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犬の散歩マナー完全ガイド~歩道・公園・ドッグランでの法律やルール

 犬を散歩するときには法律、条例、コミュニティの決まり事など、守らなければならないマナーとルールがたくさんあります。こうした基本的な規則をしっかりと把握していれば、犬の事故や怪我を予防できると同時に飼い主に降りかかるトラブルも未然に防ぐ事ができるでしょう。

犬の散歩に関する法律と基本マナー

 散歩とは自宅から外に出てぐるっと回って再び家に戻ってくるという単純な作業です。しかし通常の散歩とは違い「犬を連れている」という条件が加わった途端、国の法律、地方自治体の条例、所属コミュニティのローカルルール、集合住宅の管理規約など、様々な決まり事を守る義務が生じます。まずは基本的なルールを理解し「気づいたら法律違反だった!」という事態に陥らないようにしましょう。
 以下は犬を散歩に連れ出す前に最低限マスターしておきたいしつけです。
犬の散歩に必要なしつけ

ノーリードは違反

 引き綱を付けないで散歩させるいわゆるノーリードは、特殊な場合を除いて法律違反です。
関連規則や法律
犬の所有者等は、犬を道路等屋外で運動させる場合には犬を制御できる者が原則として引き運動により行うこと 家庭動物等の飼養及び保管に関する基準・犬の飼養及び保管に関する基準5-1

公共の場を汚すのは違反

 犬の散歩をトイレの時間を一緒にしている人がいますが法律違反です。万が一犬がおしっこをしてしまった場合は、マナー水をかけてきれいにし、うんちをしてしまった場合はうんち袋に収納して家に持ち帰ります。また公園を始めとする屋外でブラッシングすることもNGです。
関連規則や法律
所有者等は、自らが飼養及び保管する家庭動物等が公園、道路等公共の場所及び他人の土地、建物等を損壊し、又はふん尿その他の汚物、毛、羽毛等で汚すことのないように努めること家庭動物等の飼養及び保管に関する基準・共通基準2
公園、広場、キャンプ場、スキー場、海水浴場、道路、河川、港湾その他の公共の場所を汚さないようにしなければならない廃棄物の処理及び清掃に関する法律・第5条
公共の利益に反してみだりにゴミや鳥獣の死体その他の汚物または廃物を捨ててはいけない軽犯罪法・1条27

飼い主がボーっとするのは違反

 犬の散歩をさせる飼い主はスマホをいじりながら漫然と歩いていてはいけません。常に犬の動きに注意を払い暴走してしまわないよう動きを制御します。
関連規則や法律
犬の所有者等は、犬を道路等屋外で運動させる場合には犬の突発的な行動に対応できるよう引綱の点検及び調節等に配慮すること家庭動物等の飼養及び保管に関する基準・犬の飼養及び保管に関する基準5-2

犬のうるさい鳴き声は違反

 キャンキャンと鳴きわめく犬の声も出させないよう努めなければなりません。この基本ルールは屋内のみならず、屋外においても求められます。また飼い主が民家の前で立ち止まって長話をするということも場合によっては騒音とみなされます。
関連規則や法律
犬の所有者等は、頻繁な鳴き声等の騒音又はふん尿の放置等により周辺地域の住民の日常生活に著しい支障を及ぼすことのないように努めること家庭動物等の飼養及び保管に関する基準・犬の飼養及び保管に関する基準3

多頭引きの散歩は要注意

 複数の犬を同時に散歩させる「多頭引き」をしている際にトラブルが発生した場合、飼い主の正当性が認められる事はほぼありません。
関連規則や法律
犬の所有者等は、犬を道路等屋外で運動させる場合には犬を制御できる者が原則として引き運動により行うこと家庭動物等の飼養及び保管に関する基準・犬の飼養及び保管に関する基準5-1

自転車に乗っての散歩は違反

 自転車に乗った状態で犬を散歩させる事は出来ません。片手でリードを持ちながら自転車を運転するのは道路交通法違反です。またリードを自転車につないで運転すると犬の動きを制御する「引き運動」ができなくなり、動物愛護法違反になります。例外は、人とすれ違うことがほとんどないだだっ広い河川敷を走行するようなときだけです。
関連規則や法律
犬の所有者等は、犬を道路等屋外で運動させる場合には犬を制御できる者が原則として引き運動により行うこと家庭動物等の飼養及び保管に関する基準・犬の飼養及び保管に関する基準5-1

散歩する時間には気をつけて

 日が落ちてあたりが暗くなり、見通しが悪くなった状況における散歩は十分注意しなければなりません。
関連規則や法律
犬の所有者等は、犬を道路等屋外で運動させる場合には運動場所、時間帯等に十分配慮すること家庭動物等の飼養及び保管に関する基準・犬の飼養及び保管に関する基準5-3

大型犬の散歩には気をつけて

 大型犬を散歩させる場合は、人通りの多い場所や人の往来が激しい時間をなるべく避けて散歩させるようにします。
関連規則や法律
大きさ及び闘争本能にかんがみ人に危害を加えるおそれが高い犬を運動させる場合には、人の多い場所及び時間帯を避けるよう努めること家庭動物等の飼養及び保管に関する基準・犬の飼養及び保管に関する基準5-4

