犬の足の裏にある個体情報
調査を行ったのはノルウェーにある「University of South-Eastern Norway」のチーム。犬の足の裏(肉球のエクリン腺・指間のアポクリン腺)から分泌される揮発性物質を他の犬が嗅覚を通じて認識した時、一体どのようなリアクションを見せるかを検証するため、一般家庭で飼われている合計48頭のペット犬を対象とした実験を行いました。
被験犬としてヴェストフォル県およびテレマルク県からランダムで選ばれたのは、去勢避妊手術を受けていないオス22頭とメス26頭。すべて1歳以上で平均年齢は6歳、平均体重は23.1kgです。実験に用いられる匂いサンプルとしては96頭の犬たち(オス48頭+メス48頭 | 平均5歳 | 平均20.8kg | 全頭未手術)の足の裏や指間を綿棒でこすり取って採取しました。ただしメス犬に関しては「発情期ではない」という条件付きです。 二重盲検法で万全を期した上で、1頭につき「オス犬の匂い」「メス犬の匂い」「地面から採取したダミーの匂い」を順不同で1回ずつ嗅がせ、「嗅いでいた時間」および「優先的に使う鼻腔」という観点でデータ化したところオス犬とメス犬で以下のような結果になったと言います。なお実験上の不備から、解析対象となった犬の数はオス15頭、メス19頭に目減りしています。
Kari McClanahan, Frank Rosell, Scientifc Reports(2020), DOI:10.1038/s41598-020-74784-5
被験犬としてヴェストフォル県およびテレマルク県からランダムで選ばれたのは、去勢避妊手術を受けていないオス22頭とメス26頭。すべて1歳以上で平均年齢は6歳、平均体重は23.1kgです。実験に用いられる匂いサンプルとしては96頭の犬たち(オス48頭+メス48頭 | 平均5歳 | 平均20.8kg | 全頭未手術)の足の裏や指間を綿棒でこすり取って採取しました。ただしメス犬に関しては「発情期ではない」という条件付きです。 二重盲検法で万全を期した上で、1頭につき「オス犬の匂い」「メス犬の匂い」「地面から採取したダミーの匂い」を順不同で1回ずつ嗅がせ、「嗅いでいた時間」および「優先的に使う鼻腔」という観点でデータ化したところオス犬とメス犬で以下のような結果になったと言います。なお実験上の不備から、解析対象となった犬の数はオス15頭、メス19頭に目減りしています。
足裏の匂いと犬の反応
- オス犬✓オスの匂い→平均2.55秒嗅ぐ
✓メスの匂い→平均0.98秒嗅ぐ
✓ダミーの匂い→平均0.55秒嗅ぐ
※優先的に使われる鼻腔なし
※統計的にオスの匂いを嗅ぐ時間>ダミーを嗅ぐ時間 - メス犬✓オスの匂い→平均1.55秒嗅ぐ
✓メスの匂い→平均1.58秒嗅ぐ
✓ダミーの匂い→平均1.73秒嗅ぐ
※嗅ぐ時間に統計的な格差なし
※メスの匂いに対しては右の鼻腔から使い始め、右の鼻腔で終えることが多い
※ダミーの匂いに対しては左の鼻腔が優先的に使われる
Kari McClanahan, Frank Rosell, Scientifc Reports(2020), DOI:10.1038/s41598-020-74784-5
足裏の匂いと反応・オス犬
オス犬の反応に関する調査チームの当初の仮説は「メス犬の匂いよりもオス犬の匂いを嗅ぐ時間が長く、なおかつネガティブな感情価を示す右鼻腔が優先的に使われる」「メス犬の匂いをかぐときはポジティブな感情価を示す左鼻腔が優先的に使われる」というものでした。しかし実際には「オス犬とメス犬の匂いを同じくらい嗅ぐ」「鼻腔に優先順位はない」というものでした。
メス犬の匂いは発情期ではないことが条件とされていましたので、時期によっては異なる結果が得られるかもしれません。実際トナカイでは、ライバルの存在を見定めるため繁殖期の夏になると同性の匂いに対する選好が強くなると報告されています。これと同じ現象が犬にもあるのだとすると、メス犬が発情期に入りやすい時期になると、同性の匂いに敏感になって熱心に匂いを嗅ぐようになると推測されます。
メス犬の匂いは発情期ではないことが条件とされていましたので、時期によっては異なる結果が得られるかもしれません。実際トナカイでは、ライバルの存在を見定めるため繁殖期の夏になると同性の匂いに対する選好が強くなると報告されています。これと同じ現象が犬にもあるのだとすると、メス犬が発情期に入りやすい時期になると、同性の匂いに敏感になって熱心に匂いを嗅ぐようになると推測されます。
足裏の匂いと反応・メス犬
メス犬の反応に関する調査チームの当初の仮説は「オス犬とメス犬の匂いを同じくらい嗅ぐ」「どちらを嗅ぐにしてもネガティブな感情価を示す右鼻腔が優先的に使われる」というものでした。前者に関しては異性(オス)よりも同性(メス)の匂いを嗅ぐ時間が長いという事実で否定され、後者に関しては同性の匂いを嗅ぐときだけ右鼻腔が優先的に使われるという事実で部分的に確認されました。
同性の匂いに対して右鼻腔が優先的に使用されたことから、恐怖、脅威、ストレスといったネガティブな感情が喚起された可能性が示唆されます。過去に行われた調査でも「オス犬よりメス犬の方がケンカを始めやすく、ケンカに伴う怪我が重症化しやすい」「気質として不安や恐怖症を抱きやすい」「オス犬より大胆さの程度が低い」「急性ストレスのサインを示しやすい」などと報告されていますので、外的な刺激をきっかけとしてオス犬よりも覚醒状態(aroused)になりやすいのかもしれません。
同性の匂いに対して右鼻腔が優先的に使用されたことから、恐怖、脅威、ストレスといったネガティブな感情が喚起された可能性が示唆されます。過去に行われた調査でも「オス犬よりメス犬の方がケンカを始めやすく、ケンカに伴う怪我が重症化しやすい」「気質として不安や恐怖症を抱きやすい」「オス犬より大胆さの程度が低い」「急性ストレスのサインを示しやすい」などと報告されていますので、外的な刺激をきっかけとしてオス犬よりも覚醒状態(aroused)になりやすいのかもしれません。
「クン活」のすすめ
肉球保護用のソックスを履いていない場合、屋外を散歩中の犬たちは足の裏から分泌される揮発性物質を地面に残しながら進むことになります。私たち人間には分かりませんが、犬たちの鋭い嗅覚にかかれば「別の犬がここを通ったな」くらいは分かるのかもしれません。
ヒグマの足の裏から分泌される化学物質には性的二型性があると報告されています。またカナダカワウソはオスだけが足の裏に特殊な分泌腺を持っているといいます。一方、犬に関しては今回の調査結果が示しているように、足の裏の匂いだけで性別を判定することができているかどうかはわかっていません。人間で言うと、エレベーターの残り香だけから乗っていた人を言い当てる感じでしょうか。誰かが乗っていたことは分かるけれども、性別までは断言できないといった感覚です。
目で見ると何もない地面でも、犬の嗅覚が捉えられる匂い情報はたくさん落ちています。いわゆる「クン活」は運動を促すと同時に脳を活性化してくれますので、拾い食いに注意しながら付き合ってあげましょう。