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犬の葬儀の種類と特徴~火葬のタイプや費用から死後の手続きまで

 安置していた犬の遺体は、次の段階ではしかるべき方法で弔います。犬の一般的な葬儀パターンは遺体を焼却する「火葬」、「地方自治体の引き取り」、そして土中に埋める「土葬」です。それぞれの特徴を見てみましょう。

犬の火葬

 犬の火葬とは、文字通り火葬施設で犬の遺体を焼却してもらうという葬儀方法です。火葬のメリットは「遺骨がスペースを取らない」や「メリハリのあるお別れができる」という点、デメリットは「費用が比較的高額」という点です。地方自治体によっては、ペット火葬の専用施設を備えており、葬祭事業をほとんど公営化しているところもあります。料金や施設の詳細については、お住まいの市区町村役場に直接お問い合わせ下さい。

火葬業者の選び方

 公共機関が火葬事業に力を入れていない場合、民間のペット火葬業者という選択肢があります。飼い主が選ぶときに考えるべきポイントは以下です。
火葬タイプを選ぶポイント
  • 火葬に立会いたいか?
  • お骨上げをしたいか?
  • 返骨を希望するか?
 火葬の瞬間に立ち会うことによって「しっかり見送ることができた」という自覚につながってくれます。見ず知らずの業者に任せっきりにするのではなく、何万回もなでた犬の体がこの世から消える瞬間を見届けてあげることは有意義です。
 お骨上げ(おこつあげ)とは、二人一組で足の方の骨から順番に骨壷に入れていき、最後に坐禅する仏の姿と似ている第二頚椎(だいにけいつい, 軸椎)を入れて成仏を願うという儀式です。こうした儀式を経験することにより、非現実的な「ペットの死」という出来事を受け入れやすくなると考えられます。
 返骨(へんこつ)とは、骨壷に入れたペットの遺骨を自宅へ戻してもらうことです。犬の体の一部を身近に置いておけば、心のつながりをいつまでも持ち続けることができるでしょう。
 上記したポイントの様々な組み合わせにより、民間業者における火葬の種類はおおむね以下のように分類されます。
民間業者における火葬の種類一覧表
民間業者における火葬の種類一覧です。
  • 合同葬合同葬(ごうどうそう)とは、他のペットと共に読経等の合同葬儀をし、その後火葬してもらう葬儀です。火葬の立会い、お骨上げはできず、遺骨はそのまま共同墓地や合同供養塔に納骨・埋葬されます。火葬施設へは自分で赴くことも出来るし、遺体を業者に預け、その後の必要事項を一任することもできます。
  • 一任個別葬一任個別葬(いちにんこべつそう)とは、読経等の葬儀の後、個別に一体ずつ火葬してもらう葬儀です。全ての業務を葬儀社に一任する形のため、火葬の立会い、及びお骨上げはできません。遺骨は納骨・埋葬もできるし、返骨もできます。
  • 立会い個別葬立会い個別葬(たちあいこべつそう)とは、読経等の葬儀の後、個別に一体ずつ火葬してもらう葬儀です。葬儀社に一任する形ではなく、飼い主が立ち会えるので、希望する場合はお骨上げもでき、遺骨は納骨・埋葬もできるし、返骨もできます。
  • 自宅葬自宅葬(じたくそう)とは、葬儀業者が自宅まで出向き、全ての業務を執り行う葬儀です。友人や、散歩仲間等、ペットと関わりの深かった人を招き、人間と同じように「葬式」という形でペットを見送ることもできます。読経等の葬儀の後、移動火葬炉(火葬車)にて火葬を行い、お骨上げもできます。
 なお移動火葬車は環境に配慮し、無煙・無臭・ダイオキシンを発生させない構造をもつものが増えてきています。