犬の一時係留には気をつけて

 散歩の途中でコンビニなどに立ち寄る際、一時的に犬をどこかにつないでいる人がいますが、なでようと近づいた人に噛み付いてしまった場合は、「その人が犬を蹴飛ばした」など極端な状況を除いて飼い主の管理責任となります。
関連規則や法律
犬をけい留する場合には、けい留されている犬の行動範囲が道路又は通路に接しないように留意すること家庭動物等の飼養及び保管に関する基準・犬の飼養及び保管に関する基準4-2
大原則がわかったら、具体的な状況におけるルールやトラブル事例を見ていきましょう!
NEXT:集合住宅でのマナー

集合住宅におけるマナー・注意

 アパートやマンションといった集合住宅の入居率が増えることから、かつてはマイナーだったペット可物件は徐々に増え、今ではむしろペット不可の物件のほうがマイナーになりつつあります。集合エントランスから自分の部屋までという短い距離ですが、さまざまなトラブルの種が眠っていますので注意を怠ってはなりません。
集合住宅での基本ルール
アパートやマンションなどの集合住宅でも犬を連れ出すときのマナーとルールがある

エレベーターでは抱きかかえる

 集合住宅では多くの場合小型犬の飼育だけが許可されており、管理規約の中では「エレベーターに乗るときは抱きかかえること」となっているはずです。この基本ルールを守らないと、犬も飼い主もひどい怪我を負ってしまうことがあります。
マナー・注意点 エレベーターに出入りするときは必ず犬を抱きかかえた状態で。
トラブル事例:2006年・東京都  品川区のビル8Fで、住人の女性(95)に連れられていた犬が同乗者とともに突然エレベーターから飛び出した。女性は犬のロープを握ったまま箱の中に取り残され、犬とリードが8F廊下側の扉に挟まったまま上昇。リードを握っていた左手の指4本を切断した。階下に残された犬は首輪が抜けて奇跡的に無事だった。
 以下でご紹介するのは、エレベーターの扉が閉まる寸前、犬が箱の外に出てしまった時の動画です。エレベーターの上昇に伴い首吊り状態になっています。この犬は幸い一命を取り留めましたが、中には死亡してしまうケースもあります。 元動画は→こちら

犬を人に触らせない

 エレベーターの中では同じ集合住宅に暮らす人と一緒になることがよくあります。その人が犬好きの場合、反射的に犬を撫でようとすることがありますが、飼い主としては要注意です。犬が噛み付いてしまった場合、たとえ向こうが勝手に手を出してきたとしても、飼い主の側の管理が不十分だったとして責任を問われることがあります。
マナー・注意点 エレベーターに住人がすでに乗っていた場合、「お先にどうぞ」といって先に行かせる。他の住人が後から乗り込んできた場合、小型犬なら必ず飼い主が抱きかかえ、同乗者から遠ざける。中型犬の場合、ショートリードにして同乗者との間に飼い主が体を入れる。「触っていいですか」と頼まれたら「噛みますので」といって断る。
トラブル事例:2007年・東京  男性がリードを付けて紀州犬を散歩させていた際、通りすがりの男子高校生が飼い主の許可を得て犬を触ったところ、胸元や脇の下を噛まれて形成手術を受ける大けがを負った。訴訟に際して裁判官は「紀州犬は本来狩猟犬であり学生に噛み付く可能性がある事は容易に予測できた。にもかかわらず予防ための必要で有効な措置を取っておらず、相当の注意をもって管理していなかったことは明らか」とし、治療費や慰謝料など107万円の賠償を犬の飼い主に命じた。

共用部で犬を放たない

 集合住宅には廊下、エントランス、駐車場、ゴミ捨て場など共用部と呼ばれるスペースがあります。こうしたスペースで犬を放ってしまうと、たとえ体が小さなチワワだったとしても思わぬトラブルに発展する危険性があります。
マナー・注意点 集合住宅の共用部で安易にノーリードやロングリードにしない。
トラブル事例:1981年・東京  ペットの飼育が禁止されている高齢者向けマンションの敷地内で女性が中型犬をノーリードで散歩させていた。そこへマンションに居住する高齢女性が近づき、犬と接触して転倒。左大腿骨骨折の大けがを負った。訴訟において裁判官は「高齢者向けマンションであり、犬と接触すれば転ぶ危険性があることが十分に予見できた。またノーリードで犬を放つなど飼い主としての管理義務を怠った」とし、犬の飼い主に300万円の賠償を命じた。 トラブル事例:2003年・大阪  男性が自宅からミニチュアダックスフントを散歩に連れ出そうとしたところ、犬が表に飛び出して通行中の女性の足元にじゃれつき、転倒・骨折した。女性はその後入院中に肺炎を発症して死亡した。裁判では「飼い主がリードを固定するのを忘れ、犬が女性にじゃれついたのが転んだ原因。また骨折や入院で抵抗力が弱まり、院内感染したのが死亡の一因である」とし、飼い主の男性に657万円の賠償を命じた。
慣れた場所ほど油断しやすくなりますね。過去の事例を肝に銘じて気をつけましょう。
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歩道におけるマナー・注意

 歩行者が歩道を歩く際は道路交通法の適用を受け、車道ではなく歩道または路側帯(車道と歩道の間にある歩行者エリア)を歩くよう定められています。しかし右側を歩くべきなのか左側を歩くべきなのかに関する規定はありません。
歩道での基本ルール
歩道では犬、飼い主、通行者、車や自転車の運転者などさまざまなトラブルパターンがありうる

