詳細
報告を行ったのはイタリア・バリ大学の研究チーム。チームはまず、見知らぬ環境で飼い主に置き去りにされるという強いストレスがかかる状況下で犬が発散した匂いと、ホラームービーを見て恐怖を抱いた状況下で人間が発散した匂いをサンプルとして採取しました。次にその匂いを被験者である犬に嗅がせてみたところ、犬の匂いサンプルを嗅ぐ時は右の鼻腔を用い、人間の匂いサンプルを嗅ぐ時は左の鼻腔を用いる傾向が見出されたと言います。
こうした事実から研究チームは、犬の脳は同種の動物が発する化学物質と、異種の動物が発する化学物質を処理するとき、別のルートを用いているかもしれないという可能性を突き止めました。 The dog nose “KNOWS” fear: Asymmetric nostril use during sniffing at canine and human emotional stimuli
こうした事実から研究チームは、犬の脳は同種の動物が発する化学物質と、異種の動物が発する化学物質を処理するとき、別のルートを用いているかもしれないという可能性を突き止めました。 The dog nose “KNOWS” fear: Asymmetric nostril use during sniffing at canine and human emotional stimuli
解説
左右対象に存在している器官のうちどちらか一方を優先的に使用する現象のことを「側性」(Laterality)と言います。過去の調査で、犬には「利き足」、「利き耳」、「利き脳」らしいものがあることが確認されていますが、「利き鼻」もそのうちの1つです。鼻から入った匂いを脳に伝える「嗅神経」は脳内で交差しないため、右の鼻腔から入った匂いは右脳で、左の鼻腔から入った匂いは左脳で処理されます。一般的に右脳は「不安・恐怖」といった感情が喚起されたときに活性化しますので「ストレス下の犬の匂い」が犬の恐怖心をあおり、結果として右の鼻腔が使われたのかもしれません。一方、「恐怖を感じている人間の匂い」を左の鼻腔(左脳)で処理したということは、この匂いと人間の心理状態を結び付けることができなかったという可能性が考えられます。犬の「側性」や「感情価モデル」については以下のページでも詳しく解説していますのでご参照ください。