犬のバベシア症の病態と症状
バベシア症は、バベシア属(Babesia)の原虫が感染することで発症する寄生虫症です。原虫(げんちゅう)とは、他の動物に寄生する性質を持ち、さらに病原性を有している単細胞生物のことを指します。
バベシア属には数多くの亜種がおり、世界的な分布図を見ると「Babesia canis vogeli→アメリカ・アフリカ・アジア・オーストラリアなど世界全域」、「Babesia canis rossi→アフリカ」、「Babesia canis canis→ヨーロッパ」といった感じです。また日本においては、「Babesia canis」による「犬バベシア症」の症例が沖縄で、そして「Babesia gibsoni」による「ギブソン犬バベシア症」の症例が西日本で散見されています。 例えば以下は2011年、帯広畜産大学を中心とした調査チームが日本全国の診療所を対象として行ったバベシア症(B.gibsoni)の統計調査結果です。2009年もしくは2010年の年間症例確定数のうち、多い方を取ってヒートマップにした所、以下のようになったと言います。関西から下に行くほど症例数が多く(色が濃く)なっていく様子がお分かりいただけるでしょう(:Inokuma, 2012)。1つの動物病院におけるバベシア患犬数に関し、全国平均が0.54頭なのに対し、流行地域である山口県では平均25.4頭など、場所によって感染リスクに数十倍の開きがあるのはざらです。 バベシアは、マダニが動物の体に噛み付いて血を吸う際、唾液と共に侵入します。潜伏期間は約2~4週間で、赤血球で分裂・増殖し、溶血を引き起こします。その他の主な症状は以下です。
8ヶ月齢未満の子犬ではバベシア原虫に対する十分な免疫反応が起こらず、成犬に比べると貧血に陥りやすいというのが特徴です。一方成犬では十分な免疫応答が起きるものの、原虫が体内から完全に排除されることはなく、キャリアー犬となってしまうという特徴があります。キャリアー犬では脾臓摘出によってバベシア症の再発率が高まるため要注意です。
バベシア属には数多くの亜種がおり、世界的な分布図を見ると「Babesia canis vogeli→アメリカ・アフリカ・アジア・オーストラリアなど世界全域」、「Babesia canis rossi→アフリカ」、「Babesia canis canis→ヨーロッパ」といった感じです。また日本においては、「Babesia canis」による「犬バベシア症」の症例が沖縄で、そして「Babesia gibsoni」による「ギブソン犬バベシア症」の症例が西日本で散見されています。 例えば以下は2011年、帯広畜産大学を中心とした調査チームが日本全国の診療所を対象として行ったバベシア症(B.gibsoni)の統計調査結果です。2009年もしくは2010年の年間症例確定数のうち、多い方を取ってヒートマップにした所、以下のようになったと言います。関西から下に行くほど症例数が多く(色が濃く)なっていく様子がお分かりいただけるでしょう(:Inokuma, 2012)。1つの動物病院におけるバベシア患犬数に関し、全国平均が0.54頭なのに対し、流行地域である山口県では平均25.4頭など、場所によって感染リスクに数十倍の開きがあるのはざらです。 バベシアは、マダニが動物の体に噛み付いて血を吸う際、唾液と共に侵入します。潜伏期間は約2~4週間で、赤血球で分裂・増殖し、溶血を引き起こします。その他の主な症状は以下です。
バベシア症の症状
- 貧血
- 毛づやの悪化
- 黄疸
- 倦怠
- 食欲不振
- 腹部の膨満
- 尿色が濃くなる
- 発熱
8ヶ月齢未満の子犬ではバベシア原虫に対する十分な免疫反応が起こらず、成犬に比べると貧血に陥りやすいというのが特徴です。一方成犬では十分な免疫応答が起きるものの、原虫が体内から完全に排除されることはなく、キャリアー犬となってしまうという特徴があります。キャリアー犬では脾臓摘出によってバベシア症の再発率が高まるため要注意です。
犬のバベシア症の原因
犬のバベシア症の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。沖縄や西日本など感染例が報告されている地域において危険性が高まります。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
バベシア症の原因
- 刺咬症マダニが動物の体にかみついて血を吸う際、唾液と共に侵入します。
- 経胎盤感染母犬の体内において、胎盤を経由して子犬に感染することがあります。
- 咬傷噛み傷から体内に侵入することで感染します。闘犬に関わる土佐犬において感染リスクが高まるという報告もあります(:Matsui, 2004)。
- 輸血原虫に汚染された血液を誤って輸血してしまうことで感染します。PCR検査や血液抗体検査のどちらか一方だけでは感染を見落としてしまう危険性がありますので、輸血を行う際はドナー血液を複数の検査方法でダブルチェックすることが必要です。
犬のバベシア症の治療
犬のバベシア症の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
バベシア症の治療と予防
- 投薬治療 ジミナゼン、クリンダマイシン、プリマキン、アトバコンなどが用いられます。ほとんどの犬では治療を開始して24時間以内に症状の改善が見られますが、体内から完全にバベシア原虫を排除できることは稀で、通常はキャリアーとなります。日本においてよく見られる「Babesia gibsoni」(アジア型)も例外ではありません。
世界的に最も広く用いられている原虫薬「ジミナゼン」は、著明な効果が得られる反面、反復投与により耐性原虫が出現し、治療効果が減衰する危険性があるので注意が必要です。また犬はジミナゼンの毒性に対して感受性が高く、嘔吐、下痢、注射部位の痛みや腫脹といった副反応が見られることもしばしばあります。 - 輸血貧血症状がひどく、生命に危険が及んでいるような状況においては輸血が行われることがあります。先述したように、輸血のドナー犬自体が不顕性感染している危険性がありますので、ドナー血液はPCRと抗体検査など複数の検査方法で汚染されていないことを事前確認します。
- ダニの管理ダニとの接触を最小限にとどめることが最も効果的な予防法です。症例が散見される地域においては、ダニ駆除薬を定期的に投与したり、犬の歩く場所をダニの生息していない場所に制限するなどの配慮が必要となります。