ノーリードは絶対禁止

 犬にリードを装着しないノーリードは、犬が第三者に噛み付いてしまう危険性、犬が道路に飛び出して事故に遭ってしまう危険性、犬を追いかけて車道に出た飼い主が事故に遭ってしまう危険性を高める大変危険な行為です。
マナー・注意点 サンダルやヒールといった不安定な履き物を避け、足にしっかりと力が入るスニーカーやスポーツシューズを選ぶ。小型犬ならリストグリップ、中型犬以上はサムグリップでしっかりとリードを握り、犬の急な動きに備える。
トラブル事例:2014年・北海道  男性が土佐犬2頭を連れて白老町の海岸に散歩に出かけ、周囲を十分に確認せず1頭のリードを離した。犬は浜辺を散歩中の女性を襲い波打ち際に転倒させて水死させた。裁判では「犬が重大な危害を及ぼすおそれがあるのを知りながら綱を離した。被害者の恐怖や苦痛は察するに余りある」とし、男性に対し重過失致死罪で懲役2年6ヶ月、罰金20万円判決を言い渡した。 トラブル事例:2001年・兵庫  JR山陽線の踏切で無職の女性が12両編成の新快速電車にはねられて即死した。女性はノーリードで散歩していた犬を追いかけて踏切に入ったものとみられている。この事故で上下線合計29本が運休した。

人通りが少ない場所や時間を選ぶ

 ペットをわが子のように可愛がっている飼い主からは信じられない話ですが、厳然たる事実として世の中には犬嫌いがいます。散歩中はそうしたタイプの人間がいるということを頭の片隅に置いておかなければなりません。
マナー・注意点 犬を散歩させるときは人通りの多い時間帯、人通りの多い道を避ける。道幅に余裕がある時は前後の人からなるべく距離を置く。ロングリードにしない。
トラブル事例:2008年・愛知  歩道で男性会社員がチワワを散歩している途中、前を歩いていた男(44)が突然振り返り、無言で犬の腹部を蹴り上げた。犬は内臓破裂で死亡した。男は器物損壊容疑で逮捕され、調べに対し「犬が怖かった」と供述している。 トラブル事例:2002年・大阪  枚方市の路上で近くに住む会社員の男性(45)が犬の散歩をしていたところ、道端に駐車していた車から男が「こんな狭い道で、犬を散歩させるな」と因縁をつけてきた。会社員の男性が「こんなところに車を止めるな」と反論したところいきなり拳銃で撃たれ、左太ももにけがを負った。現場は道幅6m、歩道は1.5mだった。

車道から離れて歩く

 「車は左、人は右」という標語は、あくまでも車道と歩道の部分が明確でないときのものですので、歩道が明確な場合は道のどちら側を歩いても構いません。
マナー・注意点 散歩中は犬が車道にはみ出してしまわないよう、できるかぎり車道から離れた場所を通るようにする。リードをしっかりと握り犬の急な動きに備える。ロングリードにしない。
トラブル事例:1997年・静岡  静岡市の市道で犬を連れて歩道を散歩していた女性が道路に飛び出し走ってきた乗用車にはねられ頭を強く打って即死した。連れていた体長1mほどの犬が他の犬の鳴き声に興奮して市道に飛び出し、女性が引きずられる形で道路に出てしまったものとみられている。 トラブル事例:1996年・北海道  登別市にある国道36号で、近くに住む女性が走ってきた乗用車にはねられ頭を強く打ち、およそ5時間後に死亡した。散歩させていた犬が車道に飛び出し、それを追いかけてはねられたものとみられている。

うんちは必ず片付ける

 犬のうんちを路上に放置するという行為は、法律で禁止されているのみならず、住人の気持ちを逆なでしてトラブルの原因になるものです。民家の前でこれをした場合、「あなたの家はトイレだ」と言っているのと同じことですので、家主が怒るのも当然でしょう。
マナー・注意点 犬のフンは家で済ませてくる。散歩中にもよおしてしまった場合は人通りの少ない場所で行う。犬が出したうんちは必ずうんち袋で回収して自宅で処理する。
トラブル事例:2011年・東京  墨田区の路上で女性が犬を散歩中、路上で犬がフンをした事をめぐって近所の30代の男性と口論になり、女性の夫である元大相撲大関のタレントが男性を突き飛ばした。警察は暴行容疑でタレントを書類送検した。 トラブル事例:2000年・福岡  福岡市に暮らす無職の女性(70)を殺害したとして、警察は配管工の男(48)を殺人と死体遺棄の疑いで逮捕した。調べに対し男は、女性の家の前で犬がフンをしたのを注意されたので腹が立って首を絞めて殺したと供述している。

おしっこは放置しない

 うんちに比べて軽視されがちですが、犬のおしっこもまたさまざまなトラブルの元になりえます。犬の散歩とトイレタイムを一緒にしている人は、まず家の中でおしっこを済ませてから散歩に出かけるという習慣に変えなければなりません。
マナー・注意点 犬のおしっこは家で済ませてくる。散歩中にもよおしてしまった場合は人通りの少ない場所で行う。携帯しているマナー水をかけおしっこの痕と匂いを洗い流す。
トラブル事例:2016年・大阪  池田市の市営公園で照明柱が腐食して倒れ、当時小学4年生の女児が両手を挟まれ骨折した。市が事故の原因を調査したところ、犬の尿が柱の根本に何度もかけられた結果、柱の地中部分の腐食が進んだ可能性があるとの結論に至った。市から依頼を受けた民間研究機関が柱の根元付近の土壌を分析したところ、柱から約2m離れた場所にある土壌から通常より9倍も高い濃度のアンモニアが検出された。 トラブル事例:2017年・埼玉  さいたま市浦和区の道路で道路標識が突然倒れて出勤途中の女性が左腕に軽いケガを負った。標識は支柱の根元から折れており、散歩中の犬のおしっこなどで腐食した可能性があると見られている。