悪徳業者の見分け方

 ペット火葬に関しては悪質業者に関する幾つかの問題点が浮上しています。
 国民生活センターに実際に報告された事例では、料金体系にわざとグレーゾーンを設けてあいまいにし、ペットを火葬している最中に飼い主に対して追加料金を請求し、もし払わないのであれば火葬を中断して遺骸を返却するぞ、と脅しをかけるといったものがあります。またニュースなどで話題になった事例では、ペットの遺骨を不法投棄するなどが有名でしょう。
 2010年4月7日、埼玉県警は飯能市内にある山林に犬や猫約100頭の死骸を遺棄したとし、廃棄物処理法違反の疑いで動物葬祭業の男(当時71歳)を逮捕した。調べに対し男は「別の業者に火葬を依頼する費用を浮かせたかった。金もうけのためにやった」と容疑を認めている(出典日本経済新聞)。
 こうした悪徳業者の事件を受け、業界団体ではある一定の基準を設けて葬儀業者を認定制度にしようとする動きもあります。その一例が「動物葬祭ディレクター検定試験」です。

日本動物葬儀霊園協会の取り組み

 一般社団法人・日本動物葬儀霊園協会が設けているこの認定制度では、動物の葬祭に関する基礎知識テストに合格した人を「動物葬祭ディレクター」(1級もしくは2級)とし、信頼が置ける葬儀社であることを請けあっています。合格した暁には協会が運営しているデータベース内に登録され、優先的に推薦されるようになります。ただし会員になるためには固定炉と動物霊園を保有していることが基本条件です。登録数はそれほど多くありませんが、「移動火葬車」という形式に抵抗を感じている人にとっては参考になるでしょう。また悪徳業者に出くわす確率もぐんと低くなると思われます。 日本動物葬儀霊園協会・会員法人データベース 日本動物葬儀霊園協会が運営するペット葬儀社データベース

全国ペット霊園協会の取り組み

 一般社団法人・全国ペット霊園協会でも独自の条件を設けた上で加盟業者を募っています。具体的には「固定火葬炉、供養施設、管理事務所などが整えられていること」「会員の中から2社(名)の推薦が得られること」などです。移動火葬炉だけの業者は受け付けていません。 全国ペット霊園協会・正会員一覧 全国ペット霊園協会・正会員一覧

イオンペットの取り組み

 悪徳業者の排除に関してはイオンペットも独自の取り組みを行っています。同社が運営するデータベース「メモリアルなび」には、スタッフが実際に現地の施設を訪れ、独自に開発した基準をクリアした業者のみが掲載されているとのこと。固定炉を持つ施設のみが選定されている理由は、葬儀、火葬、供養を執り行って初めて愛するペットの死を受け入れることができ、結果的にペットロスの軽減につながるとの信念があるからです。特に重視しているポイントは、施設の清掃が行き届いていることと、電話対応を始めとする接客意識だそうです。2018年12月時点で80社強が登録されています。こちらのデータベースも悪徳業者に出くわす確率を下げてくれるでしょう。 メモリアルなび イオンペットが運営するペット葬儀社データベース「メモリアルなび」

火葬にかかる費用は?

