トップ犬の繁殖犬の不妊手術不妊手術と問題行動

去勢・避妊手術は犬の問題行動を増やすか?減らすか?

 犬に対して不妊手術(オスの去勢とメスの避妊)を施すと性格が穏やかになって攻撃性は減るのでしょうか?またその他の問題行動(マーキングや徘徊)に変化は生じるのでしょうか?最新のデータとともに検証してみましょう(🔄最終更新日:2020年5月3日/ドイツ・2020年の報告)

犬の不妊手術と問題行動

 2019年、アメリカ・ワシントン大学病理学部が犬に対する不妊手術に関する包括的なレビューを行いました。当ページでは手術と問題行動の関連性について検証した過去の調査報告(エビデンス)をご紹介します。なお出典論文はオープンアクセスです。 Desexing Dogs: A Review of the Current Literature
Silvan R. Urfer, Matt Kaeberlein, Animals 2019, 9(12), 1086; DOI:10.3390/ani9121086
ざっくりまとめると

犬の不妊手術と問題行動・エビデンス集

 以下は犬の不妊手術と問題行動の関連性に関するエビデンス(科学的証拠)です。出典へのリンクもありますので参考にして下さい。

ドイツ(1990)

 ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンの調査チームは、不妊手術を受けたオス犬209頭とメス犬382頭の飼い主への聞き取り調査を行い、手術前後で犬の体や行動にどのような変化が見られるのかを検証しました。
 その結果、全般的にオス犬の方が行動に変化が見られる割合が高く、変化の度合いも大きかったといいます。またオスメスとも、手術後の性格は献身的、友好的、やさしいと評されることが多くなりました。
 オス犬に限定した場合、性衝動に関連した問題行動は74%の犬で減少、攻撃的な行動は61.3%(49/80)で減少が見られました。
 メス犬に限定した場合、性衝動に関連した問題行動は59%の犬で減少、攻撃的な行動は53.2%(25/47)で減少が見られました。
Changes in the behavior of dogs after castration
Heidenberger E, Unshelm J, Tierarztliche Praxis, 01 Feb 1990, 18(1):69-75

アメリカ(1994)

 CDC(疾病予防管理センター)の調査チームは1991年、デンバー動物管理局に報告があった咬傷事故を参照し、犬の噛みつき行動の危険因子が何であるかを検証しました。
 家族以外の人に対し、治療を要するレベルの咬傷事故を初めて起こした犬178頭と、咬傷事故を起こしていない犬178頭とを比較したところ、被害者の51%は12歳以下の子供であることが判明したといいます。咬傷事故の危険因子に関しては、オッズ比でジャーマンシェパード(OR16.4)、チャウチャウ(OR4)、オス犬(OR6.2)、家庭内に子供がいる(OR3.5)、庭にいるときは係留されている(OR2.8)といった項目のほか、不妊手術を受けていないこと(OR2.6)が残りました。
Which Dogs Bite? A Case-Control Study of Risk Factors
Kenneth A. Gershman, Jeffrey J. Sacks and John C. Wright, Pediatrics 93(6 Pt 1):913-7

オランダ(1997)

 ユトレヒト大学の調査チームは、去勢(精巣切除)手術を施した122頭のオス犬の飼い主に聞き取り調査を行い、術後の行動や男性ホルモン依存型疾患にどのような変化が現れるかを検証しました。
 手術の主な目的は性衝動、放浪癖、攻撃性、粗相などの問題行動の解消で、術後およそ60%の個体において性衝動、オス犬同士の攻撃行動、放浪、粗相の減少が見られたといいます。
Influence of orchiectomy on canine behaviour
R.J.Maarschalkerweerd, DVM, N. Endenburg, PhD, J. Kirpensteijn, DVM and B. W. Knol, DVM, PhD, VetRecord Volume 140, Issue 24, DOI:10.1136/vr.140.24.617

アメリカ(1997)