自転車に乗っての散歩は違反

 片手でリードを持ちながら自転車を運転するのは道路交通法違反、犬に対して引き運動による制御ができない状態は動物愛護法違反です。犬にとっても飼い主にとっても危険な行為ですので原則としてやってはいけません。
マナー・注意点 原則として散歩に自転車を用いない。運動量が豊富な犬を散歩させるときは、人通りの少ない河川敷などを選ぶ。
トラブル事例:1979年・愛知  犬の飼い主が自転車のハンドルに鎖を結んで犬を散歩させていたところ、首輪が抜けて犬が脱走してしまった。犬はたまたま通りがかった男子高校生に駆け寄り、左足のふくらはぎに噛みついて12日間の入院を要する大けがを負わせた。訴訟に際し裁判官は「鎖を手で持つことなく自転車のハンドルに結んでいたため、首輪が抜けた後に鎖を自転車から外すのに余分な時間がかかったのは飼い主の過失である」とし、慰謝料、治療費、入院期間中の雑費、弁護士費用の一部を損害として認め、合計60万円の賠償を犬の飼い主に命じた。 トラブル事例:2008年・福岡  市道で男性(83)が自転車で転倒しているのを通りがかったタクシーの運転手が発見した。男性は病院に運ばれたが約1時間半後、吐瀉物が気管に詰まったことが原因で死亡した。自転車の前輪に犬のリードが絡まったことが転倒の原因とみられている。 トラブル事例:1992年・東京  中学生が自転車の荷台に犬をつないで散歩中、犬が横に広がって歩いていた。自転車との間にぴんと張ったリードが歩行中の女性の足元に絡み、転んで頭の骨を折る重傷を負った。監督不行き届きとして中学生の親に対し105万円の支払いが命じられた。

犬の鳴き声に注意

 吠えるのは犬の本分ですが、不特定多数の人がいる公共の場では、できるかぎり鳴き声を抑えることが必要となります。
マナー・注意点 犬が吠えないよう事前にしっかりとしつけておく。犬が急激に興奮しないよう、さまざまな音に事前にならせておく。
トラブル事例:2001年・神奈川  茅ヶ崎市の路上で犬を散歩させていた男性に、茅ヶ崎消防署員の男(52)が「犬が吠えてうるさい。しつけがなっていない」などと因縁をつけ、顔を殴るなどして2週間のけがを負わせた。 トラブル事例:2001年・神奈川  股関節の疾患により杖を用いなければ歩けない70代の女性が、自宅前の公道で右手に杖をもち、左手にミラーボールの柱をつかんで立っていた。そこへリードを付けて散歩中だった1歳半のラブラドールレトリバー近づき、女性の背後から「ワン!」と一声大きな声を出した。女性は驚いてポールを離しその場に仰向けに倒れて左足の脛(すね)を骨折する重傷を負った。
 訴訟において裁判官は「犬がみだりに吠えることがないよう、飼い主は犬を調教すべき注意義務があった。動物を飼っているものはその飼育から生じる一切の責任を負担すべきであり、また犬を調教することによって達成することも可能であったはず」とし、犬の飼い主に対して438万円の賠償を命じた。

大型犬の散歩に注意

 大型犬を散歩させるときは、通行人のじゃまにならない時間帯を選ばなければなりません。また犬の動きを十分に制御できる人間が散歩を管理しなければなりません。
マナー・注意点 大型犬の多頭引きは控える。人通りの多い場所や時間帯は避ける。飼い主の最低条件は、犬が全力で引っ張っても抑えられるだけの体力を備えていること。
トラブル事例:1962年・東京  小柄な男性が大型犬グレートデーン2頭を同時に散歩中、1頭が9歳の女の子に飛びつき骨折と36針の大けがを負わせた。訴訟に際し裁判官は「犬を屋外に連れ出すものは、万が一犬が興奮した際にも十分これを制御できるよう自分の体力、技術の程度と犬の種類、その性癖などを考慮し、通行する時間、犬を引っ張る方法、頭数について注意を払うべき義務がある。犬を1頭ずつ夜間や早朝など人通りの少ない時に運動させていれば事故を避けることができた」とし、男性は業務上過失致傷罪に問われた。

夜の散歩は明るい場所を

 日中の気温が上がる夏場は散歩の時間を夜にずらすことがあります。また犬が大型の場合、人通りの多い日中の散歩を避けてあえて夜に散歩することがあります。こうした夜の散歩は見通しが悪くなり、歩行者の姿が自動車や自転車の運転手からは見えにくくなってしまうことがありますので要注意です。
マナー・注意点 夜間に散歩するときは飼い主の衣服、犬の首輪、リードなどに反射材やライトをつけ、運転手からの視認性を高める。
トラブル事例:1970年・北海道  午後8時ごろ、男性が中型犬に1.5mのリードをつけて引っ張られるように散歩させていたところ、民家の裏木戸の下に出ていた住人の足に噛み付き左アキレス腱を負傷させた。訴訟に際し裁判官は「リードを短く持って常に制御しやすい状態で散歩させていなかった。また暗い夜間は人影の存在に気を配るべき注意義務があった」とし、犬の散歩をさせていた男性に賠償を命じた。 トラブル事例:2008年・愛知  犬を連れて市道を散歩中の男性に自転車が衝突して死亡した。坂道をスピードを出してくだっていたこと、および辺りが暗かったにもかかわらず前方の安全確認を怠っていたことなどから警察は、自転車に乗っていた市内の高校2年生の少年(17)を重過失致死容疑で書類送検した。 トラブル事例:2017年・神奈川  鶴見川沿いに設置された遊歩道で犬の散歩をしていた女性(79)が、向かってきた自転車と正面衝突して死亡した。現場には街灯が設置されておらず、夜間の見通しは非常に悪い区間だった。警察は過失致死容疑で自転車を運転していた男子中学生(14)から事情を聞いている。

