詳細
調査を行ったのは、フランスに本社を持つロイヤルカナンの調査チーム。2015年1月から8月の期間、南北のアメリカ、アジア、ヨーロッパで開業する合計37の動物病院に協力を仰ぎ、統一された方法で肥満犬にダイエットを行ってもらいました。方法は、あらかじめ指定されたフード(犬のダイエット向けに開発された高タンパク・高食物繊維食/ドライ2種+ウェット1種)を週の体重減少率が1~3%に収まるよう計量し、朝夕2回の給餌スケジュールを12週間に渡って厳守してもらうというものです。
その結果、参加要件を満たしていた犬が2,214頭いたにもかかわらず、実際に参加した犬の数はわずか1,565(70%)頭だったと言います。さらに参加した1,565頭のうち、全体の37%に相当する578頭までが途中で脱落したとのこと。主な脱落理由は以下です。
Flanagan J, Bissot T, Hours M-A, Moreno B, Feugier A, German AJ (2017) PLoS ONE 12(9): e0184199. doi.org/10.1371/journal.pone.0184199
犬のダイエット・脱落理由
- 途中で来なくなり連絡も取れなくなった=474(82.0%)
- ダイエットプランに従わなかった=40(6.9%)
- 別の疾患によって中止=11(1.9%)
- フードが合わなかった=7(1.2%)
- 飼い主が挫折した=2(0.2%)
- 不明=44(7.6%)
統一ダイエット計画の結果
- メス犬は61%(568頭/うち433頭は避妊済み)
- オス犬は39%(358頭/うち238頭は去勢済み)
- 体重減少が見られたのは96.8%(896頭)
- 1%超の体重増加が見られたのは1.7%(16頭)
- 体重に変化が見られなかったのは1.5%(14頭)
- 目標体重や体型に到達したのは7.0%(65頭)
- 平均体重減少率✓2週目=3.2±3.20%
✓4週目=5.7±3.96%
✓8週目=8.7±4.85%
✓12週目=11.4±5.85% - 1週間の平均体重減少率✓全体平均=0.9±0.45%
✓2~4週目=1.0%
✓4~8週目=0.9%
✓8~12週目=0.8%
体重減少率への影響因子
- メス犬12.0%>オス犬10.4%
- 不妊未手術12.9%>手術済み10.9%
- 性別による格差は特に南北アメリカで顕著(アメリカ=メス11.5%>オス9.1%/ヨーロッパ=メス12.3%>オス10.9%)
Flanagan J, Bissot T, Hours M-A, Moreno B, Feugier A, German AJ (2017) PLoS ONE 12(9): e0184199. doi.org/10.1371/journal.pone.0184199
解説
2,214頭の犬が参加要件を満たしていたにもかかわらず、実際に参加したのは7割程度でした。ダイエットフードが無料で供与されるという条件がありましたが、こうした有利な条件にもかかわらず飼い主が参加に同意しなかった理由はよくわかりません。そもそも犬の肥満を疾患の一種として認識していない楽天思考があるのでしょうか。
さらに調査に参加した1,565頭のうち、全体の4割近くがなんだかんだと言い訳をつけて途中で脱落しました。そして脱落者のうちおよそ8割が「バックレ」だったとのこと。脱落の理由としては「給餌プランの遵守が面倒だった」とか「犬の催促が煩わしかった」などが考えられますが、いずれにしても犬のダイエットの成否を左右するのは「飼い主のやる気」であるようです。
12週間という短期間では、理想体重や体型を実現することはさすがに難しいようです。週を追うごとに体重減少率が減っていることから、最初にストンと減った後は緩やかにしか変化しないものと推測されます。犬のダイエットは人間の場合と同様、半年~1年レベルの長期戦になると考えられますので、ここでもやはり飼い主の気力というものが重要になってきます。