フードに混ぜて薬を飲ませる
犬に薬(錠剤)を飲ませる時の最も簡単な方法は、フードに混ぜるというものです。ドライフードもしくはウェットフードの中に薬を混ぜ込み、そのまま食べさせてしまいます。犬にとっても、飼い主にとってもストレスの少ない最も簡便な方法といえるでしょう。
【画像元】How to learn giving dog medications
投薬の注意!
↓NEXT:ピルポケットでの投薬
薬には食前に投与するタイプ、食事とともに投与するタイプ、食事の後に投与するタイプとがあります。フードに混ぜるという方法が使えるのは、食事とともに与えるという指示が出された薬だけです。
錠剤は体内における吸収速度を計算した上で製造されています。飼い主の自己判断で粉々に砕いてしまうと消化器における吸収速度が変わり想定していたものとは別の作用が引き起こされるかもしれません。錠剤は砕かないのが基本です。
ピルポケットに入れる
投薬の成功率を高めるためのアイテムとしてはピルポケットがあります。これは犬が好きな匂いや味で薬を包み込んでしまうというものです。人間で言う「糖衣錠」に近いでしょう。
市販品のピルポケット
市販のピルポケットは袋状に成型されたトリーツ(おやつ)という形で販売されています。穴の中に錠剤を詰め込み、ポケットを閉じて薬の臭いを包み隠してしまいます。そのままおやつとして犬に与えれば投薬完了です。
【画像元】Giving pills to your Dog or Cat made easy with Greenies Pill Pockets!!/YouTube
手作りのピルポケット
市販のピルポケットを犬が好まなかったり、大きすぎて飲み込めないことがあります。そんなときは飼い主自らがピルポケットを作ることもできます。
犬の好物がソーセージの場合は、中央に切れ目を入れ、中に錠剤を隠してしまいましょう。そのまま犬が食べてくれたら大成功です。 【画像元】Willard Vet Tutorial: Giving your dog pills made easy 犬の好物が甘い物の場合は、ピーナツバターに小麦粉などを混ぜて粘土状にします。中心にストローなどで穴を開け、そこに錠剤を詰め込んで丸めてしまえば完了です。犬の体のサイズに合わせてポケットの大きさを調整しましょう。 【画像元】DIY Pet Pill Pockets/YouTube
犬の好物がソーセージの場合は、中央に切れ目を入れ、中に錠剤を隠してしまいましょう。そのまま犬が食べてくれたら大成功です。 【画像元】Willard Vet Tutorial: Giving your dog pills made easy 犬の好物が甘い物の場合は、ピーナツバターに小麦粉などを混ぜて粘土状にします。中心にストローなどで穴を開け、そこに錠剤を詰め込んで丸めてしまえば完了です。犬の体のサイズに合わせてポケットの大きさを調整しましょう。 【画像元】DIY Pet Pill Pockets/YouTube
投薬の注意!