犬をつないだままにしない

 犬を柱や木につないだままコンビニで買い物をしたりスーパーで買い物をしたりしている人がいますが、その間に犬が誰かを噛んでしまった場合、たとえその人が勝手に近づいてきた結果だとしても、飼い主が無罪放免になるということはありません。飼い主は、犬の占有者として「相当の注意」を払う必要があります。
マナー・注意点 基本的に屋外で犬をつなぎっぱなしにしない。やむを得ない場合はリードを短くして人が通る通路に届かないようにする。万が一に備えて口輪を装着する。
トラブル事例:1962年・愛知  1歳9ヶ月の幼児が母親が目を離した隙に袋小路の奥にある民家の玄関脇に鎖で繋がれていた犬に近づき耳を噛まれた。犬は普段おとなしく、鎖でしっかりとつながれていたが、裁判では「何らかの拍子に子供が近づいて危害を加えることも十分想定できる。そのような事故を起こさないような万全な手段をとることが犬の占有者に求められる相当の注意義務である」とし、占有者責任(民法718)として犬の飼い主に損害賠償を命じた。 トラブル事例:2003年・広島  理容店の車庫内に係留されていた中型犬に触ろうと学校帰りの少女が近づき、犬に触ろうと顔を近づけた所、鼻のあたりを噛まれ上唇に傷を負った。裁判では、外部との境となるシャッターから犬までの距離がわずか43cmしかなく、誰でも容易に犬に触れる状態だったのは飼い主の管理不足とし、犬の飼い主に対して治療費などの賠償を命じた。なおこの飼い主は「犬に触らないでください」という看板を設置していたが、それだけでは不十分と判断された。
不特定多数の人たちが行き交う道路はトラブルが起こりやすい場所。自分が加害者にも被害者にもならないよう注意が必要です。
NEXT:踏切でのマナー

踏切におけるマナー・注意

 散歩の途中に踏切がある場合、飼い主はとりわけ犬が脱走してしまわないよう注意する必要があります。踏切に関連した事故は非常にたくさんありますが、すべてに共通しているのは「線路内に立ち入ってしまった犬を助け出そうとして飼い主が電車に轢かれる」というものです。
マナー・注意点 散歩ルートから踏切自体を外す。犬と踏切を渡る必要があるときは必ずショートリードにし、犬が突然強い力で引っ張ってもリードを離してしまわないよう、足を踏ん張りしっかりとリードを握る。
トラブル事例:1994年・大阪  JR阪和線の踏切で、近くに住む女性が普通列車にはねられて死亡した。踏切内に侵入した犬を追いかけ、遮断機をくぐって線路内に立ち入ったものとみられている。 トラブル事例:1998年・奈良  近鉄大阪線の踏切で、犬を散歩させていた男性が6両編成の特急にはねられて即死した。踏切内に迷い込んだ犬を助けようと遮断機を持ち上げて線路内に入ったものとみられている。男性が胸に抱いていた犬も死亡した。 トラブル事例:1999年・岐阜  長良川鉄道線路内で、近くに住む男性が1両編成のレールバスにはねられ全身を強く打って間もなく死亡した。男性が散歩させていた犬が線路内でふんをしたため、それを片付けようとしてはねられたものとみられている。 トラブル事例:2006年・埼玉  高崎線の踏切で、近くに住む女性が10両編成の普通電車にはねられ頭などを打って死亡した。散歩中に逃げた犬を追いかけ遮断機の降りた踏切内に入りこんだものと見られている。この事故で上下線合計14本が運休した。 トラブル事例:2017年・岐阜  名古屋本線の踏切で、近くに住む大学准教授の女性が2両編成の普通電車にはねられ頭を強く打って死亡した。踏切内で座り込んでしまった犬を連れ戻そうとし線路内に入ったものとみられている。この事故で犬もはねられて死亡し、上下線が約2時間に渡って運転を見合わせた。
踏切のそばではとりわけ脱走に気をつけましょう。人も犬もただでは済みませんので…。
NEXT:公園でのマナー

公園におけるマナー・注意

 公園には子供たちの遊び場となる小さな公園のほか、災害時の緊急避難所となるかなり大きな防災公園などがあります。こうした公園は飼い主同士や犬同士の交流の場として重要ですが、トラブルの可能性がゼロというわけではありません。
公園での基本マナー
公園をドッグランと勘違いして犬の散歩をしてはいけない

