詳細
調査を行ったのはドイツにあるルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンのチーム。動物病院において白内障と診断された犬たちの医療データを後ろ向きに調査し、病気のステージによってどの程度進行度に違いが見られるのかを検証しました。合計250頭の447眼を精査したところ、以下のような傾向が浮かび上がってきたといいます。
M.C. Fischer et al., Journal of Small Animal Practice (2018), DOI: 10.1111/jsap.12910
白内障のステージ
- 初期白内障水晶体の一部がうっすらと濁っている状態。
- 未熟白内障水晶体の一部が白濁している状態。
- 成熟白内障水晶体全体が完全に白濁した状態。
- 過熟白内障水晶体の白濁が進行し、融解が起こった状態。眼球の中に融けた残存物を見ることができる。
白内障の原因
- 老年性小型犬10歳以上、大型犬6歳以上をボーダーラインとする
- 糖尿病持病として糖尿病がある
- 二次性ブドウ膜炎、緑内障、原発性水晶体不安定、網膜変性が先行している
- 先天性水晶体の肥厚性血管膜、肥厚性の硝子体、水晶体欠損症、円錐水晶体、球形円錐水晶体など
- 外傷性眼球全体に強い力が加わったものは「打撲性」、眼球に穴が空いてしまったものは「穿孔性」
- 放射線悪性腫瘍の治療など頭部に放射線を照射した
- 遺伝性上記したどれにも当てはまらない
白内障の進行度
- 遅い進行「未熟」「成熟」「過熟」という各ステージをさらに「前期」「中期」「後期」というサブステージに細分したとき、1年でサブステージ1つ進行する状態
- 中等度の進行1年でサブステージ2つ進行する状態
- 早い進行1年でサブステージ3つ以上進行する状態
M.C. Fischer et al., Journal of Small Animal Practice (2018), DOI: 10.1111/jsap.12910
解説
全体平均で見たとき、半数を超える55.4%は非進行型、遅い進行が37.5%、中等度の進行が4.4%、早い進行が2.7%という内訳になりました。また白内障に伴う合併症はおよそ10%で確認され、最も多かったのはブドウ膜炎だったといいます。
遺伝性白内障
全体のおよそ半分にあたる48.9%を占めていた遺伝性白内障は、その半数(52.9%)が非進行型でしたが、残りの半数では大なり小なりの進行が見られました。ブドウ膜炎を始めとする合併症を予防するため、外科手術に備えておくことが重要だと推奨されています。
外傷性白内障
糖尿病性白内障
糖尿病性白内障は79.5%が成熟もしくは過熟状態で、その多くは早急な水晶体除去が必要だったといいます。また水晶体が残された15眼のうち13.7%が早い進行を見せたとも。過去の報告では糖尿病と診断された犬のうち50%が170日以内、80%が470日以内に白内障を発症するとされています。高血糖状態をコントロールできていれば進行を抑えられるという報告もありますので、糖尿病の犬においては飼い主による血糖コントロールが重要となるでしょう。進行が早いため、ひとたび発症した場合は水晶体除去を含めた外科的な介入を覚悟しなければなりません。