↓NEXT:手での投薬
ピーナツバターを用いる際はキシリトールが入っていないことを確認してください。海外では中毒の事例が報告されています。
オブラートや人間用のピルカプセルは、食道の途中で溶けて引っかかってしまうことがあります。中の薬が溶け出して食道炎つながる危険性がありますので使用は控えたほうがよいでしょう。
手で薬を飲ませるコツ
投薬の理想は、飼い主自らが犬の口を開けて薬を放り込むというやり方です。投薬のタイミングを正確にコントロールできるという大きなメリットを持っています。その一方、しつけが行き届いていない犬の場合は暴れて投薬自体が失敗したり、飼い主が手を噛まれてしまう危険性があります。そうした場合に備え、以下のようなコツを抑えておきましょう。
嫌がる犬のしつけ方
犬に薬を飲ませる時の基本姿勢はおすわりです。まずはおすわりのしつけ参考にしながらマスターしておきましょう。
犬の口を開ける時は、必ずマズル(鼻から口にかけての部分)にタッチしなければなりません。ボディコントロールのしつけを参考にして、口元への接触に十分慣らしておきましょう。このしつけを怠ると、犬が反抗して手を噛まれてしまうかもしれません。
上のイラストで示したように、寝そべった状態とおすわりの状態とでは食道の角度が大きく変わります。おすわりの姿勢をとっていた方が重力の作用で飲み込んだ薬がスムーズに胃袋まで送り込まれます。これがおすわりを基本姿勢とする理由です。犬の口を開ける時は、必ずマズル(鼻から口にかけての部分)にタッチしなければなりません。ボディコントロールのしつけを参考にして、口元への接触に十分慣らしておきましょう。このしつけを怠ると、犬が反抗して手を噛まれてしまうかもしれません。
犬の口を開けるコツ
犬におすわりをさせ、飼い主は横に位置取ります。協力者がいる場合は犬の体を抑えてもらってもよいでしょう。犬が驚かないようにゆっくりと手を顔に近づけ、犬歯の後ろにあるセーフティーゾーンをつかみます。ちょうど指輪ケースのふたをパカッと開けるように上に持ち上げましょう。
【画像元】How to learn giving dog medications
薬(錠剤)の持ち方
あごをつかんでいない方の手では、人差し指と親指で錠剤をつまみます。フリーになっている薬指(もしくは中指)を犬の下あごの切歯(門歯)にあてがい、下に引きおろしましょう。この動作は上あごを持ち上げる動作と同時に行ってください。すると自然に犬の口が大きく開きます。
投薬の仕方
犬の口を大きく開けたら、人差し指と親指でつまんでいた錠剤を舌のなるべく奥の方にポトンと落とします。通常は嚥下反射が起こり自発的に飲み込むはずです。念のため犬の口を閉じてのど元をさすり、のど仏が下がるのを確認してください。
【動画】犬に薬を飲ませる方法
投薬の注意!
↓NEXT:ピルガンでの投薬
飲み込んだことを確認しないと、飼い主が見ていないところで吐き出して薬の効果が台無しになってしまうかもしれません。また後で述べるシリンジで投薬する方法を使って口の端から水を流し込むのも効果的です。
ピルガンで投薬する
ピルガン(ピルポッパー)とは錠剤を口の奥の方に落とすときに使う専用アイテムのことです。注射器のような器具の先端にグリップが付いており、そこに錠剤を挟んで犬の口の中に押し込む仕組みになっています。噛まれる危険性がある時や、犬の口を大きく開けるのが難しいときに用います。
【画像元】How to Give Pills to a Dog
↓NEXT:シリンジでの投薬
シリンジやスポイトで投薬する
液状薬、粉末薬、水を飲ませる時はスポイトやシリンジ(注射器)を用います。犬の口を開けるコツで述べた方法で、犬の上あごを持ち上げ、犬歯の後ろにあるセーフティーゾーンをつかんでください。そのまま上唇をめくるように持ち上げたら歯と歯の間に大きな隙間が見えてきます。そこにスポイトやシリンジの先端を差し込み、喉の奥に向かって液体を注入しましょう。
【画像元】How to learn giving dog medications
投薬の注意!
