トップ愛犬家の基本捨て犬を引き取るには?

捨て犬や保護犬の引き取り方・完全ガイド

 何らかの理由で施設に保護された犬たちを引き取る際の方法や手順を詳しく解説します。保護犬たちとはどこで会えばよいのでしょうか?また里親になるために必要な条件とは何なのでしょうか?

犬を引き取る準備をする

 まずは犬を引き取る準備です。「捨てられた犬や猫を1頭でも救いたい!」という動機自体は素晴らしいですが、パートナーとして動物を受け入れる様々な準備が出来ていないと、共同生活はどこかで空中分解してしまいます。事前に必ずシミュレーションしておきましょう。

犬と暮らす心の準備をする

 まずは犬を飼う前に必要な条件をクリアすることが大前提です。
 一度犬を飼ってしまうと、ずっと犬と一緒に暮らすこととなります。寂しい時や退屈な時だけ都合よく犬が登場するわけではありませんし、ロボット犬「AIBO」のように食餌やトイレの世話が不要というわけでもありません。犬は飼い主によるお世話が必要な生き物であるという当たり前の事実を、事前にしっかりと肝に銘じておく必要があります。
 またそもそも「犬を飼いたい!」と言う願望の根底には何があるのでしょうか?ご自分の気持ちを整理するためにも、犬を飼う前の心構えをご一読下さい。
 心の準備としてはもし今犬を飼っていたら、自分はどう感じるだろうか?という意識を常に持ちながら日常生活を送ってみましょう。外回りでくたくたになって今すぐにでもベッドに入りたいとき、恋人と映画に出かけるとき、連休を利用して家族で旅行するとき…などありとあらゆる状況と「犬を飼っている」という条件とを掛け合わせて頭の中でシミュレーションしてゆき、3~6ヶ月様子を見ます。
 こうしたシミュレーションを繰り返し、もし「やっぱりちょっと負担だなぁ…」とか「うわ面倒くさいなぁ…」と感じることが多いようなら、まだ用意ができていません。お近くのドッグパークや知り合いの飼っている犬などと、たまに触れ合っていた方が犬のためでもありますし、あなたのためでもあります。
 「やっぱりどうしても犬と暮らしたい!」という強い願望と責任感が、犬を飼う際の大前提となります。

犬を飼う費用を考える

 犬を飼った場合、体重10kg未満の小型犬の場合、年間最低でも9~53万円、体重20~40kgの中大型犬の場合12~74万円超のコストがかかると見積もるのが妥当です。生活必需品の買い替えや不慮の事故、病気の治療費といった臨時の出費もありますので、しっかりとした経済的な基盤がないのに見切り発車で犬を飼い始めるのは絶対NGです。犬の飼育にかかる費用については以下のページを参考にしてください。 犬を飼う際必要な費用  日本各地で多発している「多頭飼育崩壊」には、飼い主の経済力不足が大きく関わっています。よく見られるのが「費用がなくて不妊手術をしていなかったらいつのまにか犬が増えてしまった」というパターンです。こうした事件は、犬たちを劣悪な環境下にぎゅうぎゅう詰めにして著しく福祉を損なうと同時に、飼い主のいない犬の数を増やす残酷なものです。  子犬の頃から飼い始めた場合、小型犬の寿命を15年と仮定すると生涯飼育費用は130~750万円、大型犬の寿命を10年と仮定すると生涯飼育費用は115~670万円になります。知識不足で可哀想な犬たちを出さないよう、事前にしっかりとシミュレーションし、十分な蓄えを用意しておくことが重要です。

犬を迎える体の準備をする

 どんな犬種にも散歩は必要です。基本事項は犬の散歩をご参照下さい。また、犬を飼う際に必要なペット用品については犬に必要なペット用品をご一読下さい。
 「小型犬は家の中でフリーにするだけで運動量は充分!」という風説(ふうせつ)に甘えて、全く散歩に連れ出さない飼い主がたまにいます。しかしこれは小学生から遠足を取り上げるようなもので、犬の日常生活を無味乾燥(むみかんそう)なものにしてしまいます。10分でも20分でもいいから毎日犬を屋外に連れ出し、頭と体に刺激を与えてやりましょう。なお「外を歩くよりも、ドラマの再放送でも見ながらポテチを食べていたい」という人や、「忙しくて散歩の時間を取れそうにない!」という人は、犬よりも猫を飼ったほうが無難です。詳細は姉妹サイト「子猫のへや」内の、捨て猫を引き取るには?をご参照下さい。
 犬を散歩するに当たっては、飼い主の側にも体力が必要となります。かといって急に筋力や持久力(じきゅうりょく)がアップするわけではありませんので、せめて事前の準備くらいは完了しておきましょう。
犬を迎える前の準備
  • カラーとリード
  • ウォーキングシューズ
  • 動きやすい服装
  • 犬の給水道具
  • 散歩ルートの決定
 散歩ルートの決定に際しては、GoogleMapキョリ測が便利です。特に後者には距離算定機能がついていますので散歩のシミュレーションにはぴったりです。

