詳細
調査を行ったのはスイスにあるベルン大学獣医学部のチーム。人間やその他の動物で確認されている「バラエティ効果」が犬にもあるのかどうかを確かめるため、実験室内に特殊な装置を設けて自発的な選択試験を行いました。
こうした結果から調査チームは、犬におけるバラエティ効果はそれほど明瞭ではないとの結論に至りました。ただし「馴化」によって強化子に対する飽きが生じ、ちょっとした浮気心を見せて大好きなおやつからランダムなおやつに鞍替えする傾向が見られるとも。長期的に見るとランダムなおやつにも強化子としての存在意義があるだろうと指摘しています。 Incentive motivation in pet dogs ? preference for constant vs varied food rewards
Annika Bremhorst et al., Scientific Reportsvolume 8, Article number: 9756 (2018), DOI:10.1038/s41598-018-28079-5
- バラエティ効果
- 動物の行動頻度を高める強化子(ごほうび)を何か1つに固定するのではなく、様々な種類に散らした方が効率的に強化が促進される現象のこと。犬を例にとると、チーズばかりを与えるのではなく、チーズ、ソーセージ、レバーをランダムで与えるなど。人間を例に取ると、ばかうけの青のりしょう油ばかり食べるのでなく、さまざまな味が入ったアソートパックからランダムで選んで食べるなど。
こうした結果から調査チームは、犬におけるバラエティ効果はそれほど明瞭ではないとの結論に至りました。ただし「馴化」によって強化子に対する飽きが生じ、ちょっとした浮気心を見せて大好きなおやつからランダムなおやつに鞍替えする傾向が見られるとも。長期的に見るとランダムなおやつにも強化子としての存在意義があるだろうと指摘しています。 Incentive motivation in pet dogs ? preference for constant vs varied food rewards
Annika Bremhorst et al., Scientific Reportsvolume 8, Article number: 9756 (2018), DOI:10.1038/s41598-018-28079-5
解説
ラットを対象とした実験では単調なごほうびよりも2~3つのごほうびからランダムで1つ与えられる方が反応性が高いとされています。またドワーフハムスター、人間の成人、自閉症の子供、精神疾患を抱えていない子供を対象とした調査でも同様の傾向が部分的に確認されています。Steinmanによると、強化子の内容をバラバラにする「バラエティ効果」は、被験者の反応率を高めてオペラント条件付けによって学習した行動の消去が起こりにくくするとのこと。主な理論的根拠は以下です。
バラエティ効果の理論的根拠
- 複数の刺激が加えられることにより1つの刺激に対する馴化が遮断される
- 刺激と刺激の間にインターバルが挟まることにより馴化が遅れる
- 刺激が繰り返し変化することにより脱馴化が繰り返される
- 馴化した刺激が中断することにより自発的な回復が起こりやすくなる