 カリフォルニア大学デイヴィス校の調査チームは、2歳を過ぎた去勢手術済のオス犬57頭を対象としたコホート調査を行いました。犬たちの選定条件は「手術を受けた時点で問題行動を最低1つ抱えていること」で、問題行動とは具体的に室内でのマーキング、マウンティング、放浪、非生物を怖がる、家族に対する攻撃行動、見知らぬ人に対する攻撃行動、同居犬に対する攻撃行動、見知らぬ犬に対する攻撃行動、縄張りに入ってきた人に対する攻撃行動、という9つを指します。
 調査の結果、マーキング、マウンティング、放浪に関しては60%超の犬において50%超の改善(=半減)が見られ、25~40%の犬においては90%超の大幅な改善が見られたといいます。一方その他の問題行動に関し、50%を超える改善(=半減)が見られた割合は全体の35%未満でした。年齢や問題行動の持続期間と改善した個体の割合との間に関連性は見られなかったとも。
Effects of castration on problem behaviors in male dogs with reference to age and duration of behavior
Neilson JC, Eckstein RA, Hart BL, J Am Vet Med Assoc. 1997 Jul 15;211(2):180-2.

カナダ(2001)

 プリンス・エドワード・アイランド大学の調査チームは、ノヴァスコシア州、ニュー・ブランズウィック州、プリンスエドワードアイランドに暮らす犬の飼い主を対象としたアンケートを行い、同居人に対する犬の咬傷事故の危険因子が何であるかを検証しました。
 統計的な検証の結果、1歳以上の未手術のメス犬を基準としたとき、実際の噛みつき行動(※うなりや噛むふりは除く)のオッズ比は未去勢のオスで2.04、去勢済みのオスで3.23、避妊済みのメスで2.13になることが明らかになったといいます。
Demographic and aggressive characteristics of dogs in a general veterinary caseload
Applied Animal Behaviour Science Volume 74, Issue 1, N.CGuy, U.ALuescher, S.EDohoo, ESpangler, J.BMiller, I.RDohoo, L.ABate, DOI:10.1016/S0168-1591(01)00153-8

韓国(2006)

 慶尚大学校の調査チームは14頭のジャーマンシェパードをランダムで2つのグループに分け、一方にだけ5~10ヶ月齢のタイミングで子宮卵巣除去手術を行いました。次いで両グループに対して「見知らぬ人が見知らぬ犬を連れて近づく」という統一された外部刺激を与え、リアクションの強さを0(弱)~3(強)までの4段階で評価しました。
 手術から4ヶ月後に2回、5ヶ月後に2回の観察を行った結果、避妊手術を受けたグループにおいてリアクションを示す犬の数が多く、またリアクションの度合いも強かったといいます。また同じチームが16頭のメス犬を用いて行った別の調査では、手術済みのメス犬において防御性の鳴き声が高い頻度(手術済み平均45回 vs 未手術平均26回)で見られたとも出典資料:H.H.Kim, 2005)
Effects of ovariohysterectomy on reactivity in German Shepherd dogs
Kim HH, Yeon SC, Houpt KA, Lee HC, et al., Vet J. 2006 Jul;172(1):154-9., DOI: 10.1016/j.tvjl.2005.02.028

アメリカ(2007)

 カリフォルニア大学デイヴィス校の調査チームは、ジャマイカのキングストンに暮らす犬660頭とアメリカのサンフランシスコに暮らす犬452頭を対象とし、遊びの延長ではない本気の噛みつきに関する調査を行いました。
 合計1,026頭から得られたデータを検証したところ、避妊済みのメス犬を基準としたときの相対リスクに関し、未手術のメス犬は3.22、去勢済みのオス犬は1.52、未手術のオス犬は2.56になったといいます。
The human-canine environment: A risk factor for non-play bites?
Locksley L. McV, MessamPhilip H, KassBruno, B.Chomel, Lynette A.Hart, The Veterinary Journal Volume 177, Issue 2, August 2008, Pages 205-215, DOI:10.1016/j.tvjl.2007.08.020

アメリカ(2008)

 オレゴン州公衆衛生局は2002年7月から翌6月までの期間中、マルトノマ郡の動物管理サービスに報告があった犬の咬傷事故を参照し、危険因子が何であるかを検証しました。
 合計636件の事故を精査したところ、被害者しては5~9歳の男児(178/1万)が最もハイリスクであることが判明したといいます。一方、犬の側の危険因子としては犬種(テリア・ワーキング・牧羊・ノンスポーティング)、純血種(相対リスク3.8)のほか、不妊手術の有無が残りました。具体的には、手術済みのメス犬を基準とした時の相対リスクで去勢済みのオスが2.6、未手術のメスが10.5、未去勢のオスが18.6というものです。またオスとメスひっくるめ、手術済みを基準とした時の未手術の相対リスクは9.1とも算定されました。
Canine and human factors related to dog bite injuries
Carrie M. Shuler, Emilio E. DeBess, Jodi A. Lapidus, Katrina Hedberg, Journal of the American Veterinary Medical Association 232(4):542-6, DOI: 10.2460/javma.232.4.542

