犬のトリコモナス症の病態と症状
トリコモナスとは、脊椎動物全般に寄生する原虫の一種です。原虫(げんちゅう)とは、他の動物に寄生する性質を持ち、さらに病原性を有している単細胞生物のことを指します。人間では性感染症として有名ですが、犬では大腸に寄生する「腸トリコモナス」(P.hominis)や「トリトリコモナス・フィータス」(Tritrichomonas foetus)が知られています。ちなみに頭に付いている「トリ」とは「3つの」という意味で、「トリトリコモナス」と言った場合は「3鞭毛トリコモナス」という意味になります。同じく原虫であるジアルジアやクリプトスポリジウム、コクシジウムの亜種であるイソスポラなどと共に発見されることが多く、1歳未満の子犬に対し以下に述べるような症状を引き起こします。
トリコモナス症の症状
犬のトリコモナス症の原因
犬のトリコモナス症の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。「腸トリコモナス」や「トリトリコモナス・フィータス」は非常にありふれた原虫であるため、たとえ犬に症状が現れていなくても、保有していないとは言い切れません。こうした無症候性のキャリアが感染源となることもあります。
トリコモナス症の原因
- 経口感染 原虫に汚染された糞便を何らかの形で口に入れることにより感染します。頻発する場所は、保護施設やブリーディング施設など、糞便による汚染が発生しやすい環境です。
犬のトリコモナス症の治療
犬のトリコモナス症の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
トリコモナス症の治療と予防
- 対症療法 特効薬が存在しないため、差し当たり今ある症状を軽減することを目的とした治療が施されます。具体的には、下痢の頻発で引き起こされた脱水に対する輸液や、腸内細菌のバランスを改善するためのプロバイオティクスなどです。
- 投薬治療 症状が重い場合はチニダゾール、メトロニダゾール、フェンベンダゾール、ロニダゾール、セクニダゾールなどが投与されることもあります。しかし効果がまちまちで、また副作用が強いことから、優先的に行われる治療法ではありません。
- 衛生管理 汚染された糞便が感染源であるため、排せつ物を素早く片付ける、多頭飼いの環境においてはトイレの数を増やす、管理する人間が手洗いを徹底する、といった対策が重要になってきます。しかし環境中から原虫を完全に除去することが難しく、再発することもしばしばです。