ソルガムきびの成分
ソルガムきび(sorghum)は3700~4000年前に栽培が始まったとされる五大穀物の一種。日本語では「たかきび」や「モロコシ」などと呼ばれます。2017年のFAOの推計では、穀類の中で5番目に栽培量が多いとされ、熱帯~亜熱帯地方を中心に世界中で年間およそ5700万トンが生産されています。
アメリカ、メキシコ、オーストラリアでは主に家畜飼料として利用されていますが、アレルギーの原因になる小麦グルテンを含んでいないこと、栄養価の高いでんぷん質が多いこと、生理活性作用を有するフラボノイドやタンニンなどのフェノール類を多く含んでいることなどが注目され、近年は人間向けのお茶、パン、肉製品などに用いられるケースも増えています。
ソルガムきびの穀粒は胚乳、胚芽、糠層からなっており一番外側にある糠層内のフェノール類の種類や濃度によってホワイト、イエロー、レッド、ブラウン、ブラックの5つに分類されます。それぞれの特徴は以下です。
ソルガムきびの穀粒は胚乳、胚芽、糠層からなっており一番外側にある糠層内のフェノール類の種類や濃度によってホワイト、イエロー、レッド、ブラウン、ブラックの5つに分類されます。それぞれの特徴は以下です。
ソルガムきびの種類(色別)
- ホワイトソルガムフェノール類が少なくタンニンがほとんど含まれない
- イエローソルガムフラボノイドが多くフェノール類はホワイトソルガムよりわずかに多い
- レッドソルガムフェノール類が中等度含まれるがタンニンはない
- ブラウンソルガムタンニンが最も多く「タンニンソルガム」の異名をもつ
- ブラックソルガムレッドの亜種でフェノール類が多い
ソルガムきびの栄養成分
- 炭水化物ソルガムきびの胚乳に含まれる炭水化物の量は種類によって32.1~72.5%と大きな差があります。でんぷんはアミロースとアミロペクチンがメインで、難消化性デンプンが多いことから穀類の中では最も消化性が悪いとされています。
- 脂質ソルガムきびに含まれる脂質は3.5%程度で、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの多価不飽和脂肪酸が多く含まれます。
- タンパク質胚乳部100gには中炭水化物72.1%、水分12.4%、タンパク質10.6%が含まれています(※湿重量中/平均値)。タンパク質の70%を構成しているのはカフィリン(α-, β-, γ-, δ)と呼ばれるタンパク質で、その他グロブリン、グルテリン、アルブミンなど非プロラミンタンパクが少量含まれます。小麦のようにグルテンを含まないため、アレルギーやセリアック病の心配がないとされています。またカフィリンは消化酵素との反応が悪く、タンニンやでんぷんとの相互作用で代謝が阻害されるためなかなか消化されません。しかしこの消化の悪さが逆に、肥満や糖尿病予防になるのではないかと期待されています。
- ビタミン類ソルガムきびにはビタミンB群のほか脂溶性ビタミン(A・D・E)が含まれます。
- ミネラルソルガムきびにはカリウム、リン、マグネシウム、亜鉛などのミネラルが含まれます。
- 食物繊維質ソルガムきびに含まれる繊維質(消化されない炭水化物)は種類によって6~15%と幅があり、平均すると6.7%くらいです。不溶性繊維が75~90%と大部分を占め、粒の種皮や胚乳の壁に多く含まれます。具体的な構成成分はアラビノキシラン(グルクロノアラビノキシランやp-クマル酸、フェルラ酸)やベータグルカンです。
ソルガムきびは安全?危険?