犬を迎える環境を整える

 犬を迎える環境の整え方に関しては犬が喜ぶ部屋の作り方犬を飼う際必要なものをご覧下さい。小型犬を譲り受ける場合は室内飼いが条件となることがほとんどですので、必要な道具やレイアウトをあらかじめ整えましょう。
 賃貸契約でペットの飼育が禁止されているのに、見切り発車で犬を飼うのは厳禁です。「ペット可」の物件を見つけて引っ越してからにしましょう。なお賃貸契約の場合「小型犬(体重5kg未満)1頭まで」 といった制約がある場合が多いので、事前に確認しておいてください。
 引っ越す際は近くに大きな公園や緑地があると散歩が楽になりますので、物件を選ぶ際の条件として念頭に置いておくとよいでしょう。先述したのGoogleMapの衛星写真などが便利です。
賃貸物件の規約に違反してペットを飼っていると、急に立ち退きを要求されるかもしれませんよ!↓三重県の事例
NEXT:里親に応募する

里親に応募する

 犬の里親に応募するにはどうすればよいのでしょうか?「子犬、譲ります」というチラシが電柱に貼り付けてある時代ではありませんので、町中を探しても時間の無駄です。代表的な窓口としては各地方自治体の動物愛護センターや保健所、及びセンターから一旦犬を譲り受けて改めて里親を募集する民間団体が挙げられます。

動物愛護センターや保健所に応募する

 各地方自治体の動物愛護センターに応募する場合、多少の違いはありますがおおむね以下のような流れで譲渡手続きが進行します。各都道府県にある動物愛護センターの場所や連絡先は犬・子犬の里親募集案内をご覧下さい。
 なお行政機関に常に犬が収容されているわけではありませんので、収容犬の有無や譲渡会の日程に関しては必ず事前に所属地域にご確認ください。また犬を動物愛護センターや保健所から譲り受けるときの特徴や注意点、および社会的な意味については以下のページでも詳しく解説してありますので、他の入手方法と比較しながらご検討ください。犬の購入・入手方法
犬猫譲渡会の流れ
  • 動物愛護センターに講習の予約を入れる
  • 指定された講習日にセンターを訪れて受講する
  • 譲渡候補の犬と対面する
  • 気に入った犬がいたら譲渡希望の申し込みをする
  • 他に希望者がいなければ譲渡仮決定
  • 譲渡時講習会を受講する
  • 譲渡決定
 以下でご紹介するのは、都道府県における犬猫譲渡会の様子です。動物たちがどのように管理されているのか、そして譲渡会がどうやって進行するのかが簡単に紹介されています。ただし全ての保健所や動物愛護センターが同じようなキャパシティや人員を有しているわけではありません。 元動画は→こちら

引き取り手順1

 まずは動物愛護センターや保健所に講習の予約を入れます。犬の飼育に関して極端に無知で低レベルな飼い主をふるいにかけるため、強制的に講習を受講させるのが一般的です。

引き取り手順2

 予約をとったら指定された講習日にセンターを訪れて飼育者の心得を学びます。平日であることが多いので、働いている人は講習の日程にあわせて都合をつける必要があるかもしれません。内容は約1~2時間で、犬を飼育する際の法律や常識などが中心です。

引き取り手順3

 施設内に保護されている譲渡候補の犬と対面します。犬はあらかじめ疾病検査や性格テスト(人なつこいか、優しいかなど)を通過した個体が譲渡候補として出されます。しかし飼い主としてはその日が初対面ですので、限られた時間の中でその子のキャラクターを感じ取り、自分の性格や生活のリズム、生活環境と合っているかどうかを相性判定しなければなりません。また医療検査では糞便検査のみで血液検査を行っていないところもありますので、事前に担当者に確認しておきましょう。

引き取り手順4

 気に入った犬がいたら譲渡希望の申し込みをします。自分の生活にぴったり合った犬が見つからなかった場合、新しい犬がセンターに来るまで待つことになります。公示期間(こうじきかん=引き取られた犬猫をセンターが”生かして”おく期間)が3日の場合、3~4日に一度の頻度でセンターに問い合わせれば最新の情報を得ることができるでしょう。なお公示期間は自治体によってまちまちですので事前に要確認です。

