犬のコクシジウム症の病態と症状
コクシジウム症は、原虫であるコクシジウム(coccidia)が腸管に寄生することによって発症する寄生虫症です。原虫(げんちゅう)とは、他の動物に寄生する性質を持ち、さらに病原性を有している単細胞生物のことを指します。「イソスポラ症」、「サルコシスチス症」、「トキソプラズマ症」といった病名は、全て「コクシジウム症」の亜種です。なお「トキソプラズマ症」に関しては、人間にも感染する人獣共通感染症としての側面が強いため、ページを独立して解説しました。詳しくは姉妹サイト「子猫のへや」内のトキソプラズマ症というページをご参照ください。
健康な成犬の場合、保有していても症状を示さないことが大半です。しかし免疫力が弱い6ヶ月未満の子犬に感染した場合は、ストレスなどが引き金となって寄生虫が増殖し、7~10日の潜伏期を経て以下のようなさまざまな症状を示します。
健康な成犬の場合、保有していても症状を示さないことが大半です。しかし免疫力が弱い6ヶ月未満の子犬に感染した場合は、ストレスなどが引き金となって寄生虫が増殖し、7~10日の潜伏期を経て以下のようなさまざまな症状を示します。
コクシジウム症の症状
- 下痢
- 血便・粘液便
- 嘔吐
- 食欲不振
- 脱水症状
- 震えや混乱
- 微熱
犬のコクシジウム症の原因
犬のコクシジウム症の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
コクシジウム症の原因
- 経口感染
原虫の未成熟な状態である「スポロシスト」(sporocyst)に汚染された食物を口にすることにより感染します。このスポロシストは内部に胞子をもっており、さらにその内部には「スポロゾイト」(sporozoite)と呼ばれる新しい宿主に感染する細胞を含んでいます。汚染食物を通じて犬の体内に侵入したスポロゾイトは腸管内にたどり着き、そこで成長して「オーシスト」 (oocyst) と呼ばれる卵を糞中に排出します。そしてオーシストから生まれたスポロシストに汚染された食物や水を摂取した他の動物の体内で、同じライフサイクルを繰り返して勢力を広げていきます。
犬のコクシジウム症の治療
犬のコクシジウム症の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
コクシジウム症の治療と予防
- 投薬治療 メトロニダゾール、アンプロリウム、セクニダゾール等の投与で、通常2週間以内に回復します。下痢や嘔吐の結果として脱水症状がみられる場合は輸液なども併せて行われます。
- 衛生管理 母犬の糞便を子犬が口にしてしまうという状況をなくすため、母犬の妊娠前に駆虫を済ませておきます。また妊娠中に駆虫する場合は、薬剤が持つ催奇形性を慎重に調べておくことが必要です。もし駆虫が間に合わなかった場合は、母犬の糞便を素早く片付ける、子犬が糞便に近づけないよう監視する、などの配慮が必要となります。コクシジウムは消毒剤で死滅しないため、汚染が疑われるものに対しては焼却処分や煮沸処理などが必要です。
駆虫薬の効果、安全性、副作用に関しては「犬の寄生虫対策・完全ガイド」にまとめてあります。犬向けのコクシジウム駆除剤としては2017年から「プロコックス」の流通が始まりました。