 火葬にかかる費用は犬の体の大きさに応じて変動します。多くの場合、犬の体型(小型犬 | 中型犬 | 大型犬 | 超大型犬)や犬の体重(5~10kg | 10~15kg | 15~20kg etc)といった区分で料金設定がなされています。体重区分は5kg刻みだったり10kg刻みだったり業者によりまちまちです。参考までに日本動物葬儀霊園協会の会員になっており、固定炉を保有している葬儀社の価格表をリンクしておきます。平均値を出すのが難しいため、詳しい料金体系や見積もりに関しては各葬儀会社にお問い合わせ下さい。
葬儀社の料金体系一覧(2018年12月時点)
 火葬そのものにかかる費用のほか、火葬の前後で料金が発生することもあります。具体的には以下のような項目です。
火葬の前後に発生する費用
  • 引き取り料金何らかの事情によりペットの遺体を火葬炉まで運ぶことができない場合、葬儀社が車で引き取りに来てくれます。移動火葬車の場合は引き取りと火葬が同時に行われます。
  • 送迎サービス料金何らかの事情により飼い主(もしくは飼い主家族)が火葬場まで行けない場合、葬儀社が車で送迎してくれることがあります。移動火葬車の場合は自宅に来てくれますので必要ありません。
  • 葬式料金火葬する前のタイミングで僧侶による読経などを希望する場合は別料金になることがあります。宗派を取り払った「お別れセレモニー」というパターンもあります。
  • 返骨料金火葬後の遺骨を自宅に持ち帰りたい場合は骨壷や骨壷を包む覆い袋が必要になります。火葬料金にあらかじめ含まれていることも少なくありません。
  • 砕骨料金火葬後の遺骨をパウダー状にしてペンダントなどに入れる場合、骨を砕く必要があります。骨を入れるための分骨カプセルが付いてくることもあります。
 アニコム損保が犬の飼い主1,287人と猫の飼い主427人を含む合計2,041人を対象として行ったアンケート調査によると、葬儀と葬儀後の供養にかかった金額は、合計以下のようになったと言います。 アニコム損保「家庭どうぶつ白書2017」
ペットの葬儀+供養の費用合計
ペットの葬儀と供養に実際に掛かった費用の合計額一覧リスト
  • 1万円以下=27.6%
  • 1~3万円=28.3%
  • 3~5万円=26.5%
  • 5~7万円=9.2%
  • 7~10万円=3.9%
  • 10万円超=2.4%
 全体の80%以上が「5万円以内」に収まるようです。全体の8割以上の人は具体的な葬儀の内容について「火葬」を予定していると回答していますので、出費額は火葬費用を反映しているものと推測されます。火葬費用は体の大きさによって変動しますが、費用の目安にはなってくれるでしょう。
どの業者を選ぶにしても「オプション料金の有無を事前に確認する」「料金総額の確認をして書面で残す」「複数社の見積もりを取る」くらいは最低限気をつけるようにしましょう。

地方自治体の引き取り

 路上で死んでいた犬を見つけた場合とは違い、飼っていた犬が死んでしまった場合は基本的に飼い主が責任持って弔います。しかし何らかの理由でどうしても対処できない場合は、所属している市区町村に依頼して引き取ってもらうことも可能です。自治体引き取りのメリットは「費用が比較的安い」という点、デメリットは「合同火葬しか無い」という点でしょう。
 多くの場合は清掃局やリサイクルセンターが窓口になっており、手数料は3,000円前後、犬の体重は25kgまでというところが多いようです。また引き取られた犬は行政機関が契約している動物霊園に移送されて火葬に付された後、合同墓地に埋葬されます。後になって「お骨を引き取りたい!」と申し出ても無理ですので、選ぶ際は事前によく考えなければなりません。
自治体によっては路上死動物のように可燃ごみ(廃棄物)と同等の扱いをするところもあります。事前にどのような形で火葬・埋葬されるのかを必ず確認しておきましょう!

犬の土葬

犬を土葬する際は、自分の所有している敷地内で行うのがベストです。  犬を火葬にかけない場合は死体を土中に埋める土葬(どそう)で弔うことになります。土葬のメリットは「費用がほとんどかからない」という点、デメリットは「埋葬スペースが必要」や「気をつけないと臭いなどが発生して不衛生になる」という点です。
 不衛生にならない形で自宅の敷地内に埋めた場合に限り、法律上の問題に発展することはありません。所有地内に穴を1メートル以上深く掘り、犬の遺体を埋めて土をかぶせます。十分深く掘らないとカラスなどが荒らしに来たり悪臭が漂ってご近所の迷惑になる可能性があるため要注意です。後は土の上に墓標などを立て、自然と土に還るのを待ちましょう。
 ただし以下のようなケースでは法律違反として罰せられる可能性がありますのでご注意下さい。 ペットの法律相談(青林書院)
犬を埋葬するときのNG行為
  • 公有地に埋める河川や公園などの公有地に遺体を埋めると軽犯罪法違反で罰せられる可能性があります。これは「公共の利益に反してみだりにごみ、鳥獣の死体、その他の汚物または廃物を棄てたもの」(軽犯罪法1条27号)に該当するためです。
  • 海に沈める犬の遺体を土の中に埋めるのではなく海に沈めた場合も、「公有地に埋める」場合と同様軽犯罪法違反となります。
  • 他人の土地に埋める他人の私有地内に無断で埋葬した場合は、軽犯罪法のほか土地を客体とする器物損壊罪が適用され、3年以下の懲役または30万円以下の罰金に処される可能性があります(刑法261条)。
 日本の法律においてはペットの遺体と人間の遺体は別物として扱われますので、人間の遺骨や遺体に対して適用される「墓地・埋葬等に関する法律(墓埋法)」や刑法190条の「死体遺棄罪」は無関係となります。ではペットの遺体は法律上どのような扱いなのでしょうか?
 路上で死んだ動物や家畜動物の死体には「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(第2条)が適用され、前者は「一般廃棄物」、後者は「産業廃棄物」として扱われます。それに対しペット動物は宗教的、社会的慣習により埋葬や供養が行われる対象であり、一般的に産業廃棄物法は適用されません。つまり人間の遺体とも廃棄物とも違う微妙な位置づけなのです。こうした位置づけのためペットの遺体に関する法規制は存在せず、軽犯罪法や刑法にさえ触れなければ自分の所有地内に埋葬することは許容されています。