拾い食いは絶対させない

 公園内でよく見られるトラブルは愉快犯による毒餌(どくえ)事件です。公園は犬にとっても飼い主にとっても憩いの場ですが、動物虐待者にとってはターゲットにしやすい場所という側面も持っています。
マナー・注意点 地面に変なものが落ちていないかどうかを常にチェックする。公園内に落ちてるものは絶対に拾い食いさせない。事前に拾い食いのしつけをマスターさせておく。
トラブル事例:1996年・東京  世田谷区にある駒沢オリンピック公園周辺で、散歩中の犬が原因不明の神経中毒症状を1頭が死亡、1頭が危篤状態に陥った。犬の飼い主の主婦は「散歩中、一瞬離した間に何かを拾い食いした」と話している トラブル事例:1996年・神奈川  藤沢市にある公園内で散歩中の犬2頭が路上に落ちていたものを拾い食いし、そのうち1頭が死亡した。 トラブル事例:2001年・岡山  倉敷市にある公園内で、散歩中の犬2頭が草むらに落ちていたちくわを食べ2頭ともその日のうちに死んだ。殺虫剤の成分が検出されたことから警察は、何者かが毒入りちくわを放置していた疑いが強いとみて捜査を進めている。 トラブル事例:2001年・大阪  寝屋川市の公園内で男性が犬を散歩させていたところ、落ちていたパンくずのようなものを犬が拾い食いし、直後に死亡した。警察は何者かが毒物をパンくずに付着させておいた可能性があるとみて、器物損壊容疑で調べを進めている。 トラブル事例:2002年・埼玉  さいたま市の路上を散歩していた犬が道路脇に落ちていたものを拾い食いし、約40m歩いた後に、けいれん発作起こして死亡した。警察は毒物入り食品を食べた疑いがあるとして動物愛護法違反容疑で調査を進めている。 トラブル事例:2003年・大阪  八尾市にある緑地公園内で、落ちていた肉片などを食べた犬3頭と猫3頭が相次いで死亡した。警察は毒物が仕掛けられていた可能性が高いと見て器物損壊容疑で捜査を進めている。 トラブル事例:2007年・大阪  摂津市のさくら公園内で青い粉がかかったライスが新聞紙の上に置かれていた。これを食べた犬2頭が死んだほか、同公園内やその周辺で猫や鳩の死骸も確認された。警察は器物損壊容疑で捜査を進めている。 トラブル事例:2001年・大阪  大阪市平野区にある公園内で石の上に置かれていた乾麺に振りかけられていた粉を舐めた犬が泡を吹き、けいれんして苦しみだした。すぐ病院に急行したものの犬は間もなく死んだ。警察は何者かが毒物をわざと放置した疑いがあるとみて傷害と器物損壊容疑で調べを進めている。 トラブル事例:2008年・三重  男性が桑名市の内堀公園で犬を散歩させていたところ、釣り糸のついたはんぺんが置かれていることに気づいた。片付けようとしたところ、別の場所に置かれていたはんぺんを犬が食べてしまい、付いていた釣り針とはんぺんを飲み込んでしまった。警察は犬などを怪我させる目的で仕掛けられた悪質ないたずらとして調べを進めている。

ノーリードは禁止

 公園の入り口に「犬の放し飼い禁止」と書かれているにもかかわらず、ドッグランや私有地と勘違いしてリードを離し、犬を自由に行動させている飼い主をよく見かけます。
マナー・注意点 公園をドッグランと勘違いしない。
トラブル事例:2003年・東京  犬の放し飼い禁止と書かれた掲示板がある公園内で専業主婦が公園内のサイクリングロードを自転車で走行中、リードをつけていなかった大型犬と衝突。転倒した挙句、左大腿骨骨折、頚椎捻挫、左ひじ挫傷の大怪我を負い、1ヶ月半ほど通院治療した。訴訟に際して裁判官は「リードにつないでいなかった以上免責される事は無い」とし、通院治療費、事故後の謝罪が不十分であることに対する慰謝料など合計82万円余の賠償を犬の飼い主に命じた。

飼い主同士のトラブルに注意

 犬の飼い主は良識に満ちた人ばかりではありません。ルールをそもそも知らないようないい加減な人、ルールを知っているのに守ろうとしない適当な人など様々です。
マナー・注意点 マナー違反の人間を見た場合は基本的に関わらないようにする。公園内で大型犬を放し飼いにするとか、飼い犬を蹴飛ばすなど度がすぎる場合は、直接注意するのではなく保健所や動物愛護センターに相談してみる。散歩の時間をその人物とずらす。
トラブル事例:1990年・熊本  犬の飼い主同士が犬のことで口論し、一方が相手を投げ飛ばして死なせたとして、警察は菊池郡に暮らす男(43)を殺人で現行犯逮捕した。容疑者が犬3頭を連れて散歩中、被害者が連れていたノーリードの犬がじゃれついてきた。後からやってきた被害者が「うちの犬になんばすっとか」と因縁をつけたことから口論に発展。取っ組み合いのけんかとなり、容疑者が男性を投げ飛ばしてコンクリートの地面に頭を強打させ死亡させた。 トラブル事例:1996年・福岡  自分が連れていた犬2頭をけしかけ、他の犬や飼い主を襲わせたとし、警察は北九州市の元暴力団組員の男(56)を傷害容疑で逮捕した。男は犬を連れて散歩している人を見るたびに「負けたら承知せんぞ」などとけしかけていたという。 トラブル事例:2016年・熊本  83歳の男性が犬を散歩させていた所、近所に住む男性が「犬の放し飼いをするな」などと注意した。逆上した男は男性を包丁で刺して軽症を負わせ、傷害の現行犯で逮捕された。調べに対し「犬のことを言われて腹が立った」と容疑を認めている。