人間界においてソルガムきびが健康食品の原料として着目されている理由は、穀粒に少しだけ生理活性成分が含まれているからです(:Xiong , 2019)。
例えば「抗酸化作用」に関しては、ソルガムきびから抽出したフェノール類は主要穀類(お米・小麦・とうもろこし)よりも強い抗酸化能をもっており、ブルーベリーやいちご、ブロッコリーよりも高い値を示したとか、3-デオキシアントシアニジンが抗酸化酵素(NQO)を活性化することで間接的に活性酸素の量を減らしている可能性があるとの報告があります。
また「抗炎症作用」に関しては、フェノール酸(没食子酸やフェルラ酸)がCOX(シクロオキシゲナーゼ)-2の活性を抑えたり、腫瘍壊死因子-αの産生を阻害するとか、フラボン(アピゲニンやルテオリン)がCOX-2の活性を抑え、炎症促進成分を作り出すNF-κBを阻害するとの報告があります。さらに3-デオキシアントシアニジンがCOX-2やプロスタグランジン-E2の産生を抑制する可能性も示されています。
上記したようになんとなく健康に良さそうなソルガムきびですが、果たしてドッグフードとして犬に与えても大丈夫なのでしょうか?もし大丈夫だとするとどのくらいの量が適切なのでしょうか?
例えば「抗酸化作用」に関しては、ソルガムきびから抽出したフェノール類は主要穀類(お米・小麦・とうもろこし)よりも強い抗酸化能をもっており、ブルーベリーやいちご、ブロッコリーよりも高い値を示したとか、3-デオキシアントシアニジンが抗酸化酵素(NQO)を活性化することで間接的に活性酸素の量を減らしている可能性があるとの報告があります。
また「抗炎症作用」に関しては、フェノール酸(没食子酸やフェルラ酸)がCOX(シクロオキシゲナーゼ)-2の活性を抑えたり、腫瘍壊死因子-αの産生を阻害するとか、フラボン(アピゲニンやルテオリン)がCOX-2の活性を抑え、炎症促進成分を作り出すNF-κBを阻害するとの報告があります。さらに3-デオキシアントシアニジンがCOX-2やプロスタグランジン-E2の産生を抑制する可能性も示されています。
上記したようになんとなく健康に良さそうなソルガムきびですが、果たしてドッグフードとして犬に与えても大丈夫なのでしょうか?もし大丈夫だとするとどのくらいの量が適切なのでしょうか?
嗜好性
栄養素の消化率
オーストラリア・マードッグ大学の調査チームは、炭水化物源としてソルガム、とうもろこし、お米を含んだ3種類のドッグフードを用意し、30頭の犬たちにそれぞれ13日間給餌して最後の5日間で便サンプルを採取しました。
試験の結果、全消化管におけるでんぷんの見かけの消化率はどのフードも100%だったといいます。それに対し脂質、タンパク質、熱量の消化率はお米が最大でソルガムととうもろこしは統計的に低かったとも。さらに1トン当たり1Lの割合で人工の炭水化物消化酵素を添加してもこの値は変わらず、可消化エネルギーに関してはお米が0.3~0.8 MJ DE/kg高かったそうです。便pHおよび便スコアはお米が高かったものの(=便が緩かった)、後者に関しては人工消化酵素の添加によってフード間の格差はなくなりました(:Twomey, 2003)。
試験の結果、全消化管におけるでんぷんの見かけの消化率はどのフードも100%だったといいます。それに対し脂質、タンパク質、熱量の消化率はお米が最大でソルガムととうもろこしは統計的に低かったとも。さらに1トン当たり1Lの割合で人工の炭水化物消化酵素を添加してもこの値は変わらず、可消化エネルギーに関してはお米が0.3~0.8 MJ DE/kg高かったそうです。便pHおよび便スコアはお米が高かったものの(=便が緩かった)、後者に関しては人工消化酵素の添加によってフード間の格差はなくなりました(:Twomey, 2003)。
便の硬さへの影響
オーストラリア・マードッグ大学の調査チームは、18頭の犬たち(1~6歳)をランダムで3つのグループに分け、フード中の炭水化物(でんぷん)にお米、ソルガム、とうもろこしという違いを設けた上で12日間に渡る給餌試験を行いました。
