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エンドウ豆~安全性と危険性から適正量まで

 ドッグフードのラベルに記された「エンドウ豆」。この原料の成分から安全性と危険性までを詳しく解説します。そもそも犬に与えて大丈夫なのでしょうか?また何のために含まれ、犬の健康にどのような作用があるのでしょうか?
成分含有製品 ドッグフードにどのような成分が含まれているかを具体的に知りたい場合は「ドッグフード製品・大辞典」をご覧ください。原材料と添加物を一覧リスト化してまとめてあります。

エンドウ豆の成分

 エンドウ豆(pea)はマメ科の一・二年草。さやが硬いタイプは「硬莢種」(こうきょうしゅ)と呼ばれ、煎り豆、煮豆、餡、うぐいす豆といった形で食されます。一方、柔らかいタイプは「軟莢種」(なんきょうしゅ)と呼ばれ、未熟のさやがサヤエンドウ、未熟の種子がグリーンピースとして食されます。 ドッグフードの成分として用いられる「エンドウ豆」(硬莢種) ドッグフードの成分として用いられる「エンドウ豆」(軟莢種)  スナップエンドウは硬莢種と軟莢種のちょうど中間的なタイプで、さやが柔らかいままグリーンピースのような種子を形成します。

エンドウ豆は安全?危険?

 エンドウ豆を犬に与えても大丈夫なのでしょうか?もし大丈夫だとするとどのくらいの量が適切なのでしょうか?以下でご紹介するのはエンドウ豆に関して報告されている安全性もしくは危険性に関する情報です。

ヴィシリン(ビシリン)

 ヴィシリン(ビシリン, vicilin)はマメ科の植物が含むグロブリンの一種。エンドウマメやレンズ豆などに多く含まれています。完全には解明されていないものの、このヴィシリンおよび類似物質であるコンヴィシリンが豆アレルギーの原因物質(アレルゲン)になっているのではないかと推測されています出典資料:R. Sanchez‐Monge, 2004

ファビズム

 ファビズム(favism)とはグルコース-6-リン酸脱水素酵素欠損症の通称。性染色体であるX染色体上にある遺伝子の変異により、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼと呼ばれる酵素を生成できなくなくなります。
 患者数は世界で4億人に達すると言われ、ヒトの酵素欠損症としては最多だと推測されています。酵素の欠落により赤血球の細胞膜で活性酸素を処理できなくなり、結果として細胞膜が損傷を受けてすぐに溶血性貧血を起こすのが特徴です。
 ファビズムを患う人の中にはエンドウ豆を食べると溶血性貧血や急性腎不全を起こしてしまう人がいます。哺乳類では人間のほかウマにおいて確認されていますが、犬においては症例が確認されていません。念のため記しておきます。

グレインフリーとの関係

 2018年7月、アメリカ食品医薬品局(FDA)は一般的に「グレインフリー」と名の付くドッグフードと、拡張型心筋症との間に因果関係があるかもしれないとの警告を出しました。グレインフリーとは、フードの原料からとうもろこしや小麦と言ったメジャーな穀類を意図的に除外したドッグフードのことです。
 健康志向ブームを受けて年々人気を増していますが、メジャーな穀類の代わりに用いられているマイナーなタンパク源がタウリン欠乏症を通じて犬の拡張型心筋症を引き起こしているのではないかと疑われています。そして心筋症を発症した犬が食べていたフードには「エンドウ豆」が多く含まれていたと言います。現在も調査中で断定的なことは言えませんが、念のため頭の片隅に置いておいた方が良いでしょう。
 グレイフリーと心筋症との関係性については以下のページでも詳しく解説してありますのでご参照ください。エンドウ豆とDCMとの関係に焦点を絞り、「フードミクス解析」を通して行われた2021年の最新調査も紹介してあります。 グレインフリーのドッグフードと犬の拡張型心筋症の関係 グレインフリーのドッグフードはやはり犬の心臓に悪い? 【2019年2月のFDA報告】グレインフリーのドッグフードと拡張型心筋症との関係性 犬の拡張型心筋症(DCM)の原因食材としてエンドウ豆が浮上
犬におけるエンドウ豆の安全性、危険性、および適正量に関してはよくわかっていません。