アメリカ(2012)

 カリフォルニア大学デイヴィス校の調査チームは、ジャマイカのキングストンに暮らす犬709頭とアメリカのサンフランシスコに暮らす犬513頭を対象とし、遊びの延長ではない本気の噛みつきに関する調査を行いました。
 その結果、遊びの延長で出る噛みつきについては、避妊済みのメス犬を基準としたときの相対リスクに関し、未手術のメス犬は4.76、去勢済みのオス犬は1.87、未手術のオス犬は4.15になったといいます。また本気の噛みつきについては避妊済みのメス犬を基準としたときの相対リスクに関し、未手術のメス犬は3.22、去勢済みのオス犬は1.52、未手術のオス犬は2.56になったとも。
Risk factors for dog bites occurring during and outside of play: Are they different?
Messam LL, Kass PH, Chomel BB, Hart LA., Prev Vet Med. 2012 Nov 1;107(1-2):110-20. doi: 10.1016/j.prevetmed.2012.05.007

オーストラリア(2013)

 シドニー大学の調査チームは、オーストラリア在住の犬の飼い主(18~80歳)を対象として「C-BARQ」と呼ばれるアンケート調査を行い、1,054人から得られた回答を参照して犬の上位特性に影響を及ぼす因子を検証しました。ここで言う上位特性とは、動物の気質をおおまかに区分したときに集約される「大胆さ」(Boldness)および「臆病さ」(Shy)という二大特性のことです。
 その結果、「大胆さ」に関しては「年齢とともに減少」「メスよりもオスで高い値を示す」「オスでもメスでも手術済みよりも未手術の犬で高い値を示す」ことが判明したといいます。
Age, sex and reproductive status affect boldness in dogs
Melissa J.Starling, Paul D.McGreevy, The Veterinary Journal Volume 197, Issue 3, September 2013

全世界(2014)

 1992年から2008年の期間に生まれた2,505頭のヴィズラの医療データを世界中からオンラインで集め、問題行動と不妊手術(性腺切除)との関連性を統計的に検証しました。
 その結果、不妊手術を受けた個体では手術のタイミングに関わらず雷雨恐怖症のオッズ比が3.9~4.7倍高かったといいます。また6ヶ月齢未満のタイミングで手術を受けた犬は性別にかかわらず問題行動全般のオッズ比が1.8倍高かったとも。全体的に、不妊手術を受けたタイミングが早ければ早いほど問題行動や雷雨恐怖症と診断される年齢も早いという傾向が認められました。なお「問題行動」の具体的な内容は分離不安、騒音恐怖、銃声恐怖、臆病、興奮しやすい、服従的放尿、攻撃性、過活動、恐怖による噛みつきです。
Evaluation of the risk and age of onset of cancer and behavioral disorders in gonadectomized Vizslas
Zink, M.C.; Farhoody, P.; Elser, S.E.; Ruffini, L.D.; Gibbons, T.A.; Rieger, R.H., J. Am. Vet. Med. Assoc. 2014, 244, 309-319

デンマーク(2016)

 コペンハーゲン大学の調査チームは、ゆっくりと放出されるインプラント(体内埋め込み)型のGnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)促進剤が、犬に対して一体どのような変化をもたらすかを検証しました。
 その結果、特にオス犬における変化が顕著で、テストステロン(男性ホルモン)に依存した性衝動関連行動、オス同士の攻撃行動、縄張りを主張するマーキングの減少が見られたといいます。減少率に関しては外科手術によって性腺を取り除いたときと同じだったとも。人間に対する攻撃性に変化は見られず、インプラントの効力が切れたら状態も元に戻ることが併せて確認されました。
Long-term effects of GnRH agonists on fertility and behaviour
Goericke-Pesch S, Reprod Domest Anim. 2017 Apr;52 Suppl 2:336-347. doi: 10.1111/rda.12898

