シンパリカ®とは?
「シンパリカ®」とはサロラネル(sarolaner)を有効成分とする犬向けのノミ・ダニ駆除製品。日本国内ではチュアブル(経口投与式)が動物医薬品として認可されています。
サロラネルの効果
サロラネルの安全性
サロラネルは節足動物の神経細胞に特異的に結合するよう開発されているため、人や犬猫を始めとする哺乳動物に対しては比較的安全な成分と考えられています。ラットを対象とした急性毒性試験では、経口投与による半数致死量(LD50)が体重1kg当たり783mg、経皮吸収によるLD50が2,020mg超と推計されています。また30日間に渡る反復経口投与試験から導き出されたNOAEL(何の影響も見られない最大量)は体重1kg当たり1日0.233mgです。以下では犬を対象として行われた毒性試験の結果をご紹介します(:EMA datasheet)。
サロラネルの毒性
- 子犬・経口毒性生後8週齢の子犬に対し、体重1kg当たり4mg、12mg、20mgのサロラネルを1ヶ月に1回のペースで合計10回連続投与した。推奨用量の3倍に相当する12mgグループでは一部で振戦(震え)と運動失調(足元フラフラ)が観察され、5倍に相当する20mgグループでは振戦、運動失調のほかけいれん(ひきつけ)も見られた。症状は投与から24時間以内に出現し、自然回復した。神経学的所見はすべて、犬が6ヶ月齢未満である4回目投与までの期間だけ認められた。一方、推奨用量である2~4mgグループでは何ら神経系の副作用は見られなかった。
- コリー・経口毒性MDR1遺伝子に変異を抱え、アベルメクチン系薬剤に感受性を示すコリーを対象とし、最大で推奨用量の3倍に相当する体重1kg当たり12mgのサロラネルを2日間連続で経口投与したが、有害反応は観察されなかった。
サロラネルの危険性・副作用
サロラネルは実験室レベルでは比較的安全な成分と判断されているものの、市場での流通が始まってほどない2018年、アメリカ食品医薬品局(FDA)がイソキサゾリン系のノミダニ駆除剤が一部の犬や猫に対して神経系の副作用を引き起こすとして公式の警告を発しました。具体的な症状は筋肉のけいれん、全身の震え、運動失調、発作・ひきつけなどで、以下の商品に対して注意を呼びかけています(カッコ内は原因成分)。
またサロラネルを含むイソオキサゾリン系の成分は、アメリカやヨーロッパで行われた副作用事例の統計調査を通じ、哺乳動物(犬・猫・人間)に対して想定以上の毒性を発揮する危険性が指摘されています。詳しくは以下のページで解説してありますのでご参照ください。
日本国内における副作用は、死亡例を含めたものが動物医薬品データベース内でちらほらと報告されています。しかしどのケースも製品との因果関係があやふやだったり、使用法を遵守しないいわゆる「オフラベル」の使い方が原因になった可能性もあるため、本当に引き金になったのかどうかは不明です。オフラベルの一例を挙げると「用量を守らなかった」「産まれて間もない若齢の犬に使った」「使用期限の過ぎた古い商品を使った」などです。
シンパリカ®
シンパリカ®の使い方
- いつから使える?使用条件は8週齢以降および体重は1.3kg以上とされています。ただし年齢や体重基準を満たしていても、交配予定の犬や妊娠・授乳中の犬に対する安全性は保証されていません。
- 使用頻度は?効果が1ヶ月であることから毎月の使用が望ましいとされています。ただし反復投与する場合は最低でも1ヶ月開けるよう指示されています。
- 使用期間は?ノミやダニは通年性で生息していますので1年中使用することが望ましいとされています。
- 料金は?動物病院、犬の体の大きさ(体重)、体重に連動した錠剤のサイズ、使用頻度によって合計費用は変動しますが、病院で処方される1錠の料金は一番小さい5mg錠なら1,400~1,700円程度、一番大きい80mg錠なら1,800~2,100円程度です。なお要指示薬には指定されていないものの、獣医師による診察と処方が理想とされます。
- 与え方は? 直接、もしくはフードに混ぜて経口投与します。食前・食後の指定はありません。
- 使用量は?
