詳細
18世紀、ヨーロッパから北アメリカに輸入された「Feists」という名のテリア犬種にビーグル、ミニチュアピンシャー、イタリアングレーハウンドといった犬種をかけ合わせ、「ラットテリア」という新犬種が作出されました。そして1972年、この「ラットテリア」の中で、たまたま無毛状態で生まれてきた犬をもとにして作出されたのが「アメリカンヘアレステリア」だと言われています。上記2犬種は長らく同一と考えられていたことから、UKCでアメリカンヘアレステリアが公認されたのは2004年、AKCでは2013年と比較的最近のことです。
アメリカンヘアレステリアの無毛を作り出しているのは、同じく無毛で知られるチャイニーズクレステッドやメキシカンヘアレスとは違う劣性遺伝子であることは知られていましたが、具体的にどの遺伝子が関わっているのかに関してはよくわかっていませんでした。そこでアメリカ・ヒトゲノム研究所の調査チームは、アメリカンヘアレステリアだけが持つと考えられる無毛遺伝子を特定しようと試みました。
調査チームが11頭のアメリカンヘアレステリアを対象としたDNA検査を行ったところ、全頭において29番染色体上にある特定部分がホモ型(両親から同じ型を受け継いでいる状態)であることが確認されました。さらにそのうちの1頭を対象として他89犬種とゲノム比較を行ったところ、アメリカンヘアレステリアだけが保有しているホモ型の変異は合計3,994ヶ所あり、うちタンパク質の形成に影響を及ぼしていると考えられる部分が24ヶ所見つかったと言います。
さらに調査チームは24ヶ所の怪しい変異部分のち、29番染色体のホモ型リージョン4.8Mb地点に含まれていたフレームシフト欠失変異に目をつけ、解析を進めました。その結果、欠失しているのは29番染色体に含まれるSGK3遺伝子中の4塩基(TTAG)であることが明らかになったといいます。確認のため12頭のアメリカンヘアレステリア、および4頭のラットテリアを対象としたシークエンスを行い、29番染色体で見られた欠失変異の有無を確認した所、すべてのアメリカンヘアレステリアでホモ型の変異が確認されたのに対し、ラットテリアの中で同様の変異を保有しているものは1頭もいなかったと言います。
こうした事実から調査チームは、アメリカンヘアレステリアの無毛を形成しているのは29番染色体に含まれる「SGK3遺伝子」の欠失変異(SGK3Val96GlyfsTer50)であるという結論に至りました。SGK3遺伝子における欠失変異は、アミノ酸の読み込み能力に影響を及ぼし、出生後における毛包の発達を阻害すると考えられています。この知見は、アメリカンヘアレステリアで見られる「出生後2ヶ月程度でまばらに生えていた被毛が脱落する」という特徴にぴったり一致するものです。 The bald and the beautiful: hairlessness in domestic dog breeds
Heidi G. Parker, Alexander Harris, Dayna L. Dreger, Brian W. Davis, Elaine A. Ostrander Phil. Trans. R. Soc. B; DOI: 10.1098/rstb.2015.0488. Published 19 December 2016
さらに調査チームは24ヶ所の怪しい変異部分のち、29番染色体のホモ型リージョン4.8Mb地点に含まれていたフレームシフト欠失変異に目をつけ、解析を進めました。その結果、欠失しているのは29番染色体に含まれるSGK3遺伝子中の4塩基(TTAG)であることが明らかになったといいます。確認のため12頭のアメリカンヘアレステリア、および4頭のラットテリアを対象としたシークエンスを行い、29番染色体で見られた欠失変異の有無を確認した所、すべてのアメリカンヘアレステリアでホモ型の変異が確認されたのに対し、ラットテリアの中で同様の変異を保有しているものは1頭もいなかったと言います。
こうした事実から調査チームは、アメリカンヘアレステリアの無毛を形成しているのは29番染色体に含まれる「SGK3遺伝子」の欠失変異(SGK3Val96GlyfsTer50)であるという結論に至りました。SGK3遺伝子における欠失変異は、アミノ酸の読み込み能力に影響を及ぼし、出生後における毛包の発達を阻害すると考えられています。この知見は、アメリカンヘアレステリアで見られる「出生後2ヶ月程度でまばらに生えていた被毛が脱落する」という特徴にぴったり一致するものです。 The bald and the beautiful: hairlessness in domestic dog breeds
Heidi G. Parker, Alexander Harris, Dayna L. Dreger, Brian W. Davis, Elaine A. Ostrander Phil. Trans. R. Soc. B; DOI: 10.1098/rstb.2015.0488. Published 19 December 2016
解説
無毛犬種に関する歴史は古く、ダーウィンが著書「種の起源」(1859年)の中で歯と被毛が欠落したトルコの犬について記述しているくらいです。現在、アメリカの犬種協会であるAKCで公認されている無毛犬種、および公認団体は少ない(もしくは無い)ものの存在自体は確認されている無毛犬種をリスト化すると、以下のようになります。
世界の無毛犬種
- AKC公認無毛犬種アメリカンヘアレステリア・チャイニーズクレステッドドッグ・メキシカンヘアレスドッグ・ペルビアンインカオーキッド
- その他の無毛犬種アルゼンティニアンヘアレスドッグ(Argentine Pila dog)・エクアドリアンヘアレスドッグ(Ecuadorian Hairless dog)・アフリカンサンドドッグ(Abyssinian Sand Terrier)・ボリビアンヘアレスカーラ(Hairless Khala)