チリ(2016)

 国境なき獣医師団を中心としたチームは、チリ南部に生息する野犬174頭を対象とし、化学的去勢(投薬)や外科的去勢(性腺切除)を行った前後で、オス犬たちの行動にどのような変化が見られるかを観察しました。
 その結果、外科的去勢を受けたグループにおいては攻撃性や性衝動に関連した行動の減少は見られなかったといいます。また化学的去勢を受けたグループにおいては性衝動に関連した行動に変化がなく、他の犬に対する攻撃性が増加したとも。行動観察と併せ、血中のテストステロン濃度もモニタリングされましたが、どちらのグループにおいても行動との間に関連性は認められませんでした。
Effects of surgical and chemical sterilization on the behavior of free-roaming male dogs in Puerto Natales, Chile
Garde E, Perez GE, Vanderstichel R, et al., Prev Vet Med. 2016 Jan 1;123:106-120. doi: 10.1016/j.prevetmed.2015.11.011

アメリカ(2018)

 飼い主に対する100項目の質問から犬の気質や性格を推し量る「C-BARQ」と呼ばれるアンケートをペンシルベニア大学獣医学部のニュースマガジン、フィラデルフィアエリアで開業する動物病院、登録頭数ベースで見たときアメリカ国内でトップ20に入る犬種クラブを通じて告知し、自主的に集まった回答を元にした統計調査を行いました。
 2006年以降に寄せられたオス犬限定の回答の中から、「520週(10歳)未満のタイミングで去勢を受けた」「去勢の理由は問題行動以外」「去勢の理由は獣医師のすすめ以外」という条件で選別したところ、最終的に6,235頭のデータが解析対象になったといいます。
 次いで、一生のうちで性ホルモンに暴露されていた期間の割合(PLGH)および去勢を受けたタイミング(AAC)と、C-BARQの結果を検証したところ、未去勢のオス犬と去勢済みのオス犬との間で40項目において5.04%~12.31%の違いが見られたといいます。
 PLGHに限ると、PLGHが増えるほど(=性ホルモンにさらされている期間が長い犬ほど)23項目が減少、室内におけるマーキングと留守番中の遠吠えが増加するという結果でした。またAACに限ると、AACが増えるほど(=去勢のタイミングが遅いほど)13項目が減少、室内におけるマーキングが増加するという結果でした。逆に言うと、去勢によってリスクが減ると考えられるのはマーキングと留守番中の遠吠えのだけであり、20を超える残りの望ましくない行動に関しては全て去勢をすることによって逆にリスクが高まる可能性があるということです。
Behavioural risks in male dogs with minimal lifetime exposure to gonadal hormones may complicate population-control benefits of desexing
McGreevy PD, Wilson B, Starling MJ, Serpell JA (2018) . PLoS ONE 13(5): e0196284. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0196284

スイス(2018)

 チューリッヒ大学のチームはメスのラブラドールレトリバー58頭を対象とし、避妊手術の有無やタイミングが犬の行動に及ぼす影響を調査しました。
 未手術のメス12頭、性的に成熟する前のタイミングで早期手術を受けた17頭、成熟後に受けた29頭の飼い主にお願いし、屋外を15分間散歩する間に見られる犬の行動を観察・報告してもらったところ、排尿に関する行動(排尿回数・排尿姿勢・排尿跡の引っかき)にグループ差は見られず、年齢、卵巣(女性)ホルモンに暴露されていた期間、避妊手術からの経過時間とも無関係だったといいます。
 飼い主の主観的な感想をまとめると、避妊手術を受けたメス犬では騒音や見知らぬものに対する反応が大きい、見知らぬ犬(吠える・うなる・ジャンプする)に接近された時の反応が大きいという傾向が見られました。
The influence of spaying and its timing relative to the onset of puberty on urinary and general behaviour in Labrador Retrievers
Orsolya Balogh, Natalie Borruat, Angela Andrea Meier, et al., Reproduction in Domestic AnimalsVolume 53, Issue 5, DOI:10.1111/rda.13225

アメリカ(2018)

