排泄時における犬の体軸調査
調査行ったのはイスラエルにあるネゲヴ・ベン=グリオン大学を中心としたチーム。磁力を感知する「磁気覚」が犬にあるのかどうかを検証するため、イスラエル国内にある3ヶ所で大規模な観察調査を行いました。
2017年の観察対象となったのはショハム、ベエルシェバ、エイラトの937頭。2018年の観察対象となったのはエイラトの886頭です。両年合わせ、合計1,823頭が排泄するときの頭の向きを方位としてデータ化したところ、そのほとんどが北もしくは南のどちらかに向けることが明らかになったといいます。つまり体の軸が南北軸に沿っているということです。 また2018年の886頭のうち586頭は、5平方メートルのエリア内に25個の産業用磁石を埋めた状態で観察が行われました。磁力は1マイクロテスラ、深さは地上から1cm程度です。その結果、磁石がない状態で観察した残りの300頭と比較し、体軸の角度が11度ほどずれることが明らかになったといいます。
こうした結果から調査チームは、逸話的に語られる「犬は排泄する時体軸を南北に合わせる」という現象は確かに存在するという事実に行き当たりました。ただし犬が磁力を感じ取るメカニズムや、そもそも磁気覚を持っている意味に関してはよくわからないとしています。 Directional preferences of dogs’ changes in the presence of a bar magnet:educational experiments in Israel
Reuven Yosef, Michal Raz, Niv Ben-Baruch, Liel Shmueli, Jakub Z. Kosicki, MartynaFratczak, Piotr Tryjanowski, Journal of Veterinary Behavior, DOI:10.1016/j.jveb.2019.10.003
2017年の観察対象となったのはショハム、ベエルシェバ、エイラトの937頭。2018年の観察対象となったのはエイラトの886頭です。両年合わせ、合計1,823頭が排泄するときの頭の向きを方位としてデータ化したところ、そのほとんどが北もしくは南のどちらかに向けることが明らかになったといいます。つまり体の軸が南北軸に沿っているということです。 また2018年の886頭のうち586頭は、5平方メートルのエリア内に25個の産業用磁石を埋めた状態で観察が行われました。磁力は1マイクロテスラ、深さは地上から1cm程度です。その結果、磁石がない状態で観察した残りの300頭と比較し、体軸の角度が11度ほどずれることが明らかになったといいます。
こうした結果から調査チームは、逸話的に語られる「犬は排泄する時体軸を南北に合わせる」という現象は確かに存在するという事実に行き当たりました。ただし犬が磁力を感じ取るメカニズムや、そもそも磁気覚を持っている意味に関してはよくわからないとしています。 Directional preferences of dogs’ changes in the presence of a bar magnet:educational experiments in Israel
Reuven Yosef, Michal Raz, Niv Ben-Baruch, Liel Shmueli, Jakub Z. Kosicki, MartynaFratczak, Piotr Tryjanowski, Journal of Veterinary Behavior, DOI:10.1016/j.jveb.2019.10.003
犬には磁力がわかるらしい
犬には磁気覚があるかもしれないという仮説は、今から100年近く前から提唱されてきました。これは非常に長い距離を自発的に移動して元に家に戻る「帰巣本能」の事例が数多く報告されていたからです。
犬の磁気覚を示す調査結果
2013年には磁場が安定している時、犬が磁力線に体の軸を合わせて排泄を行うものの、磁場が不安定になるとこの傾向が消えるという科学的な報告がなされています(Hart al., 2013)。また2017年には東側と北側におやつが置かれているとき、なぜか北側にあるおやつが偏好されるという奇妙な現象も報告されています。さらに直近の2018年には、匂いや視覚的情報を排除した状態でも、隠された磁石を見つけるよう訓練することができると報告されています(Martiniet al., 2018)。
今回の大規模な観察調査により、地球の磁力線が犬の排泄姿勢に大きな影響を及ぼす可能性が追認されました。また地中に磁石がある時に限り体軸が10度ほどずれるという事実から、足元の磁力が何らかの形で犬の磁気覚を狂わせている可能性も示唆されます。
知覚のメカニズムは不明
過去の調査と今調査の共通項は「メカニズムや目的がはっきりしない」という点でしょう。犬と同じイヌ科動物に属するキツネの場合、獲物と自分との水平方向の距離を測るため、目の中にあるクリプトクロム(Cryptochrome, 青色光受容体タンパク質)を利用してN極とS極を認識している可能性が示唆されています。また犬の祖先であるオオカミは非常に広い範囲を狩場としていますので、北と南が瞬時にわかる能力が備わっていれば、ハンティングの成功率が向上することは間違いないでしょう。犬の目にもキツネのような機能があるのかどうかは不明ですが、もしあるのだとすると地球の磁力線を何らかの視覚的情報として認識できているかもしれません。
犬がおしっこやうんちをする前、しきりにクルクル回る理由は地球の磁場を確かめて最も違和感のない位置を探しているからかもしれません。トイレまわりから磁力を持つものは排除したほうが良いでしょう。