他の犬との遭遇に注意

 犬の中にはしつけができておらず、他の犬に危害を加える可能性が高いものがいます。公園内には様々な犬が集まりますので、そうした犬をいち早く見極め、なるべく関わらないよう努めなければなりません。
マナー・注意点 他の犬とコンタクトするときは、ショートリードにして犬の動きを抑制する。危険と判断された場合は、犬と犬の間に素早く自分の体を入れてバリケードにする。
トラブル事例:2002年・大阪  大阪市平野区の公園で女性が犬を散歩させていたところ、ノーリードの大型犬が近づいてきてうなり声を上げた。恐怖を感じた女性が犬を遠ざけようとリードを引っ張った際、バランスを崩して転倒し、右足を骨折して後遺症が残った。裁判では「犬を繋いでおく注意義務があった」とし、大型犬の飼い主に869万円の支払いを命じた。 トラブル事例:2009年・福岡  福岡県中間市にある河川敷で男性がグレートデン3頭をノーリードで遊ばせていた所、そのうちの1頭が子犬を散歩させていた女性の肘に噛み付き軽症を負わせた。男性は前にも同じ事件を起こし、執行猶予が付いた状態だったため、今事件において重過失傷害罪が認められ懲役8ヶ月が言い渡された。

犬の脱走に注意

 広々とした公園に着くと気持ちが大きくなり、手元に対する注意がおろそかになりがちです。その結果、犬の急な動きに体が対応できずリードを離してしまうということがよくあります。
マナー・注意点 ロングリードにしてもループハンドルをしっかり握って犬の急な動きに備える。他の犬が向こうからやってくる時など犬が明らかに興奮することがわかっているときはショートリードに持ち変えて犬の動きを制御する。
トラブル事例:2012年・山梨  土佐犬に首輪とリードをつけて散歩中に首輪が抜けて男性に飛びかかった。首筋をかまれた男性は搬送された先の病院で死亡した。 トラブル事例:1991年・大阪  胴体に巻いていた散歩用のロープが外れ、紀州犬が脱走した。約30分の間に近くに住む主婦と犬を連れて散歩中だった女性に次々と噛みついた。

多頭引きの散歩は要注意

 歩道を散歩するも同様ですが、複数の犬を同時に散歩させる「多頭引き」の条件は、犬が全力で引っ張ったときに飼い主が十分に動きを制御できるということです。この鉄則を守らないと犬や通行人に危険が及んでしまいます。
マナー・注意点 力の強い犬を2頭以上同時に散歩させない。やむを得ない場合は人通りの少ない時間帯や場所を選ぶ。
トラブル事例:1999年・愛知  夜7時ごろ、66歳の男性が散歩させていた中型犬3頭のうちの1頭が、向こうからやってきたポメラニアンの方へ突然走り出した。前のめりになって転びそうになった男性は弾みでリードを離し、解き放たれた犬はポメラニアンに噛みついた。ポメラニアンはその後かみ傷が原因で死亡した。訴訟に際し裁判官は「一度に中型犬3匹を連れて散歩させていたこと、犬の動作を十分制御できる体勢を取っていなかったこと、実際にリードを離してしまったことなど複数の過失が認められる」とし、男性に対し23万円の賠償を命じた。
公園は広々としているのでついつい気持ちまで緩くなってしまいます。ドッグランと勘違いしないようにしましょう。
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ドッグランにおけるマナー・注意

 犬のリードを離し自由に走り回ることができる場所としてドッグランがあります。自治体が運営している無料のものから民間が運営している有料のものまで様々です。地面には人工芝、天然芝、ウッドチップなどがあります。
基本的な利用条件
  • 飼い主の身分証明書と事前登録
  • 犬の登録(鑑札を持っていること)
  • 狂犬病予防注射(注射済票をもっていること)
  • 感染症のワクチンを接種していること(ワクチン証明書・5種以上が多い)
基本的なマナーとルール
  • 発情中の犬は使用禁止
  • マウンティングする犬は使用禁止
  • 攻撃的な犬は使用禁止
  • 無駄吠えがうるさい犬は使用禁止
  • 首輪かハーネスを着用
  • 飼い主もランエリアに入り備える
  • 体型別エリアは厳守
  • 感染症にかかっている犬は使用禁止
  • 寄生虫を持っている犬は使用禁止
  • うんちは持ち帰る
  • 穴掘り禁止
ドッグランにおけるマナー・注意
ドッグランでは犬同士のほか飼い主同士のトラブルも結構多い

犬同士の衝突に注意

 ドッグランには体の大きさがバラバラな様々な犬が集まります。犬同士の交流の場としては最適ですが、小型犬と大型犬とがコンタクトするフリーエリアなどにおいては、咬傷事故や衝突事故の危険性を考慮しなければなりません。万が一事故が起こり裁判沙汰にまで発展した場合は、大型犬の飼い主に対しより重い管理責任が求められます。
マナー・注意点 小型犬のエリアと中・大型犬エリアに分かれている時は、必ずこのエリア区分に従う。エリア区分をしていない場合はなるべく使用を避ける。もしくはリードにつないで自由行動させない。
トラブル事例:1998年・東京  北区に暮らす女性がヨークシャーテリアをノーリードで散歩させていたところ、散歩中のドーベルマンと遭遇した。テリアの方からドーベルマンに近づいてきたため、飼い主がリードを引っ張って制御しようとしたものの間に合わず、テリアに噛み付いて殺してしまった。裁判では「ドーベルマンは体が大きくおとなしいとは言えない。飼い主が相当の注意を払っていたとは認められない」とし、ドーベルマンの飼い主に10万円の支払いを命じた。なおこの飼い主は事件が起こる前、テリアの飼い主に対し犬をリードにつなぐか抱きかかえるよう求めていたが、それだけでは不十分と判断された。 トラブル事例:2015年・大阪  堺市の女性がチワワを散歩中、ノーリードのシェパードに衝突されて死んだ。裁判では「小柄なチワワが大柄のシェパードに突然ぶつかられたため、急激な興奮による心不全で死亡した」とし、シェパードの飼い主の管理が不十分だったして、慰謝料を含むおよそ22万円の支払いを命じた。

