炎(こうないえん)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い犬の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

犬の口内炎の病態と症状

 犬の口内炎とは、口の中にある粘膜で生じた炎症の総称です。
 口内炎は大きく「系統性口内炎」と「潰瘍性口内炎」とに分かれます。前者は他の病気の周辺症状として発生した一時的な口内炎のことで、後者は潰瘍(かいよう)を伴う原因不明の慢性口内炎のことです。両者に共通する症状を以下に示します。
犬の口内炎の主症状
  • 食欲不振
  • 口元を気にする
  • 口をぺちゃぺちゃ鳴らす
  • 大量のよだれ
  • 口臭の悪化
  • 口内の腫れ
 犬にとって厄介なのは「潰瘍性口内炎」の方です。口内炎は「口蓋舌弓」(こうがいぜっきゅう)と呼ばれる口の奥の方から、歯茎や頬の内側まで及び、広範囲にわたって潰瘍を引き起こします。「潰瘍」(かいよう)とは粘膜の上部を突き破ってその下にある層にまで到達した状態ですので、口の中があちこち切られたようなひどい痛みを引き起こします。空腹にもかかわらず、犬が食餌を拒絶するようになるのはこのためです。
 以下で潰瘍性口内炎の典型的な外観を示します。人間の口内炎のようなポツポツとした可愛いものではなく、かなり広い領域が真っ赤に腫れ上がっていることがお分かりいただけるでしょう。 犬の潰瘍性口内炎~口蓋舌弓から頬粘膜にかけて潰瘍が見られる
潰瘍性口内炎の同義語  「潰瘍性口内炎」に関しては表現がかなり混乱しています。一例を挙げると、「再発性口腔潰瘍」(ROU)、「慢性潰瘍性歯周口内炎」(CUPS)、「歯周口内炎」(GS)、「歯肉口内咽頭炎症候群」(GSPC)などです。しかし全てに共通しているのは、原因不明であること、慢性であること、潰瘍を伴うことですので、当ページではシンプルに「潰瘍性口内炎」を採用します。

犬の口内炎の原因

 犬の口内炎の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
犬の口内炎の主な原因

犬の口内炎の治療

 犬の口内炎の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
犬の口内炎の主な治療法
  • 系統性口内炎  口内炎を引き起こしている基礎疾患に対する治療が優先されます。具体的にはウイルスを抑えるための抗生物質の投与などです。口内炎はあくまでも他の疾患の周辺症状ですので、基礎疾患さえしっかりとコントロールすれば、自然と口内炎も消えてくれます。また電気コードや化学薬品など、誤飲誤食の原因となるものを環境内から撤去しておくことも予防につながります。
  • 潰瘍性口内炎  潰瘍性口内炎は多くの場合が原因不明ですが、まず第一に考慮されるのが歯周病の管理です。歯垢や歯石を除去し、歯肉の炎症を抑えることに努めます(歯周デブリードマン)。また、飼い主が家庭において歯磨きなどを通してプラークコントロール(歯垢を溜めない)をすることも重要です。 犬の潰瘍性口内炎の治療~抜歯と炭酸ガスレーザー  欠けた歯が口腔粘膜を傷つけているような場合は、犬歯より奥の部分抜歯、もしくは全抜歯が行われることもあります。歯を抜くと同時に、歯肉、歯周組織、歯を入れていた歯槽骨という顎の骨も全て削り取りますので、かなりの大手術です。抜歯後しばらくは、のどやおなかからチューブを通して強制給餌を行い、その後噛み砕く必要のない大きさのエサを与えるようにします。犬は基本が丸飲みですので、たとえ全く歯がなくてもそれほど食事に支障はないようです。
     過剰な炎症の結果として組織の増殖が認められる場合は、炭酸ガスレーザーを用いた切除が行われることもあります。レーザーで切除した後は血液の供給が少なくなるため、それだけ炎症も軽減されます。
     その他の治療法は、抗菌薬、抗炎症薬、免疫調整薬の投与などです。