給餌試験の最後の5日間で採取した便サンプルを合わせて硬さを評価したところ、緩さに関しては原材料間で「お米>とうもろこし>ソルガム」というわずかな格差が見られたものの、どのフードも便クオリティは適正範囲内だったといいます。タンパク質の消化率と総エネルギー消化率に関しては「お米>ソルガム>とうもろこし」という格差が認められられ、また脂質の消化率に関しては「お米=とうもろこし>ソルガム」という格差が確認されました。でんぷんの消化率に関してはどのグループも100%で格差は見られず、また栄養物の消化性はわずかな格差(お米>ソルガム>とうもろこし)が見られたものの、どのフードも平均値以上だったそうです。
こうした結果から調査チームは、ソルガムがエクストルード製法によって十分にゼラチン化されれば、お米やとうもろこしと遜色ない消化性を有しているとの結論に至りました(:Twomey, 2002)。
給餌試験の最後の5日間で採取した便サンプルを合わせて硬さを評価したところ、緩さに関しては原材料間で「お米>とうもろこし>ソルガム」というわずかな格差が見られたものの、どのフードも便クオリティは適正範囲内だったといいます。タンパク質の消化率と総エネルギー消化率に関しては「お米>ソルガム>とうもろこし」という格差が認められられ、また脂質の消化率に関しては「お米=とうもろこし>ソルガム」という格差が確認されました。でんぷんの消化率に関してはどのグループも100%で格差は見られず、また栄養物の消化性はわずかな格差(お米>ソルガム>とうもろこし)が見られたものの、どのフードも平均値以上だったそうです。
こうした結果から調査チームは、ソルガムがエクストルード製法によって十分にゼラチン化されれば、お米やとうもろこしと遜色ない消化性を有しているとの結論に至りました(:Twomey, 2002)。
腸内フローラへの影響
抗酸化作用
カンザス州立大学の調査チームは全粒ソルガム、粗挽きソルガム、粉末ソルガムを含んだフードと比較対照フード(お米+とうもろこし+小麦)を用意し、ビーグル12頭(1~3歳/平均10.6kg)を対象とした給餌試験を行いました。
4つのフードを14日間ずつ給餌し、最後の5日間で便サンプルを採取すると同時に、最終日に血液サンプルを採取して比較したところ、フード間で摂食量に違いは見られなかったといいます(187g/日)。一方、粗挽きソルガムのときに便の排出量と1日当たりの回数が増え、逆に栄養素の消化率が低下したとも。さらにフード間でフェラル酸とp-クマル酸の値は変わらなかったものの、粗挽きソルガムの抗酸化作用(血漿酸素ラジカル吸収能, ORAC)が最大値を示したそうです。粉末ソルガムに関しては乾燥重量、有機物、粗たんぱく質、総エネルギーの消化率が最大値を示しました。
こうした結果から調査チームは、ソルガムを粉末状にすると消化率が上がり、糠を含んだものには抗酸化作用が期待できるとの結論に至りました(:Alvarenga, 2018)。
4つのフードを14日間ずつ給餌し、最後の5日間で便サンプルを採取すると同時に、最終日に血液サンプルを採取して比較したところ、フード間で摂食量に違いは見られなかったといいます(187g/日)。一方、粗挽きソルガムのときに便の排出量と1日当たりの回数が増え、逆に栄養素の消化率が低下したとも。さらにフード間でフェラル酸とp-クマル酸の値は変わらなかったものの、粗挽きソルガムの抗酸化作用(血漿酸素ラジカル吸収能, ORAC)が最大値を示したそうです。粉末ソルガムに関しては乾燥重量、有機物、粗たんぱく質、総エネルギーの消化率が最大値を示しました。
こうした結果から調査チームは、ソルガムを粉末状にすると消化率が上がり、糠を含んだものには抗酸化作用が期待できるとの結論に至りました(:Alvarenga, 2018)。
「ソルガム」もしくは「グレインソルガム」という表記でソルガムきびを原材料に用いたドッグフードはいくつか市販されていますが、長期的に給餌した場合の影響に関してはよくわかっていません。