死後の手続き

 飼い犬が死んだ後、済ませておくべきいくつかの手続きがあります。事前に把握しておきましょう。

廃犬届

 生後90日以上の犬、つまり畜犬登録(ちくけんとうろく)が済んでいる犬が死んだ場合は、ペットが死亡してから30日以内に、保健所に廃犬届(はいけんとどけ)を提出して登録を抹消(まっしょう)する手続きが必要です。これは狂犬病予防法(第四条の4)に基づくものですが、登録抹消を怠ると、「集合注射の案内」や「注射の督促状」の送付が毎年届いてしまいます。登録を抹消する際は、鑑札、および狂犬病予防注射済証の返却が必要となります。最近ではインターネットを通じた電子申請ができる自治体も増えているようです。

犬種団体への連絡

 飼っていた犬が純血種で血統書登録していた場合は、登録されている犬種団体にも死亡連絡が必要です。血統書の裏面に死亡年月日と飼い主の氏名住所を記入し、当該犬種団体に送付します。血統書を記念として残しておきたい場合は、裏面にその旨を書いておけば手続き終了後飼い主の元に返送されてきます。

遺産の贈与?

 「ペットに財産を残したい!」という声はよく聞かれますが、ペットは法律上「モノ」として扱われていますので、飼い主の財産を直接的に相続させることはできません。理由は権利の主体となることができないからです。しかしいくつかの裏技があります。

負担付き遺贈

 負担付き遺贈とは、飼い主が遺言書を書き、ペットの世話をお願いしたい人に財産を渡すことです。条件として「ペットの世話をすること」を併せて記載しておきます。しかし遺言により遺産を贈与する「遺贈」という形式は亡くなる人による一方的な行為であり、受ける側が拒否できるという難点を抱えています。また仮に受け取ってくれたとしても、遺産が底をつきた段階でペットの世話を放棄することができてしまいます。
 「ペットを一生涯世話できるだけの十分な遺産がある」および「遺産を残す人が信頼できる」という場合には役立ってくれるでしょう。遺言の内容を執行する遺言執行者を指定したり、遺言の有効性を明確にするために公正証書遺言を利用するというオプションもあります。

負担付き死因贈与

 死因贈与とは贈与者の死亡によって効力を生じる贈与のことです。遺贈と違いは、ペットの世話をしてくれる人と生前に贈与の契約を結んでおくことができるという点です。世話の内容について細かく取り決めをすることができるという点や、受け取りを拒まれることがないという点が大きなメリットでしょう。

信託

 信託とは財産の所有者が信頼できる相手に一定の目的に従って財産の管理や処分を任せる契約のことです。2006年(平成18年)に成立した新しい信託法により、「自分のペットの飼育」を目的とした信託を行うことができるようになりました。
 具体的には「飼い主(委託者)がペットの飼育を目的とする信託を行う→依頼を受けた側(受託者)が目的に合うように資産を運用し、ペットを飼育するために必要な人を受取人と決める→任命された受取人が財産を受け取り、ペットのお世話をする」といった流れになります。
信託は信託銀行のほか株式会社でも取り扱っています。