詳細
調査を行ったのは「Embark Veterinary LLC」のチーム。ゲノムワイド関連遺伝子研究(GWAS)の調査パネルに参加した3,139頭の犬のDNAデータを元にし、いまだに不明な部分が多い青い目を作り出す遺伝子に関する検証を行いました。両目がブルーの犬73頭と片方だけブルーの犬83頭に絞り込んで詳しい比較調査を行ったところ、イヌ18番染色体のCFA18領域にある、ALX4ホメオティック遺伝子上流領域の重複遺伝子が目の色に関わっている可能性が浮かび上がってきたと言います。
さらに調査チームは全く別の2,912頭(すべて純血種)を対象とし、上記重複遺伝子がどの程度の割合で含まれているのかを調べました。その結果、およそ2%(63/2,912)が最低1本保有しており、うち90%がシベリアンハスキーだったと言います。その他の犬種ではアラスカン・クリー・カイ(2頭)、オーストラリアンシェパード(3頭)、ジャーマンシェパード(1頭)が確認されました。そして3頭を除いた全頭が両目ブルーもしくはバイアイ(片方だけブルー)だったと言います。
さらに遺伝子変異を保有していたのに目がブラウンだったシベリアンハスキー1頭とジャーマンシェパード1頭の詳しい追跡調査行ったところ、シベリアンハスキーは片方の親がブルーアイで、生まれた子供はブルーもしくはバイアイ、ジャーマンシェパードは父犬がバイアイで、生まれた子犬もバイアイだったとのこと。
こうした結果から調査チームは、18番染色体にあるALX4ホメオティック遺伝子が影響を受け、ALX4タンパクの調整が阻害されることで色素の生成が滞り、結果として目がブルーになるのではないかと推測しています。ただし変異遺伝子を保有しているにも関わらずブルーにならない個体がいることから、その他の調整遺伝子の存在が想定されるとも。 Direct-To-Consumer DNA testing of 6,000 dogs reveals 98.6-kb duplication causing blue eyes and heterochromia in Siberian Huskies
Petra E. Deane-Coe, Erin T. Chu, et al., bioRxiv, doi: https://doi.org/10.1101/247973
こうした結果から調査チームは、18番染色体にあるALX4ホメオティック遺伝子が影響を受け、ALX4タンパクの調整が阻害されることで色素の生成が滞り、結果として目がブルーになるのではないかと推測しています。ただし変異遺伝子を保有しているにも関わらずブルーにならない個体がいることから、その他の調整遺伝子の存在が想定されるとも。 Direct-To-Consumer DNA testing of 6,000 dogs reveals 98.6-kb duplication causing blue eyes and heterochromia in Siberian Huskies
Petra E. Deane-Coe, Erin T. Chu, et al., bioRxiv, doi: https://doi.org/10.1101/247973
解説
ブルーの目は青い色素が目の中に含まれているわけではなく、メラニン色素が極端に少ないため目の中に入った光がレイリー散乱という現象を起こすことで作り出されます。これは空が青く見えるのと同じ現象です。
人間においてはヨーロッパで起こった突然変異が美的な理由もしくは実利的な理由によって選好され現在のコーカシアンに残ったと考えられています。関連している遺伝子は「OCA2」(Oculocutaneous Albinism II Melanosomal Transmembrane Protein)で、メラニン色素の前駆物質であるチロシンの移送量が少なくなるため目の色と皮膚の色が同時に薄くなります。 犬におけるブルーの目はシェットランドシープドッグ、ウェルシュコーギーペンブローク、オールドイングリッシュシープドッグ、ボーダーコリー、シベリアンハスキーなどで見られます。シェットランドシープドッグやボーダーコリーに関しては被毛のマール(merle)と密接に関わっており、関連遺伝子はイヌ10番染色体の「PMEL17」(Premelanosome Protein)です。その他の犬に関してはパイボールド(白地に有色斑点)と密接に関わっており、関連遺伝子は「MITF」(Melanogenesis Associated Transcription Factor)です。ただしこちらは、たとえ関連遺伝子を保有していても発現する確率は低いとされています。 一方、シベリアンハスキーに関してはブリーダーの逸話から常染色体優性遺伝であることが確認されていたものの、具体的にどのような遺伝子が関わっているのかはよくわかっていませんでした。今回の調査により、18番染色体のALX4遺伝子が有力な候補ということになります。
ちなみに人間における皮膚の薄い色素(およびそれに伴う目のブルー化)は、緯度が高く天候が悪い地域に暮らしている人間が、紫外線からビタミンDを生成する際に有利に働いたのではないかと考えられています。シベリアンハスキーも緯度が高い地域で発展した犬種ですが、犬の皮膚では紫外線からビタミンDが生成されません。ですからなぜブルーの目が発生し、それが選好されたのかに関しては謎のままです。
人間においてはヨーロッパで起こった突然変異が美的な理由もしくは実利的な理由によって選好され現在のコーカシアンに残ったと考えられています。関連している遺伝子は「OCA2」(Oculocutaneous Albinism II Melanosomal Transmembrane Protein)で、メラニン色素の前駆物質であるチロシンの移送量が少なくなるため目の色と皮膚の色が同時に薄くなります。 犬におけるブルーの目はシェットランドシープドッグ、ウェルシュコーギーペンブローク、オールドイングリッシュシープドッグ、ボーダーコリー、シベリアンハスキーなどで見られます。シェットランドシープドッグやボーダーコリーに関しては被毛のマール(merle)と密接に関わっており、関連遺伝子はイヌ10番染色体の「PMEL17」(Premelanosome Protein)です。その他の犬に関してはパイボールド(白地に有色斑点)と密接に関わっており、関連遺伝子は「MITF」(Melanogenesis Associated Transcription Factor)です。ただしこちらは、たとえ関連遺伝子を保有していても発現する確率は低いとされています。 一方、シベリアンハスキーに関してはブリーダーの逸話から常染色体優性遺伝であることが確認されていたものの、具体的にどのような遺伝子が関わっているのかはよくわかっていませんでした。今回の調査により、18番染色体のALX4遺伝子が有力な候補ということになります。
ちなみに人間における皮膚の薄い色素(およびそれに伴う目のブルー化)は、緯度が高く天候が悪い地域に暮らしている人間が、紫外線からビタミンDを生成する際に有利に働いたのではないかと考えられています。シベリアンハスキーも緯度が高い地域で発展した犬種ですが、犬の皮膚では紫外線からビタミンDが生成されません。ですからなぜブルーの目が発生し、それが選好されたのかに関しては謎のままです。