犬の寄生虫とジアルジア感染率
寄生虫の陽性率
12ヶ国における犬のジアルジアおよび内部寄生虫の陽性率は以下です。
年齢別で見ると1歳未満におけるジアルジアの陽性率がとりわけ高く、以後緩やかに下降しています。恐らく免疫システムの成熟度が関係しているのでしょう。
また少なくとも1頭の犬で陽性反応が出た区画の割合は以下です。「寄生虫もしくはジアルジア」という広い条件で見た場合、9割を超える区画では病原体を保持した犬が少なくとも1頭は訪問していることがわかります。
国 | ジアルジア | 寄生虫 |
オーストリア | 22.1% | 6.5% |
デンマーク | 15.7% | 5.9% |
フランス | 18.7% | 6.7% |
ドイツ | 18.3% | 8.4% |
アイルランド | 8.0% | 6.7% |
イタリア | 23.5% | 16.3% |
オランダ | 10.8% | 12.2% |
ポルトガル | 15.7% | 2.6% |
スペイン | 22.6% | 4.6% |
スウェーデン | 14.7% | 2.8% |
スイス | 17.3% | 1.2% |
イギリス | 14.1% | 2.3% |
- 鞭虫=17.7%
- 回虫=28.7%
- 鉤虫=37.2%
- 寄生虫=57.3%
- ジアルジア=83.5%
- 寄生虫+ジア=93.2%
駆虫薬の使用率
「過去に駆虫薬を使用したか?」という質問に対しては94.1%(ポルトガル)~24.2%(デンマーク)という飼い主からの幅広い回答があり、12ヶ国の中央値は83%でした。また「過去3ヶ月間で駆虫薬を使用したか?」という質問に対する回答は68.0%(ポルトガル)~3.3%(デンマーク)となりました。
駆虫薬と陽性率の関係
以下は飼い主の自己申告ベースで「過去3ヶ月以内に駆虫薬を投与した」と回答した割合と、内部寄生虫(回虫・鉤虫・鞭虫)の陽性率を並べたグラフです。
投与率が高いイギリスやポルトガルで陽性率が低く抑えられていることはすんなり理解できます。その一方、投与率が低いイタリアやスウェーデンでもなぜか陽性率が低いという奇妙な現象が確認されました。外部寄生虫薬(ノミダニ)と勘違いして回答した可能性が想定されていますが、詳しい理由はわかっていません。 また直近投与時期と内部寄生虫の陽性率を調べた結果が以下です。全体的な傾向として、直近の投薬が昔であればあるほど陽性率も高まるという傾向が見て取れます。
Detection of Giardia and helminths in Western Europe at local K9 (canine) sites (DOGWALKS Study)
Jason Drake, Sarah Sweet, et al., Parasit Vectors. 2022, PMID: 36057606
投与率が高いイギリスやポルトガルで陽性率が低く抑えられていることはすんなり理解できます。その一方、投与率が低いイタリアやスウェーデンでもなぜか陽性率が低いという奇妙な現象が確認されました。外部寄生虫薬(ノミダニ)と勘違いして回答した可能性が想定されていますが、詳しい理由はわかっていません。 また直近投与時期と内部寄生虫の陽性率を調べた結果が以下です。全体的な傾向として、直近の投薬が昔であればあるほど陽性率も高まるという傾向が見て取れます。
投与時期 | 鉤虫 | 鞭虫 | 回虫 |
1ヶ月以内 | 2.2% | 0.6% | 2.2% |
2~3ヶ月前 | 2.5% | 2.2% | 3.5% |
4~6ヶ月前 | 4.9% | 3.9% | 4.1% |
7~12ヶ月前 | 4.8% | 2.9% | 5.8% |
1年以上前 | 3.8% | 2.3% | 4.9% |
Jason Drake, Sarah Sweet, et al., Parasit Vectors. 2022, PMID: 36057606
犬を寄生虫から守るには?
今回の調査により、西ヨーロッパ諸国で飼育されている犬の内部寄生虫およびジアルジアの感染率が大まかに見えてきました。単純に平均値で見ると、ジアルジア感染率が16.8%、内部寄生虫(3種のうち最低1つ)の感染率が6.4%というものです。
感染リスクをリアルに把握する
種類を問わず何らかの病原体を少なくとも1種保有した犬が、ドッグランや公園といった集合区画を高い確率で利用していることも明らかになりました。区画の総数を分母としたときの割合は93.3%という非常に高いものです。言い換えると、公園が100ヶ所あれば、そのうち90ヶ所は何らかの病原体を抱えた犬が利用しているということになります。
先行調査ではドッグランの利用が犬の回虫感染率を高める危険性が指摘されていますので、ある特定の空間を他の犬と共有する場合は、寄生虫に感染するリスクが常にあると警戒した方が無難でしょう。
先行調査ではドッグランの利用が犬の回虫感染率を高める危険性が指摘されていますので、ある特定の空間を他の犬と共有する場合は、寄生虫に感染するリスクが常にあると警戒した方が無難でしょう。
犬を守るのは飼い主の責任
犬で頻繁に見られる寄生虫症の中には人間に感染して人獣共通感染症を引き起こすものもあります。犬と人両方の健康と安全を守るためには、飼い主が責任持って虫卵の脅威から犬を守ってあげなければなりません。
今回の調査により駆虫薬の直近投与率が高ければ陽性率が低くなる傾向が認められました。少なくとも定期的な寄生虫検査を行い、陽性と出た場合は投薬治療を行った方が良いようです。ちなみに調査チームは従来的な浮遊法と最新の便内抗原免疫検定を併せて行った方が検査の感度が高まるとして推奨しています(Idexxによるスポンサーバイアス?)。
その他、犬を屋外に連れ出す際はスマホ片手に「ながら散歩」をするのではなく、常に拾い食いに注意しておくことが重要です。これは寄生虫卵との接触だけでなく、有害物質や悪意ある毒餌(針餌)の誤飲事故を防ぐことにもつながります。
今回の調査により駆虫薬の直近投与率が高ければ陽性率が低くなる傾向が認められました。少なくとも定期的な寄生虫検査を行い、陽性と出た場合は投薬治療を行った方が良いようです。ちなみに調査チームは従来的な浮遊法と最新の便内抗原免疫検定を併せて行った方が検査の感度が高まるとして推奨しています(Idexxによるスポンサーバイアス?)。
その他、犬を屋外に連れ出す際はスマホ片手に「ながら散歩」をするのではなく、常に拾い食いに注意しておくことが重要です。これは寄生虫卵との接触だけでなく、有害物質や悪意ある毒餌(針餌)の誤飲事故を防ぐことにもつながります。
2022年6月27日夜、神奈川県座間市を散歩中の犬が路上に落ちていたペットフードを拾い食いし、中に仕込まれていた針が胃に到達する誤飲事故に発展。何者かが意図的に路上に置いたとみて、警察が動物愛護法違反容疑で調べを進めている。 朝日新聞また先行調査では人間の靴底に付着した虫卵が感染リスクになっている可能性が指摘されています。犬の体や足に加え、屋外を歩いた後は自分の靴をきれいにする習慣を持てば、犬や人間の感染リスクを下げることができるでしょう。