↓NEXT:投薬の注意点
錠剤を砕いてシロップなどに混ぜて注入する際は、その薬がそもそも砕いてよいものかどうかを必ず担当獣医師に確認してください。薬の形状が変わることで体内における吸収速度まで変わり、効果が半減してしまうことがあります。
厳守!投薬の注意点
犬が持病を抱えており、獣医さんから定期的に薬を処方してもらっている場合、飼い主が投薬管理を行うことになります。その際、薬の効果を最大限に発揮するため、知っておかなければならない知識があります。
投薬のタイミング
獣医さんから薬を処方されると、同時に投薬のタイミングについて指示が出ます。このタイミングを間違えたりおろそかにしてしまうと、薬の持つ効果が最大限に生かされないどころか、時として副作用を引き起こします。投薬指示は必ず守るようにしましょう。
一般的な投薬のタイミング
- 食前(しょくぜん)食前とは食事を与える30分前に薬を飲ませるという意味です。制酸剤や胃粘膜保護薬、糖尿病用の薬などの多くは食前指示が出されます。
- 食後(しょくご)食前とは食事を与えてから30分後に薬を飲ませるという意味です。この指示が出される薬剤の多くは、溶けると胃を刺激する性質があります。ですから、薬の内服に先立って食事を胃に入れておけば、後から入った薬が食事と混ざることにより、胃に対する刺激が緩和されるというわけです。なお、この指示を守らないと急性胃炎などを引き起こしますので注意してください。
- 食間(しょっかん)食間とは食事を与えてから2時間後に薬を飲ませるという意味です。この種の薬剤は胃に対する刺激が少ないため、胃に何も入っていないときの方が早く薬効を示します。胃痛や吐き気に対する薬の多くは、食間薬です。
薬の保管方法
薬には適切な保管方法というものがあります。以下は代表的な例ですが、指示の有無にかかわらず、キッチン周りやお風呂場付近など、湿度や温度の高い場所での保管は避けるようにします。
薬の保管方法
- 冷蔵保存4度以下での保存/冷蔵庫が無難
- 冷所保存15度以下での保存/冷蔵庫が無難
- 室温保存1~30度での保存/室内の直射日光の当たらない場所
- 冷暗所保存15度以下で、太陽光の届かない場所での保存/冷蔵庫が無難
老犬に対する薬の効き目
犬が年老いてくると、薬が本来持っている薬効が十分に発揮されないという現象もしばしば見受けられます。主な原因は以下です。
老犬に薬が効かない訳
- 胃液の分泌低下
- 胃腸の蠕動運動減弱
- 腸粘膜の細胞数減少
- 脂肪の増加・筋肉量の減少
- 肝機能の低下
危険!薬の誤飲事故
2016年、イギリスの保険会社「MORE THAN」が英国内に暮らす犬や猫の飼い主1,000人に対して行ったアンケート調査では、約9%の飼い主が人間用の薬をペットに与えているという事実が明らかになっています。ペットに投与される人間用医薬品として挙がってきた名前の中には、命を奪いかねない危険なものも含まれていました。具体的には以下です。
犬と猫の中毒ハンドブック
多くの飼い主が人間用医薬品をペットに誤投与している(子猫のへや)
人間用の薬が動物に転用されることがあるのは確かです。しかし使用してよいかどうかは飼い主が自己判断するのではなく、必ず担当獣医師に判断してもらって下さい。
医薬品によるペットの中毒
- 抗ヒスタミン薬ペットにおける抗ヒスタミン剤中毒の大部分は軽度で鎮静や運動失調などで終わることが多い。しかし肝機能障害を抱えている場合、中毒効果が高まる。
- アセトアミノフェン臨床症状はチアノーゼ、呼吸困難、顔面浮腫、抑うつ、低体温、嘔吐など。これらの症状は進行し、衰弱、昏睡、最終的には死に至ることもある。猫においては46mg/kg、犬においては100mg/kg程度で中毒を起こすと推定される。
- イブプロフェン主な臨床症状は腹痛、貧血、黒色便、吐血、胃腸過敏、胃潰瘍など。2015年4月には、イブプロフェンと同じく非ステロイド系抗炎症薬に属する「フルルビプロフェン」を舐めたことによる猫の死亡例が確認されたことから、アメリカ食品医薬品局(FDA)が緊急の警告を発している。
- アスピリン中毒症状は抑うつ、嘔吐、食欲不振、呼吸速迫、発熱などで、摂取後4~6時間で出現する。中枢神経が抑制されると筋肉の運動失調を招き、昏睡から死に至ることもある。猫における中毒量は25mg/kg/日、犬では50mg/kg/日程度。
人間用の薬が動物に転用されることがあるのは確かです。しかし使用してよいかどうかは飼い主が自己判断するのではなく、必ず担当獣医師に判断してもらって下さい。
犬の中毒に関しては犬にとって危険な毒物でも詳しく解説してあります。