皮膚無力症の病態と症状
犬の皮膚無力症(cutaneous asthenia)とは結合組織の一種であるコラーゲン線維に異常が起こり、十分に生成されなかったり生成されても正常ならせん構造を形成しないため、皮膚が異常に伸びたり脆(もろ)くなったりする遺伝性の病気。似たような病気は人間、ウマ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ウサギ、ミンクなどで確認されています。ただし発症因子や症状が全く同じではないため、呼び方は以下のように様々です。
病気は成長してからある日突然発症するのではなく、多くの場合生後まもなく現れ始めます。主症状は以下です。
犬における症例自体が少ないためか、人間のエーラス・ダンロス症候群で確認されている偏頭痛、心臓の弁逸脱、肺動脈狭窄、僧帽弁逆流、大動脈瘤、心房中隔欠損、ファロー四徴症などは犬では確認されていません。一方、一部の症例では鎖骨下動脈の血管壁に弱化が見られたという報告あります(
:Uri, 2015)。
- 人間→エーラス・ダンロス症候群
- ウシ・ヒツジ→皮膚脆弱症
- ウマ→HERDA
- イヌ・ネコ→皮膚無力症

皮膚無力症の主症状
- 皮膚が異常に伸びる
- 皮膚がすぐに裂ける
- 高齢になってからは顔の皺、腹部のたるみ
- 関節可動域異常
- 傷が治りにくい
犬における症例自体が少ないためか、人間のエーラス・ダンロス症候群で確認されている偏頭痛、心臓の弁逸脱、肺動脈狭窄、僧帽弁逆流、大動脈瘤、心房中隔欠損、ファロー四徴症などは犬では確認されていません。一方、一部の症例では鎖骨下動脈の血管壁に弱化が見られたという報告あります(

皮膚無力症の原因
皮膚無力症の原因は遺伝子の変異です。劣性遺伝の症例も優性遺伝の症例も混在しています。遺伝形式が完全に解明されたわけではありませんが、変異部は性染色体ではなく常染色体上にあり、発症頻度に性差はありません。さまざまな犬種における症例報告があるものの、統計的に計算できるほど多くの症例が蓄積していないため好発疾患なのかどうかはわかっていません。
COL5A1遺伝子の変異
ADAMTS2遺伝子の変異
TNXB遺伝子の変異
皮膚無力症の検査・診断
犬の皮膚無力症は皮膚伸長テストと顕微鏡を用いた組織学的な検査によって診断します。
皮膚伸長テスト
皮膚伸長テストでは、後頭稜~しっぽの付け根までの長さを「1」としたとき、背中~腰の皮膚を限界まで上に持ち上げたときの長さがどの程度になるかを計測します。
皮膚伸長インデクス(SEI)と呼ばれるこの指標の犬における目安は8~15%未満です。背中の皮膚が異常に伸び、17~25%に達するような場合はコラーゲン線維の生成異常による皮膚無力症が強く疑われます。