引き取り手順5

 他に希望者がいなければ譲渡が仮決定します。同じ犬を希望する飼い主候補者がいた場合、単純にくじ引きやじゃんけんで正式な飼い主を決めることが多かったようです。しかし近年は「犬を商品のように扱うな!」という声も多いことから、候補者の適正を吟味した上で優先順位を決めるという方法に変わりつつあります。

引き取り手順6

 譲渡時講習会を受講します。犬を飼育するに当たって必要となる手続きに関する講習です。犬の登録や狂犬病予防注射など、ごく当たり前の内容です。

引き取り手順7

 いよいよ譲渡決定です。自治体によっては譲渡料金を設定しているところがありますので確認しておきましょう。多くの場合数千円です。
 引き取った犬を自宅までつれてくる際は犬を家に迎える方法と手順をご参照下さい。ただし保健所や動物愛護センターでは成犬譲渡のケースも多々ありますので、あらかじめ成犬(生後1年を過ぎた大人の犬のこと)を念頭において必要アイテムの用意や流れをシミュレーションしましょう。

民間の保護団体に応募する

 民間の代表的な団体に関しては民間団体の里親募集案内をご参照下さい。また当サイトのTwitterアカウントでは日本全国で開催されている官民の譲渡会情報を発信しています。ほとんどは週末に集中していますので、土日を利用して一度見学に行かれてはいかがでしょうか。
 民間の保護団体に応募する場合は、多少の違いはあるものの、おおむね以下のような流れで進みます。なお地域によっては該当するような団体がないかもしれません。その場合は各地方自治体の運営する動物愛護センターや保健所にご相談下さい。
民間の譲渡会の流れ
  • ホームページなどでお気に入りの里子を見つける
  • 「預かり日記」などを熟読し里子のキャラクターを見極める
  • 自分のライフスタイルや性格と合っているかどうか熟考する
  • アンケート用紙や申し込みフォーマットに必要事項を記入して里親として応募する
  • お見合い+トライアル
  • 譲渡決定

引き取り手順1

 民間団体が公開しているホームページ、ブログ、Facebookなどでお気に入りの里子を見つけます。「犬 譲渡 里親 住んでいる都道府県や市区町村名」などで検索をかけると、犬が管理されている場所のほか譲渡会(里親会)の開催される場所を見つけやすいでしょう。

引き取り手順2

 動物愛護センターではいわゆる「ぶっつけ本番」で犬を決めますが、保護団体経由の場合は大抵「預かり日記」がありますので、その子のキャラクターを細かく知ることができます。自分がその犬を引き取った場合の生活をよりリアルに近い形でシミュレーションできるのが大きなメリットです。

引き取り手順3

 自分のライフスタイルや性格と犬が合っているかどうかじっくりと考えます。仕事で長時間の留守番を強いるライフスタイルなのに、とびっきり寂しがり屋の犬を譲り受けるのは賢明とはいえません。また猫や子供が苦手な犬を、子供のいる家庭が強引にもらい受けるのも同様です。ライフスタイルと犬の性格をよく検討してから決めましょう。

引き取り手順4

 自分に合った犬が見つかったら里親として応募します。アンケート用紙や申し込みフォーマットに必要事項を記入して譲渡条件を満たしているかどうかを確認しましょう。
 民間の保護団体の場合、ペットショップのように誰かれ構わず犬を渡してしまうスタンスとは異なり、飼い主にはある一定の条件が課されます。例えば「ペット可の賃貸契約書を見せる」「不妊手術を施す」「外飼いは不可」「一人暮らしは不可」「年配の人は後見人が必要」などです。また、引き取った犬を虐待したりする里親詐欺を防ぐため、ある程度個人的な質問をされますし、場合によっては自宅を実際に訪問して飼育環境を確認することもあります。
 「民間団体の譲渡条件は厳しい!」という声をよく耳にします。しかし残念なことに、譲渡された犬のすべてが幸せをつかめているわけではありません。里親の経済力、愛情、飼育環境、知識レベルなどにより、地獄の2丁目から3丁目に引っ越しただけの事例があるのも現実です。  こうした不適切飼養や再放棄を防ぐため、厳しすぎるとも思える条件を里親候補者に課すことは致し方ないことだと理解しておきましょう。なお譲渡に際してはある程度の費用負担を求められることがあります。しかしそれは犬の不妊手術費用、健康診断費用、自宅までの移動費用など、常識的に考えて新しい飼い主が当然負担すべき費用負担です。
🚨保護団体を選ぶ時  動物の将来を考えて献身的に努力している団体がいる一方、「動物愛護」や「殺処分ゼロ」の美名に隠れて寄付金を集め、私服を肥やしている団体も残念ながら一部にはいます。民間の保護団体を選ぶ際は、「団体の収支報告を見せてくれる」「動物の保護環境がきれい」「引き取り料金の明細をくれる」「細かな質問にも丁寧に答えてくれる」等を一つの基準として念頭に置いておくと、後で嫌な思いをする確率が減ります。

