直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS)は、主として衣料用洗剤に配合される陰イオン性界面活性剤の一種です。直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムという形で濃度0.1%以上のときに新型コロナウイルスをほぼ100%消毒できるとされています。
LASを食事や飲み水を通じて体内に取んだ場合、消化管で速やかに吸収された後、血液を介して全身を巡ります。血中濃度は摂取後2~4時間で最大となり、48時間後にはほとんどゼロとなります。消化管から吸収されたLASは多くの器官に分布しますが、特定の器官や組織に蓄積するという現象は確認されておらず、胆汁とともに腸に分泌されるほか、大部分は肝臓の代謝を受けた後で腎臓に運ばれ、およそ7日後には99%が尿中に排泄されます。
以下は動物におけるLASの毒性です。LD50は投与された個体群の半数が死んでしまう量(半数致死量)、NOELは何の影響も見られない最大投与量、NOAELは有害反応が見られない最大投与量のことを意味しています。
LASの毒性
- 経口急性毒性✓マウスのLD50:体重1kg当たり1,665~3,400mg
✓ラットのLD50:体重1kg当たり404~1,900mg
- 眼刺激性0.05%溶液で3時間以内に結膜、眼粘膜に軽度の充血、流涙が見られ、0.1%溶液で2時間以内に粘膜浮腫が見られることからNOELは0.01%
- 経口慢性毒性✓ラットを対象とし、体重1kg当たり1日50~250mgのLASを12週間に渡って摂取した試験結果から、メスにおけるNOAELが体重1kg当たり1日50mg、オスにおけるNOAELが250mg
✓ラットを対象とし、体重1kg当たり1日37~913mgのLASを26週間に渡って摂取した試験結果から、NOAELは体重1kg当たり1日37.2mg
✓ラットを対象とし、体重1kg当たり1日75~300mgのLASを26週間に渡って摂取した試験結果から、NOAELは体重1kg当たり1日150mg
- 経皮毒性✓ラットを対象とし、1匹あたり0.5~5mgのLASを経皮的に吸収させた試験結果から、NOAELは1匹あたり5mg
✓ラットを対象とし週に3回LASを塗布し、翌日にぬるま湯でふき取るという実験を2年間に渡って行った結果からNOAELは体重1kg当たり57mg
LASには揮発性がありませんので空気中にただよった分子を吸入してしまう可能性はありません。その一方、皮膚表面には付着した場合、24時間経ってもほとんどがその場にとどまり続けます。皮膚からの吸収率は24時間で約0.03%とかなり低いものの、1%水溶液では指間に手荒れを生ずるとされていますので注意が必要です。なお適正濃度とされる0.04%であれば人に皮膚に影響はなく、0.09%までは皮膚感作性を示さないとされています。
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩・有害性評価書