犬と人間の衝突に注意

 犬が走り回るエリア内に飼い主が入るときは、飼い主自身も犬との衝突に気を付けなければなりません。飼い主が犬と一緒に追いかけっこをしているときに他の犬とぶつかって怪我をしても、状況によっては「犬のエリアに入るあなたが悪い」と言われてしまうことがあります。
マナー・注意点 基本的には飼い主が犬のランエリアに入って動き回らない。犬が興奮しすぎたり他の犬とトラブルに発展しそうなときは周囲に気を配りながら近づく。
トラブル事例:2007年・東京  パピヨンを飼っている女性が、ドッグランのフリーエリア内に入り、犬が後ろからついてくるのを振り返りながら小走りで中央付近を走っていた。そこへ追いかけっこをしていた大型犬2頭が衝突して女性は転倒。右足を骨折したほか消えない傷跡が残ったとし、大型犬の飼い主に対し損害賠償を請求した。判決では「このような場所に飼い主を始めとした人間が立ち入ることは危険な行為であり、異常な事態にあたる。大型犬の飼い主はこのようなイレギュラーな事態まで予測する必要は無い」とし、女性の請求を棄却した。 トラブル事例:2016年・兵庫  神戸・六甲アイランドにあるドッグランでミニチュアダックスフントを遊ばせていた女性が、追いかけ合っていた大型犬2頭に相次いで追突され、転倒して頭を打った。裁判では「被害女性にも不測の事態に対する不注意があった」として過失を認める一方、大型犬の興奮をしっかり管理できなかった飼い主の過失は重いとし、過失相殺により減額された約104万円の賠償が命じられた。

人工芝のクッション材に注意

 ドッグランの地面には天然芝、人工芝、ウッドチップなどのバリエーションがあります。しかしランに人工芝が敷かれている場合、パイル(人工の草)の隙間に黒いつぶつぶがないかどうかを確認しなければなりません。
マナー・注意点 緩衝材にゴムチップが用いられているかどうかを確認する。ある場合は素材について管理者に確認する。
クッション剤の危険性  人工芝にはクッション性を高めるために用いられる充填剤には廃タイヤなどを細かく砕いたものが用いられる。しかしこうしたタイヤにはベンゼン、カーボンブラック、鉛などが含まれており、カーボンブラックと鉛は「ヒトに対する発癌性が疑われる」とされている(IARC基準)。 ドッグランで用いられている人工芝に発ガン性? 人工芝とその下にしかれる充填剤

感染症に注意

 ドッグランの基本ルールでは「おしっこをしたら水をかける」「うんちをしたら飼い主が持ち帰る」とされています。しかしこうしたルールは100%守られないというのが世の常です。その結果、犬たちが楽しく駆け回っている間に地面に残された汚物が足や被毛に付着し、何らかのきっかけで口に入ってしまう可能性が高まります。
マナー・注意点 犬のうんちを見かけたら自分の犬のものであれ他人の犬のものであれすぐに片付ける。糞便を口にしないよう気を付ける。帰宅したら犬の足をよく拭く。犬がランの上で転げ回ったら被毛も含めてきれいにする。他の犬になめられたりおしっこをかけられていないかよく見ておく。
原虫や線虫への感染  2010年、カナダのカルガリーで行われた調査で、ノーリードで遊べる公園に行く頻度が高ければ高いほど、原虫や線虫に感染する確率が高くなるという傾向が明らかになった。調査の対象となったのは市立公園を訪れていた犬の飼い主645名。アンケート調査を経て選抜さした355頭の犬から糞便を採取して検査にかけた結果、「公園を訪れる頻度」、および「訪れる公園の数」と、「ランブル鞭毛虫」(ジアルジア)、および「クリプトスポリジウム原虫」(クリプトスポリジウム)の感染率との間に正の相関が見つかった。またノーリードで遊べる状況において感染率が高まるとも。こうした事実から研究者は、感染を予防するためには、感染源となりうる糞便を園内に放置しないことが重要であると強調してる。Dog-walking behaviours affect gastrointestinal parasitism in park-attending dogs ジアルジア症を引き起こすランブル鞭毛虫、およびクリプトスポリジウム原虫のオーシスト 病原菌の感染  2008年、東京にあるレンタル犬サービス会社の所有する59頭のうち18頭からブルセラ菌が検出され、38頭から疑陽性の反応が出た。またドッグカフェ、ドッグラン、ペットホテルなど同社の施設を利用した飼い犬数等からも疑陽性の反応が出た。同社は五反田と浦安にある店舗を閉鎖し、動物愛護相談センターや保健所に報告したが、集団発生した原因は特定できなかった。
ドッグラン利用者の中にはマナーを守らない自分勝手な飼い主もいます。しっかりとクレーム処理してくれる管理人のいるところのほうがよいでしょう。またランから帰宅したときの足や被毛の拭き取りはとりわけ念入りに行うようにします。