有効最低量は体重1kg当たり2mgとされており、犬の体重に合わせて以下のような使用基準が設けられています。なお体重が60kg超の場合は「シンパリカ80mg錠」と「シンパリカ40mg錠」に加え、別の1錠を体重に合わせて与えます。
✓1.3kg~2.6未満→5mg錠
✓2.6kg~5.1kg未満→10mg錠
✓5.1kg~10.1kg未満→20mg錠
✓10.1kg~20.1kg未満→40mg錠
✓20.1kg~40.1kg未満→80mg錠
✓40.1kg~60.1kg未満→40mg+80mg錠 - 使用上の注意は?使用する際の注意点は「用法(8週齢以降)や用量を厳守する」「獣医師の指示の元で与える」「犬以外には使用しない」「使用期限が過ぎたものを使わない」などです。スポット式(滴下)ではないので、投与の前後におけるお風呂やシャンプーの制限はありません。注意書きではてんかん発作の病歴がある犬への投与は慎重に行うよう記されています。またタンパク結合率が高い他の薬剤と併用した場合、競合してしまう可能性が示されています。具体的には非ステロイド性抗炎症薬、ループ利尿剤、炭酸脱水素酵素阻害剤、一部のACE阻害剤、抗凝固剤などです。
シンパリカ®の効果
以下はノミやダニに対する「シンパリカ®」(サロラネル)の駆虫効果を検証した調査結果です。
ネコノミへの即効性と持続性
犬たちを100匹のネコノミに曝露した上でランダムで2つのグループに分け、一方にだけサロラネル(2mg/kg)を経口投与し効果を比較検証しました。初回投与から1週間に1回の割合でネコノミに反復曝露し、曝露から3→4→8→12時間後のタイミングで体表生存数をカウントしたところ、8時間以上経過したタイミングにおける駆除率がどの観察ポイントにおいても98%以上だったといいます。また初回投与から殺ノミ効果が現れ始めるまでの時間は3~4時間だったとも。
こうした結果から、サロラネルを1回投与すればおよそ8時間後から十分な殺ノミ効果を発揮し始め、その効果は28日間持続するとの結論に至りました(:R.H.Six, 2016)。
こうした結果から、サロラネルを1回投与すればおよそ8時間後から十分な殺ノミ効果を発揮し始め、その効果は28日間持続するとの結論に至りました(:R.H.Six, 2016)。
ネコノミ・フィールド調査
アメリカ国内にある19の動物病院を受診し、ネコノミの寄生が確認された合計479頭のペット犬(293世帯)をランダムで2つのグループに分け、一方にだけサロラネル(2~4mg/kg)を30日に1回の割合で合計3回経口投与しました。薬剤の嗜好性は高く、91.5%では飼い主の手もしくは餌から自発的に摂取したといいます。またノミの体表生存数とそれに関連したノミアレルギー性皮膚炎の重症度を規定のタイミングで評価したところ、生存ノミの幾何平均数に関しては初回投与から14日後における減少率が99%超に達し、この数値はその他のすべての観察ポイントにおいて維持されたとも。さらにノミ生息数の減少に連動する形でノミアレルギー性皮膚炎の症状にも改善が見られました。試験期間中、投与に関連した重大な副作用および他の駆虫薬との薬効的な競合は見られなかったそうです(:R.H.Six, 2015)。
ダニへの即効性と持続性
犬たちを成熟した50匹のダニ(シカダニ、マダニ、ガルフコーストダニのいずれか)に曝露した上でランダムで2つのグループに分け、一方にだけサロラネル(2mg/kg)を経口投与し、殺ダニ効果を比較検証しました。初回投与から2→7→14→21→28→35日後のタイミングで繰り返しダニに曝露し、曝露から4→8→12→24時間後のタイミングで体表生存数をカウントした結果、初回投与から12時間経過したタイミングにおける駆除率はシカダニが99.2%、マダニが90.1%、ガルフコーストダニが99.2%だったといいます。また24時間経過時のそれはどれも100%に達したとも。投与から28日後の観察では、再暴露から24時間後における駆除率が89.6~98.7%に保たれていたとのこと。
こうした結果から、サロラネルを1回投与すればおよそ12時間後から十分な殺ノミ効果を発揮し始め、その効果が28日間は持続するとの結論に至りました(:R.H.Six, 2016)。
こうした結果から、サロラネルを1回投与すればおよそ12時間後から十分な殺ノミ効果を発揮し始め、その効果が28日間は持続するとの結論に至りました(:R.H.Six, 2016)。