詳細
「免疫チェックポイント阻害療法」を理解するために必要な基礎知識は以下です。
こうした事実から調査チームは、PD-L1の発現率が高く、免疫による妨害をすり抜けて転移しやすい悪性黒色腫や乳腺腫のような質(たち)の悪いガンに対し、「免疫チェックポイント阻害療法」は新たな治療法として活躍してくれるだろうとしています。 Immunohistochemical Analysis of PD-L1 Expression in Canine Malignant Cancers and PD-1 Expression on Lymphocytes in Canine Oral Melanoma
基礎知識
- PD-1正式名称は「Programmed death-1」。免疫応答を調節するタンパク質の一種で、T細胞、B細胞、ミエロイド細胞、胸腺細胞といった免疫細胞の上で受容体として発現する。
- リガンドある受容体の中の特定の部位(リガンド結合サイト)に特異的に結合する物質の総称。
- PD-L免疫T細胞上のPD-1受容体に特異的に結合するリガンドで、「PD-L1」(PD-1 ligand 1)と「PD-L2」(PD-1 ligand 2)がある。「PD-L2」がマクロファージや樹枝状細胞に発現するのに対し、「PD-L1」は腫瘍細胞に発現する。
- ガン発生メカニズム異物を除去するT細胞上のPD-1受容体に、腫瘍細胞上のPD-L1が結合すると、免疫反応が抑制される。その結果、ガン細胞が体内から除去されず、増殖を繰り返して悪性腫瘍(ガン)となる。
- 抗PD-1抗体T細胞上のPD-1受容体といち早く結合し、腫瘍細胞のPD-L1やPD-L2と競合する。結果として、T細胞が本来の免疫機能を発揮し、腫瘍細胞を除去してくれるようになる。
腫瘍のPD-L1発現率
- 口腔悪性黒色腫=90%
- 乳腺腫=80%
- 骨肉腫=70%
- 血管肉種=60%
- 肥満細胞腫=60%
- 前立腺種=60%
こうした事実から調査チームは、PD-L1の発現率が高く、免疫による妨害をすり抜けて転移しやすい悪性黒色腫や乳腺腫のような質(たち)の悪いガンに対し、「免疫チェックポイント阻害療法」は新たな治療法として活躍してくれるだろうとしています。 Immunohistochemical Analysis of PD-L1 Expression in Canine Malignant Cancers and PD-1 Expression on Lymphocytes in Canine Oral Melanoma
解説
現在、世界中の製薬会社が躍起になって開発している免疫チェックポイント阻害剤には、以下のようなものがあります。
免疫チェックポイント阻害剤
上記したような免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L1発現率が高い悪性黒色腫(メラノーマ)、骨肉腫、血管肉腫、肥満細胞腫、乳腺腫、前立腺腫にはある程度の効果を示すものと予測されます。しかしその一方、今回の調査でPD-L1発現率がゼロであると判明した扁平上皮ガン、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、鼻腔ガン、軟部肉腫、組織球肉腫といった悪性腫瘍に対しては、阻害剤がターゲットとしているPD-L1自体が存在していないため、薬効を示さないと考えられます。ですから決して万能薬というわけではありません。