引き取り手順5

 犬と実際に対面してフィーリングをつかみます。預かり日記では陽気で元気いっぱいだったにもかかわらず、実際に会ってみるとよそよそしくて思っていた感じとは違うかもしれません。しかしそれは多くの場合時間の問題で、新しい環境や世話人の存在に慣れてくれば、本来の気質が表に出てくるようになります。
 こうした馴化期間が「トライアル」です。数週間一緒に犬と暮らし、家の中の環境、給餌スケジュール、散歩ルートなどを覚え込ませましょう。またスキンシップなどを通じて「この人は悪い人じゃない!」と判断してくれれば、少しずつ元の性格が出てくるはずです。
 先住犬や先住猫がいる場合、ゆっくりお互いの存在に慣らしていくようにします。いきなりご対面させて双方をパニック状態にしてしまうと、「先住犬(猫)との相性が悪い」と誤解してトライアルの中止につながってしまいます。

引き取り手順6

 トライアルを終了し、問題がないようであれば譲渡決定です。残念ながら正式譲渡が決まった後も犬の存在をないがしろにし、迷子になっても探そうともしない飼い主が一部にはいます。  譲渡が決まったら保護犬はもう家族の一員です。迷子にさせないのはもちろんのこと、しっかりと愛情をかけて「再放棄」という最悪の事態が起こらないようにしましょう。
「どうせタダ同然でもらった犬だから」とか「どうせ一度捨てられた犬だから」など、犬を軽視する気持ちが心のどこかにないでしょうか?里親に応募する前に犬を飼う前の心構えを繰り返しご確認ください。
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保護犬・捨て犬の特徴

 保護犬や捨て犬の特徴としては、成犬が多いこと、独特の癖をもっていることが多いこと、ミックス犬(雑種)が多いことなどが挙げられます。

成犬が多いかも

 2022年度(令和4年度)、日本全国の行政機関では22,392頭の犬が保護されました。そのうち1歳以上の成犬は17,735頭で全体の79.2%を占めています。ですから行政機関においても、行政機関から保護犬を引き出している民間団体においても、成犬の占める割合がどうしても大きくなります。
 成犬の場合、子犬時代に特有の思わず卒倒(そっとう)しそうになるほどの愛らしさはないかもしれません。しかしそれでも驚くほど可愛い犬が多く揃っていますので、ぜひご自分の目でご確認下さい。

独特の癖があるかも

 保護されたり捨てられたりした犬の中には、外で怖い目にあったとか、元の飼い主に虐待されていたといった理由により、独特の癖を持っているかもしれません。例えばある特定の動物や子供を怖がるとか、ある特定の音(救急車、掃除機など)に興奮するなどです。
 こうした癖の形成には子犬の社会化期(生後3~12週頃)における生育環境のほか、成犬になってからの経験が影響を及ぼしています。しつけによってある程度改善することも可能ですので、詳しくは犬のしつけ方を参照してください。 犬のしつけ方

ミックス犬が多いかも

 施設に保護されている犬が純血種の場合、ペットショップで買った犬が迷子になった末に収容されたとか、飼い主が飼育放棄したというパターンが考えられます。一方、保護犬がミックス犬(雑種)の場合、野犬が自然繁殖した末に捕獲されたというパターンが考えられます。
 血統書がないことや犬種図鑑に載っていないことなど全く気にならない方は、ぜひ保健所や動物愛護センターをご活用ください。一方「純血種以外は犬じゃない」という考えをお持ちの方は、まず「血統書」の意味について把握していただきたいと思います。 犬の血統書について
純血種へのこだわりを捨てきれない場合や、住宅事情から小型犬以外飼育できない場合は、廃業したブリーダーから保護された犬などを扱っている団体もありますので探してみてください。
NEXT:新生活を評価する

犬との新生活を評価する

 犬を飼って自分が幸せになるのは簡単です。しかし犬を飼って犬を幸せにするには努力が必要となります。自己満足に陥らず、今の生活環境で果たして犬が幸せかどうかを評価してみましょう。
迎えた犬のチェックポイント
  • 前足をしきりになめたりしていないか?
  • 便は硬すぎたりゆるすぎたりしないか?
  • 無駄吠えが多くないか?
  • 食欲はあるか?
  • 被毛は健康的か?
 上記したようにストレスの前兆は色々な箇所に現れますのでチェックを怠らないようにしましょう。
犬の肉体面の健康チェックに関しては犬の健康と病気犬の症状一覧を、さらに精神面のストレスサインについては犬の心を読む訓練犬の幸福とストレスなどをご参照下さい。