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犬の鼓腸~症状・原因から治療・予防法まで

 犬の鼓腸(こちょう)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い犬の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

犬の鼓腸の病態と症状

 犬の鼓腸とは、胃、小腸、大腸に余分なガスがたまった状態のことです。胃のガスが口から出た場合は「げっぷ」、腸のガスが肛門から出た場合は「おなら」と呼ばれます。 正常な腸と鼓腸を起こした腸の比較模式図  犬のおならには臭くないものと臭いものとがあります。前者は全体の9割以上を占め、窒素、酸素、水素、メタン、二酸化炭素といった空気と同じ成分で構成されています。後者は残りの1割弱で、成分はアンモニア、硫化水素、インドール、スカトール、揮発性の短鎖脂肪酸など、鼻にツンと来るものばかりです。中~大型犬が悪臭付きのおならを頻発すると、時として人間との共同生活に支障をきたすような問題にまで発展します。
 犬の鼓腸の主な症状は以下です。
犬の鼓腸の主症状
  • げっぷをする
  • おならが多い
  • おなかが鳴る
  • 嘔吐
  • 下痢

犬の鼓腸の原因

 犬の鼓腸の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
犬の鼓腸の主な原因
  • 空気を飲み込んだ 空気を飲み込むことで腸管内にガスがたまってしまうことがあります(呑気症)。特に早食いや大食いを習慣としている犬においては、食物と一緒に空気も飲み込んでしまう傾向がありますので危険です。
  • 腸内でガスが生成された 犬の腸内には「腸内細菌」と呼ばれる多種多様な細菌が生息しています。これらの細菌は、犬の酵素では消化しきれなかった「食物繊維」を栄養源として生きており、副産物として様々な気体を生成します。食物繊維が多すぎたり、腸内細菌が多すぎたりすると、過剰に生産されたガスが腸内に溜まり、鼓腸を発症します。
 犬と猫は「乳糖不耐症」(にゅうとうふたいしょう)という体質を持っています。これは、炭水化物の一種である「ラクトース」(乳糖)を分解する「ラクターゼ」という酵素を十分に持っていないため、ラクトースを含んだ乳製品をうまく分解できない状態のことです。分解できるのは、体重1kg当たり1.3g程度が限界で、それ以上になると未分解のラクトースが下痢を引き起こしたり、腸内細菌に分解されてガスの原料になってしまいます。

犬の鼓腸の治療

 犬の鼓腸の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
犬の鼓腸の主な治療法
  • 食事内容を変える 鼓腸を予防する際の第一の選択肢は、ガスの発生を促進させている食事内容を変更することです。具体的には、食物繊維を減らす、乳製品を食べさせない、腐ったものを食べさせないなどです。またフードを変更する際は、消化不良を避けるため、最低でも1週間かけてゆっくり行うようにします。
     なお食物繊維とは、腸内微生物でしか分解されない物質の総称であり、代表的なものを発酵の速いものから挙げると、ペクチン(植物の細胞壁成分)、グアガム(グアー豆の胚乳部)、大豆、ふすま(穀物を精白した際に出る果皮、種皮、胚芽など)、ビートパルプ(サトウダイコンから砂糖を抽出したあとに残る出涸らし)、大豆の殻、ピーナツの殻、セルロース(植物の細胞壁成分)となります。
  • 食餌の仕方を変える 食餌の仕方を変えるだけで鼓腸を予防できることがあります。具体的には、早食いできなくする、運動直後の給餌を辞めるなどです。早食いを防止させる際は、一気食いできないようにデザインされた食器を用いたり、エサをシートの上にばらまくように置いてゆっくり食べさせるなどの方法があります。