 ニューヨーク大学心理学部を中心としたチームは、犬に対する不妊手術が攻撃行動の出やすさにどのような影響を及ぼすかを検証しました。
 犬の飼い主を対象として「C-BARQ」と呼ばれるアンケートを行い、「6週齢以降に手術を受けたこと」と「手術の目的が問題行動の改善以外であること」を条件として解析対象を選別したところ、顔見知りの人に対する攻撃行動が13,795件、見知らぬ人に対する攻撃行動が13,498件、他の犬に対する攻撃行動が13,237件に絞られたといいます。
 次いで、得られたデータを多変量解析した結果、不妊手術(性腺切除術)の有無や手術時の月齢と顔見知りの人や他の犬に対する攻撃行動との間に関連性は認められなかったといいます。その一方、見知らぬ人への攻撃行動に関しては未手術に比べて手術済みの犬で22%ほどリスクが高いことが明らかになりました。さらに手術のタイミングを考慮に入れた場合、統計的に有意と判断されたのは7~12ヶ月齢だけで、未手術の場合より26%高くなると算定されました。
 こうした結果から調査チームは、未手術の犬において攻撃行動の頻度が高いという証拠も、不妊手術や手術のタイミングで攻撃行動が減ってくれるという証拠もないとの結論に至っています。
Aggression toward Familiar People, Strangers, and Conspecifics in Gonadectomized and Intact Dogs
Parvene Farhoody, Indika Mallawaarachchi, James A. Serpell, et al., DOI:10.3389/fvets.2018.00018

カナダ(2019)

 グエルフ大学のチームは、インターネットなどを介して犬の飼い主に呼びかけを行い、犬が人間に対して見せるリソースガーディングに関する疫学調査を行いました。ここで言う「リソースガーディング」(資源死守行動)には、競争相手に奪われないよう食べ物を急いで胃袋にかきこむ、体の姿勢や位置を変えることで競争相手が資源にアクセスできないようブロックする、競争相手に攻撃的な態度をとる、などが含まれます。
 2,207人の飼い主から得られた3,589頭分のデータを検証したところ、メスよりもオス犬、未手術よりも手術済みの犬においてリソースガーディングが出やすい傾向が見られたといいます。また人間ではなく、他の犬に見せるリソースガーディングに関して同様の調査を行った結果、やはり同様の傾向が見られたとも。ただし不妊手術がリソースガーディングを引き起こしたのではなく、リソースガーディングを改善するために不妊手術を行った可能性もあるため、因果関係とは言い切れないと指摘しています。詳しくは「犬のリソースガーディング(資源死守行動)~危険因子から予防・対処法まで」をご覧ください。
Factors associated with canine resource guardingbehaviour in the presence of people: A cross-sectional surveyof dog owners
Jacobs, Jacquelyn A., Coe, Jason, Pearl, David L., Widowski,Tina M., Niel, Lee, , Preventive Veterinary Medicine, http://dx.doi.org/10.1016/j.prevetmed.2017.02.005

ドイツ(2020)

 ドイツにあるフリードリヒ・シラー大学イェーナの調査チームは、避妊手術の有無によって犬の行動特性にどのような違いが見られるかを検証しました。
 問題行動診療の専門クリニックを受診したメス犬の飼い主を対象としたアンケートを行い、避妊手術を受けた犬の飼い主90人と未手術の犬の飼い主90人の回答を比較したところ、気質面に関しては手術済みのメス犬において「ストレス/不安」「パニック」を理由に受診するパターンが統計的に多いことが判明したといいます。また行動面に関しては「ナーバスで攻撃的な行動」「震える」「見知らぬ人に対する攻撃性」「家族に対する攻撃性」「非社会的対象物への恐怖」という項目が、手術済みのメス犬で多く報告されたとも。
Comparison of the Social Behaviour of Intact and Neutered Female Domestic Dogs (Canis Lupus Familiaris): Questionnaires and Case Studies
Lorenz K P, Kolkmeyer C A, Gansloser U. Dairy and Vet Sci J. 2019; 12(2): 555835. DOI: 10.19080/JDVS.2019.12.555835
マーキング、徘徊、性衝動に関しては、特にオス犬において不妊手術で軽減が期待できるかもしれません。一方、攻撃行動に関してはオスでもメスでも相反する報告があるため、現段階ではっきりしたことは言えません。手術に関しては「犬の去勢と避妊」、問題行動に関しては「犬のしつけ方」をご参照下さい。