詳細
調査を行ったのはイタリア・バリ大学の研究チーム。文化や人種にかかわらず人類共通であると考えられている原始的な6つの感情(喜び | 悲しみ | 怒り | 嫌悪 | 驚き | 恐怖)を含んだ声を犬が聞いたとき、どのように反応するか確かめるため顔向けパラダイムと呼ばれる方法を用いて右脳と左脳の優位性を検証しました。
Scientific Reports 8, Article number: 77 (2018) doi:10.1038/s41598-017-18417-4
- 顔向けパラダイム
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被験者の前からさまざまな音を聞かせ、反射的に頭をどちらに向けるかを観察する実験。左を向いたときは右耳(左脳)を優先的に使い、右を向いたときは左耳(右脳)を優先的に使っているという理論が前提。
脳は右半球と左半球とに分かれており、前者は主に負の感情、後者は主に理性や正の感情を司っている。よって負の感情(恐怖や緊張)が喚起された時は右半球が活性化して支配領域である体の左側が優先的に使われ、逆に理性や正の感情(うれしい・楽しい)が喚起された時は左半球が活性化して支配領域である体の右側が優先的に使われるはず。
人間の感情価と犬の脳処理
- 喜び笑い声 | 93.3% | 右耳を使う傾向が見られた(左半球優位)
- 嫌悪えづく | 93.3% | 左右差は見られなかった
- 驚きオー! | 90.0% | 左右差は見られなかった
- 恐怖 金切り声 | 80.0% | 左耳を使う傾向が見られた(右半球優位)
- 悲しみすすり泣き | 76.6% | 左耳を使う傾向が見られた(右半球優位)
- 怒りうなり声 | 83.3% | 左耳を使う傾向が見られたが統計的に有意ではなかった
Scientific Reports 8, Article number: 77 (2018) doi:10.1038/s41598-017-18417-4
解説
ポジティブな感情を処理するときは左半球が優先的に用いられ、ネガティブな感情を処理するときは右半球が優先的に用いられるという仮説は「感情価モデル」と言われます。過去に犬を対象として行われた調査により、この「感情価モデル」が犬にも存在している可能性が示されています。
犬と感情価モデル
- 視覚的な情報蛇や攻撃的な姿勢を示した猫のシルエットを見せると顔を左に向ける(右半球優位) | 怒った人間の顔写真を見せると左側を見る(右半球優位)
- 聴覚的な情報雷の音を聴いたとき顔を左側に向ける(右半球優位) | 他の犬が発する声を聞いたときは右側を向く(左半球優位)
- 嗅覚的な情報飼い主に置き去りにされるという強いストレスがかかる状況下で犬が発散した匂いは右の鼻腔を用いて嗅ぐ(右半球優位)